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2022年08月18日(木)

木工事例調査R4夏 small Axe

 クリエーター科木工専攻では、各地のものづくりや地域材を活用する取り組みについて現地で学ぶ「木工事例調査」を行っています。今年の夏も兵庫、岡山方面まで足を延ばして様々な事例を見てきました。その1つ、TENON合同会社の元代表である迎山直樹さんの新たな活動拠点となる「small Axe」の見学をさせていただきました。その様子を学生のレポートでご紹介します。

新工房は元素麺工場の建物

新工房は元素麺工場の建物

 迎山直樹さんは、1994年に個人工房「small Axe」を立ち上げ、2009年に名前をかえて「TENON合同会社」を設立されました。デザイン性の高い椅子を多数制作されており、2014年にはIFDA旭川家具コンペティションでゴールドリーフ賞を受賞された木工家です。2018年からは情報交換や技術向上を目的とした木工家同士の交流の場「チェアキャンプ」の企画を行い、若手の育成などにも注力されてきました。

 30歳から始まった木工家としてのキャリアが今年で30年目を迎えたのを機に、2022年4月に合同会社TENONを現代表である関野央也さんに引き継がれ、このたび新たな活動として「small Axe」を立ち上げられました。

 

 過去に個人工房としても掲げていた「small Axe」の名前の由来は、ご自身が好きなボブマーリーの曲名からとられていて「個人工房として開業した頃は屋号に合うようなことはしていなかったが、今は屋号が合うようなことがやれるなと感じている」と話されていました。

迎山直樹さん

迎山直樹さん

 長く椅子づくりをされていた迎山さんですがsmall Axeでは、椅子の制作からは少し離れて素材の生産側に寄った活動をしていきたいということです。2年ほど前から、地元の人と移住者の人たちが共に活動する「里山三昧会」という団体に所属して、山林整備などの山に関する活動に取り組んできたそうです。工房内の各所に、山で伐採し製材後に乾燥させている木材が置かれていいます。製材は近くの製材屋さんにお願いされているそうですが、製材所の方が高齢であり、搬出などもその製材所の方にお願いされているということで、木材の利用を進めていくにあたって運搬と製材、乾燥が今後の課題にとなると話されていました。

乾燥中の木材

乾燥中の木材

乾燥中の木材

木工機械が置かれたスペース

木工機械が置かれたスペース

 里山三昧会では子供キャンプなどの企画も行っていて、子供に山と親しむ機会を作るなどの活動もされています。迎山さん自身も地元の高校からの依頼で木工の授業を担当されているので、small Axeの活動として子供と山の距離を近づけていきたいと話されていました。高校の授業では、斧とノコギリを使って木を伐採し、製材と加工の体験を通して山からモノになるまでのリアルな体験ができるワークショップを考えられているそうです。

 自治体の調査によると佐用町内には、10人に1人ほどの割合で山を持て余している山主さんがいるそうです。市としても山林の町有化を進めているそうですが、木工分野に精通している人が山林の維持管理に関わることで、針葉樹林と比べると劣るとされている広葉樹林の価値が上がったり、地域の木材の流通が活性化していくのではないかと感じました。

迎山直樹さん(中央)

迎山直樹さん(中央)

 迎山さんが、山仕事や地域材の活用を考え始めることになったきっかけに、本学教員の久津輪雅先生との出会いがあったそうです。4年前に岡山大学であった里山の材の利活用を考えるセミナーで知り合い、同年のチェアキャンプで生木を使った椅子づくりを体験されたそうです。そのような交流から、ものづくりや木という素材に対して抱えていたジレンマに新しい気づきがあったと言います。また、地域材や虫食いの木などに対する見方が変わって行ったとおっしゃっていました。

工房内に置かれた椅子

工房内に置かれた椅子

 ものづくりについて「どんなものであれ作り手がいるのであればモノに思い入れは持って欲しい」というお話をされていたのがとても印象的でした。これから自分たちがものづくりを学んでいく上で、使い手に愛されるものを作っていくことが作り手としての責任であり、愛着を持って丁寧にモノを使っていくことが使い手の責任であるということを強く感じました。

 これから木工を学んでいく立場、また使い手としてこの気持ちを大切にしていきたいと思います。今回はお忙しい中お話を聞かせて頂きありがとうございました。