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2022年08月08日(月)

木工事例調査R4夏 森の学校

 クリエーター科木工専攻では、各地のものづくりや地域材を活用する取り組みについて現地で学ぶ「木工事例調査」を行っています。今年の夏も兵庫、岡山方面まで足を延ばして様々な事例を見てきました。その1つ、岡山県の西粟倉村の「森の学校」を学生のレポートでご紹介します。

BASE101% -NISHIAWAKURA-

BASE101% -NISHIAWAKURA-

 西粟倉村の百年の森構想を取り組まれている森の学校を見学させて頂きました。

 森の学校では西粟倉にある資源と地域人材を最大限に活かして製材から加工まで一貫した商品開発を行っています。また工場に隣接するカフェやセレクトショップなどの複合施設「BASE 101% -NISHIAWAKURA-」の運営もされており、森とユーザーを近づける幅広い事業展開がなされていました。

森の学校 西岡 太史さん

森の学校 西岡 太史さん

 今回は山から伐採された木が、どのような工程を経て付加価値がつけられていくのかを執行役員の西岡太史さんに、解説して頂きながら作業現場の見学をしました。そして、地域の木材がどういった取り組みを行うことで地域社会に還元されているのかを学ばせてもらいました。

原木の仕分けをしている様子

原木の仕分けをしている様子

 BASE 101% -NISHIAWAKURA-から道路沿いに歩いてすぐの場所に材木の集積場がありました。ここでは西粟倉の山林で採れた丸太の仕分けが独自に行われていました。しかし創業当初は西粟倉産材のほとんどが近隣の市場へと流れていってしまい県内で手に入れる手段がなかったとのことでした。説明を伺う中で4mの立派な丸太であってもその価値は決して高くはないことを知り、運搬の労力やコストを考慮すると原木の流通から着手することの重要性を感じました。扱われる樹種はスギとヒノキの二種類であり、節の数などで選別がされており整然とした様子でした。斜めに丸太が刺さっているのは丸太の持ち主ごとに分けているのだそうです。

 

森の学校にしかない特注の製材機

森の学校にしかない特注の製材機

 工場内には丸太を加工する特別な製材機がありました。当初は森の学校のものづくりの規模に見合った製材機がなく、メーカーに特注して作成したため、この機械は日本に1台しかないとのことです。大手企業の行う大量生産と競合するのではなく自社ができることを明確にして自走させていくという開業時からのこだわりを感じました。騒音や振動はあまりなく機械の中を丸太が行ったり来たりする度に2枚の板材がとれていきます。作業も少人数で管理しており、とても生産性が高い様子が見て取れました。

工場内の様子

工場内の様子

 加工の工程が進んでいき、扱う材木が短くなってくると作業員のほとんどが女性の方になっていました。地域の働き世代に雇用を生み出すために設備環境を整えた結果、現在工場内で働く半数以上が女性となったそうです。そのお仕事の様子は、ただ数をこなしていく流れ作業ではなく、一人一人が地元の良い製品を届けようとする誇りを持たれているように感じました。また機械は回転する刃物に接しない作りになっており、安全性と作業性の両面で女性に扱いやすいように考慮されていました。

HAZAI MARKET

HAZAI MARKET

 運送の手間や費用の削減という点でHAZAI MARKET という取り組みが行われていました。これは丸太が加工されていく中で、通常ロットに乗らない端材を直接販売するものです。こちらは顧客が見て納得したうえで手ごろな価格で購入してもらえるような仕組みになっていました。材木の価値が人それぞれであることに着目し、買い手の需要を満たすことで売り手としての無駄も減らせる双方に有益な方法であると感じました。端材は形状や長さによって分けて陳列されており、中でも根元に近い端(たん)ころと呼ばれる部分は人気商品で喜んで買っていかれるお客様がいてくださるそうです。

 

森の学校の工場入り口

森の学校の工場入り口

 普段からあまり価値を考えずに破棄していたような材木であっても、常にゴミではないのだという意識を持つことで、活用の可能性が見えてくるのだと深く考えるきっかけになりました。また生産的な場を生み出すためには、先ずは徹底した環境づくりから始めることの大切さを強く感じました。そして今回の一連の見学を通して単に物を売るのではなく、ものづくりの背景をユーザーに伝えることで共感を生み購買意欲に繋げていくことの意義を理解することが出来ました。

 

 限られた時間でしたが西粟倉の地域に根付いた森の学校さんならではの取り組みを知れた良い機会になりました。ご多忙な中、ご対応頂いた西岡様ありがとうございました。

文責 クリエーター科木工専攻 (2年)白瀧周 (1年)兒島京太郎、堀田陽介