社会資本としての森林と産業としての林業
岐阜県立森林文化アカデミーのクリエーター科授業『森林文化論』。
今回は林野庁木材利用課の福田淳さんをお招きして、「社会資本としての森林と産業としての林業 ~林業の成長産業化に向けた森林・林業政策~」と題してお話し頂きました。
また後半戦では福田さんが所属する東京木場角乗保存会の『木場の角乗』についてもお話し頂きました。
「社会資本としての森林」は、公共財として位置づけされる森林の多面的機能、その公共財である森林の整備に対して1,200億円(平成28年度)の支援をしている。
公共財とは「非競合性」と「非排除性」を有する財である。
森林は公共財であり、社会資本として整備するもの。
では「産業としての林業」はどうか。
現在の森林所有者は、立木の売払収入だけでは、森林の育成費を賄えず。多面的機能発揮の観点から、森林整備事業で森林育成コストの一部を補助。
収支改善のアプローチとして、木質バイオマス燃料として、林地残材を有効利用することで収入を上げることも一案。一方、支出削減のため植栽の低コスト化、伐採搬出の低コスト化も考える必要がある。
最後に①資源の循環利用、②原木の安定供給体制の構築、③木材需要の拡大、することが政策として重要。
後半戦は、伝統芸能『木場の角乗』の継承を目指している福田さんから、森林文化論につながるお話しをお聞きしました。
東京木場の人たちは「川並(かわなみ)」と呼ばれる職員集団であり、腕自慢・余技として「角乗」を発達させてきました。
江戸時代の1845年~1853年に作成された『木曽式伐木運材図絵』には「角乗之図」として描かれており、明治12年にはアメリカのグラント将軍来日時に披露されたそうです。
現在の保存会は昭和60年頃から木材産業関係者以外への保存会参加門戸が開かれ、平成5年からは一般市民を対象とした講習会を開催するようになったそうです。
本来の角乗には、ツガの角材が用いられ、バランスを取るためのタメ竿にはマダケが、角材を水上で操るための鳶口の一種、長鉤(ながかぎ)の柄にはハチクが使われています。
角乗の継承には、①担い手の確保、②技術の伝承、③資金の確保、が必要であり、こうした伝統を後世に伝えるためにも、木場の歴史を学び、先人達の技のすごさを再認識することも重要なのです。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。