自力建設のメンテナンス 前編
先日、アカデミー校舎の点検と報告書作成を行いましたが、メンテナンス実習の授業の本番はここからです。
そうです。過去の自力建設の点検とメンテナンス計画とメンテナンス実施です。
まずは、その下準備やメンテナンス作業を行いました。
過去16棟もある自力建設すべてを見ることが時間的にもできないため、歴代のうち最古参の自力建設を中心に9つの調査を行いました。
一期生の建設した最も古い四寸傘。森のようちえんで大活躍のこの施設ですが、さすがに17年目を迎えると至る処に劣化も見られます。最もひどかったのが、小屋束からの雨漏りによる腐朽です。
四寸傘の特徴である構造材は、すべて四寸角でできており、最も重要な対角線上の3本合わせ梁に乗る束からの雨水侵入による劣化です。
傷んだ束の修繕と雨水侵入対策を考えます。今回の授業はクリエーター科、エンジニア科の2年生のため、すでに自分たちの自力建設は体験済み。どのように対策を考えるか、加工できるかも身をもって体験済みです。対策や必要な部材や道具を洗い出していきます。
2期生のみさきのちゃやに10期生が増築したあらかしのだんだんでもデッキが腐朽!!!
でもこれは、計画通りの場所で腐朽しています。デッキ板(といっても厚みは4寸で梁の構造試験材のリユース材)は構造躯体にさしてあるだけで、簡単に抜き取れます。同じ断面の製材を差し込むだけの計画。板の間に仕込まれた波板で土台はまだまだ健全です。
ここでも、必要部材を洗い出します。
2つのグループで点検した結果と利用頻度、損傷度から優先順位をつけて必要な部材をかき出します。
木材専門の吉野先生も乱入して、木材の耐久性の講義が突然始まりました。
これらの部材を用意して修復作業にかかります。
本日は2日目。
4寸傘の腐朽状況を確認していきます。どこまで侵食しているかを見据えて、修繕方法を微修正していきます。
一方、8期生のほたるの川床では、デッキの一部減築作業が始まりました。劣化の激しいデッキを必要最小限にとどめ、これからのメンテナンスを軽減する計画です。
墨出しをして、デッキ先端部分をカットしていきます。
切断したデッキの根太(下地のことで今回は60mm×120mm)の切断面を見てみると、腐朽箇所が一目瞭然。
ヒノキ材でしたが、10年の間に見事に辺材部分のみ腐朽。心材はほぼ無傷でした。
やはり、ヒノキであっても辺材は、外部環境では弱点になることが、学生も材に触りながら実感できる瞬間でした。
これで、おおむね必要な部材寸法と数量が確定できましたので、午後からは製材も並行して進めます。
製材機を操作するのはエンジニア科の学生。2時間の間に50個近い部材を作り上げました。お見事。
同じ敷地内で製材までできるのはアカデミーならでは。点検、修復過程が一通り勉強できます。
来週はメンテナンス実習の今年度最終回。
今回製材した部材を用いて、機能向上も含めた改修工事が完了します。これで、まだまだ使用できます。
准教授 辻充孝