暮らしを読み解く温熱・省エネ設計
パッシブデザイン設計法 第六回(最終回)を開催しました。
最終回はパッシブデザインのキモの暮らしを読み解く話です。
設計の初期段階で、住まい手のこだわりの暮らし方や、暖房が異常に多かった場合その理由など、一律の設計では対応できない部分を丁寧に読み解いていきます。
トレーニングとして、いくつかの光熱使用量の事例を見ながら、この住まい手はどんな暮らしをしているか、想像を膨らませてイメージしていきます。
ヒントとなるのは、季節間の差異です。
春や秋にエネルギーが多ければ、暖房や冷房は関係なく、家電や照明、給湯の使用量が多いと読めますし、そこから冬にかけて増えていけば暖房が多く使っていると読み取れます。
このようなトレーニングを繰り返せば、数字を見ただけで、こんな暮らしなのでは?と読み取ることも可能になります。
最後の章では、総合的に様々な性能のバランスを高めて総合力をつける内容です。
例えば省エネではあまり語られない昼光利用のメリットです。太陽の光を利用するのは省エネにも多少の効果がありますが、大きなメリットは、光のスペクトル分布がきれいで、ものが美しく見えることです。
分光器を用いて、光のスペクトル(波長)を確認します。まずは室内で、蛍光灯やLED照明の波長を確認します。省エネを謳っているだけにどのような光か気になります。蛍光灯では光の3原色の赤、青、緑の光が突出して、中間の色合いが少ないです。LEDはましになっていますが、それでもムラがあります。
では太陽光はどうでしょう。
スペクトルが非常に豊かに出ていて、きれいな光です。
これからは単なる省エネを目指すのではなく、生活の豊かさにも着目して計画する必要があります。
最後に、我が家の改修事例をもとに、これまでの総おさらいです。断熱性能や日射取得の考え方や、防露の対策、暖房方式の特徴、太陽熱給湯の効果など、これまで学んだことを総動員して仕組みを理解します。
今回で毎月第1土曜に開催してきた全6回講座が終了しますが、ここからがパッシブデザイン設計の始まりです。実務で、今回学んだことを少しづつ実践していただき、地域の風土に合った良い住まいをつくって頂く事に期待しています。
准教授 辻充孝