弁当箱とカゴ展 2022 製作レポート⑥
9月30日(金) 10月1日 (土) 2日 (日)の3日間、岐阜市にある長良川デパートで、木工専攻の学生6人が製作した弁当箱とカゴの販売を致します。
岐阜県産材を使用し各々が考え製作したお弁当箱に加え、今回はカゴも2種類あります。展示期間中は作品の販売も行います。皆様のご来場をお待ちしております。
6人の学生が製作したお弁当箱はどんな想いで作られたんでしょうか、それぞれにレポートしてもらいました。
アカデミーブログ用(矢木満夫)
「お弁当かご・ぷちころ」誕生まで
課題は「お弁当箱」。私自身は、数種類の木製の弁当箱を長年愛用してきたし、少しの手入れの手間をかけるだけで豊かな気持ちでお弁当タイムを過ごせることに満足している。しかし、「きょうは寒いのでご飯をレンジで温めたい」「今日は忙しくておにぎりだけ」という日もありますよね。そんな日でも、心がはずむお弁当タイムを過ごせるようにならないか?
「そうだ、お弁当かごにしよう。見た目もかわいくて、持つだけで心が軽やかになるようなかごを作ろう。」といういきさつで誕生したのが、小さくてコロンとかわいらしい木のかご「お弁当かご・ぷちころ」です。
「お弁当かご・ぷちころ」に秘められた伝統
「お弁当かご・ぷちころ」は、かわいい見た目からは想像できない古来の伝統を秘めています。このかごの素材はカエデの木です。木を割って、薄く剥(へ)いでテープ状に加工して編むタイプのかごは、縄文時代以来数千年間にわたって作られてきました。主に、竹が育ちにくい寒い地方で受け継がれてきた伝統的な技術です。しかし、現在この技術が残っているのは、秋田県の「イタヤ細工」と滋賀県の「小原かご」だけ。全国的にもほんの数名の方が受け継いでいるだけです。
「お弁当かご・ぷちころ」は、このうちの「小原かご」の技法で作りました。ほとんどの加工を機械も便利な道具も使わずに、ホウチョウと呼ばれる刃物一本で行う数百年前と変わらない手仕事の技です。
「お弁当かご・ぷちころ」の魅力
魅力は、実際に手に取ってご自身で感じていただきたいのですが、製作者からのアピールポイントをお伝えしますね。
その1。「かわいい!」ご覧になった女性のほとんどの方の第一声です。伝統的なかごですが、持ち手は革製にするなど、今の時代に使っていただきやすいものにしています。
その2。「これぞ、手仕事!」手だけで加工していますので、厳密に言うとかごの中に直線はありません。考えられないくらいの手間と時間が、やわらかな味わいを生み出しています。
その3。「ちょうどいいサイズ感!」かわいらしさを失わない範囲ぎりぎりまで使いやすいサイズ感を追求しました。お弁当と小さめの水筒が楽に入るサイズです。また、ちょっとしたお出かけにも使っていただけます。
その4。「自然素材そのもの!」材料はイタヤカエデ(フチの芯材はウリハダカエデ、持ち手は牛皮)。着色も保護のための塗装もしていません。森からいただいた素材そのままです。アイボリーがかった白い色は、経年変化でうっすらと茶色がかってきます。何十年と経てば飴色に変化します。
最後に
私が「小原かご」唯一の伝承者である太々野㓛氏に習いはじめて丸4年になります。この希少で美しいかごを知っていただきたくて、今回の出品作品に選びました。実は、このかごは揖斐川町(旧)徳山村周辺で作られていたかごと極めて共通点が多いのです。かごを手に取っていただく中で、またお買い上げいただいて生活の中で使っていただく中で、数千年間にわたって先人たちが伝えてきた森と共に生きる知恵にも思いをはせていただけたら幸いです。
なお、今回の素材のイタヤカエデは、郡上市美並の古川林業様に提供していただきました。ありがとうございました。
岐阜県立森林文化アカデミー
森と木のクリエーター科 木工専攻2年
矢木満夫