弁当箱とカゴ展 2022 製作レポート⑤
9月30日(金) 10月1日 (土) 2日 (日)の3日間、岐阜市にある長良川デパートで、木工専攻の学生6人が製作した弁当箱とカゴの販売を致します。
岐阜県産材を使用し各々が考え製作したお弁当箱に加え、今回はカゴも2種類あります。展示期間中は作品の販売も行います。皆様のご来場をお待ちしております。
6人の学生が製作したお弁当箱はどんな想いで作られたんでしょうか、それぞれにレポートしてもらいました。
Maruti(multi)
今回は三段のお弁当箱を製作しました。
この形にした理由は食べる量は人それぞれあり、また体調次第では食事量を減らすという日もあると思ったからです。このお弁当箱ならば三段を二段に、二段を一段としてもっていくこともでき食事量を調整することができます。このお弁当箱の容量は約550mlです。成人の男性の方にはちょっとサイズ的に足りないかもしれません。そんな時はおにぎりなどを追加するなどの工夫をしていただきたいと思います。
またこのお弁当箱は漆を塗料として使用しており、水に強いので使い方次第では、様々な使い方ができます。私はそば猪口として使用したり、食後のコーヒーを入れて飲んだりして使っています。細長いという特徴もあって、リュックのサイドポケットに入れることもできます。
このお弁当箱の名前『maruti』は形が丸いこと以外にも様々なご使用方法を考えてマルチに使っていただきたいという思いを込めてつくりました。
製作過程です。
使用したのはエゴノキです。普通の木材は丸太の中心の芯と呼ばれる部分を使うと割れてしまうので除きますが、このエゴノキは芯があっても割れることなく使うことができます。この特性を利用したお弁当を作成することに決めました。またアカデミーが主催している“エゴノキプロジェクト”で伐採し、和傘のろくろと呼ばれる部分を作るのにも使用しており、今回のお弁当箱と籠展を開催場所の長良川デパートと馴染みの深いものです。
今回使用するエゴノキはそのエゴノキプロジェクトのふくべの森のものです。林道に倒れ掛かっており、いずれ支障木として切る予定のものを杣の森学舎さんに切っていただきました。実際に販売されている和傘のろくろの部分と産地は同じものです。
切っていただいたエゴノキは生の状態なのでこのままお弁当製作に移行できません。このまま作ってしまうと、割れてしまったり、歪んでしまったりするからです。それを防止するために乾燥させていく工程を挟みます。ただ、丸太のまま乾燥させると何年もかかってしまいますので荒彫りと呼ばれる形にしていき、ビニールハウスの乾燥室でひと夏過ごしてもらい、無事乾燥の工程は終わりました。
ここから挽いていく作業です。
試作の底面を作っていた時に木口が荒れてしまう現象が起こることが多かったです。ですがこの現象、水分を置く含んだ生木の時には起きないのです。水を荒彫りした穴の中に入れることでこの問題は解決しました。作業に入る前にピッチャーで水を入れていきます。
ある程度しみ込んだら、作業が始まります。
木工旋盤とういう機械に取り付けて、外の面を削っていきます。外面が出来上がったら内面を掘り進んでいきます。この中を掘る作業が難しく何個か失敗してしまいました。
次は底の面のはめあい、蓋を作る工程です。
コールジョーと呼ばれる道具を使い、後ろ側を削っていきます。
三段なのでセットではめあいを調整していきます。この後の工程で砥の粉、漆を塗るので少し隙間をあけるのですが、木は湿度で動くので、翌日には入らなくなっていることもあり、難儀しました。蓋も同様にはめて、隙間を確認しながら作っていきます。
次は塗装の工程です。
汁漏れがおきないように砥の粉と呼ばれるものを塗り、目止めをしていきます。
乾燥させて、紙やすりで毛羽立ちを取ったら、漆を塗っていきます。
漆と黒弁柄を混ぜ、一回、二回と塗って、最後は生漆を塗って完成しました。
三段のお弁当箱なので、蓋をつけると四つの部材があり、荒彫りも成形していく作業も数が多く、さらに一つ一つのはめあいもあって、とても大変でした。今回使用したエゴノキは普段の木工ではあまり使用しない節も含まれていて、繊維の流れが変わっていくので大変でしたが、自分のモノづくりのために切った命を無駄にしないようにと作りました。節を使うことで普段見られない木の表情も楽しめると思いますので、是非お手に取っていただけたらと思います。弁当箱とカゴ展でお待ちしております。
岐阜県立森林文化アカデミー 木工専攻2年 白瀧周