林業事例調査プロジェクト1日目
10月6・7日に学生4名(林業専攻3名・木工専攻1名)でプロジェクト授業を立ち上げ、森林の視察に行ってきました。
1日目に訪れたのは、長野県にあるアファンの森です。
なんだか生き物いっぱいの森林づくりがされているらしい!ということで行ってみることにしました。
ここはもともと、ウェールズ生まれの日本の作家 / 環境保護活動家であるC.W.ニコルさんが購入・管理してきた森林です。購入当初は荒れた暗い森林でしたが、明るいところが好きな生き物が暮らせる環境を目指して手を入れてきたそうです。現在では財団が森林の管理を担っています。
森林内には、チップが敷かれた歩きやすい道が整備されていました。
森林に入ってすぐ目に入ってきたのは池です。
ここはもともと、植物の生育にも適しないような湿地帯だったそうです。そこを掘って池を作りました。そうすることで、水辺が好きな生き物が集まってくるようになりました。たとえばトンボは、ヤゴの頃は水中を、成長すると陸地を利用する生き物です。両方の環境があることで暮らしていくことができます。トンボは種類によって好む環境が異なるため、トンボの種数は環境の多様性の一つの指標にもなるそうです。また、止水域だけでなく流水域を好む生き物のために川も作られていました。
生き物にとって良い環境のもう一つの指標に、フクロウがいます。
写真は、フクロウのための巣箱です。
フクロウがやってくるためには、安心して子育てができる環境と、その周りで十分な餌が採れることが必要です。原生林であれば子育ては木のウロなどでしますが、ここにはそのような大木がまだないため、代替として巣箱を設置しています。また餌を採るためには、そこに餌があることはもちろん、フクロウが羽を広げて飛ぶことができる空間が必要です。そのためフクロウが飛べるような空間を作ることを意識して間伐が行われています。
クマの爪痕も見つけました。
森林づくりの手法としては、まずは藪や形質の明らかに悪い樹木を刈り払ったそうです。そのままでは樹木が少なくなってしまったため、土地に合った樹木を植林しました。現在行なっている主な作業は下刈りです。全てを盲目的に刈ってしまうのではなく、樹木の稚樹のほか、花が咲く草本などを残すようにします。そのため下刈り作業には、同定のスキルが欠かせません。このような丁寧な下刈り作業を続けることで、現在では植林は行わずとも天然更新ができているそうです。
ニコルさんが買い取る前のこの森林のように、放置されている森林は全国に存在します。森林は放っておいても遷移が進行しますし、それはそれで自然なのではないかという気もします。その問いをぶつけてみたところ、人が手を入れることで良い状態に早く持っていけるのであればその方が良いという答えが返ってきました。確かに放っておいてもいつか森林は原生林のような姿になるかもしれません。しかしそれまでの間、困ってしまう生き物がいます。放っておけば1000年かかるところを、人が手を入れることで500年に短縮できるとすれば、その分助かる生き物も増えるのではないでしょうか。人が森林を利用して楽しく暮らしていくことが、結果的に他の生き物にとっても良い環境を生み出していたらいいなあと思います。無理をせずに全体にとって良い結果をもたらす仕組みを作ることが、持続の秘訣ではないでしょうか。
林業専攻クリエーター科1年 森 日香留