建築ツアーin富山県
2月8日(土)「魚津市立星の杜小学校」の完成見学会と「富山県美術館」の見学に行きました。
魚津市立 星の杜小学校
延床面積4,950m2。国内初の木造3階建て、大規模木造建築物の学校建築の完成見学会。
先日、アカデミーの授業「建築防災」で講義してくださった安井昇先生が防耐火設計を担当され、温熱環境協力として辻充孝先生も関わられた建築です。
意匠設計:
外壁の仕上げは、1階については児童の手が届く範囲は杉の下見板張り。2階と3階はメンテナンスを考慮して、ガルバリウム鋼板仕上げ。
内部仕上げも、児童の手に触れる範囲(腰壁や床など)が木質化され、ぬくもりある空間です。
階段教室として使用されるメディアセンターの吹き抜けの壁は、木の端材のパネルと土壁パネル(統合された3校の土を使用)となっています。
校内に説明パネルが設置されており、児童の学校建築への理解を深め、愛着を育てる工夫がなされています。
防耐火計画:
建築基準法の改正により、床面積3,000m2ごとに区画し上階延焼防止措置を講じれば、3階建ての木造校舎が実現可能になりました。国内初の木造3階建て学校建築である星の杜小学校の設計には、実大燃焼実験を3回も行われた成果が反映されています。1時間準耐火構造として、大部分の躯体が石膏ボードにより被覆されているものの、見せ場となる独立柱や小屋組は現しとした燃え代設計がなされています。木材は1分間に1mmずつ燃え進むため、火事になっても一定時間の構造耐力を確保するために、構造材の断面を大きくする設計手法です。また、上階への延焼防止措置として、天井の不燃化と各階に小庇が設けられています。設備機器の取付方法も、天井や壁の耐火被覆の欠損を最小限にするよう工夫されています。
構造計画:
木造3階建て校舎のプロトタイプを目指した構造計画。既存の技術と生産システムで施工可能な構造するため、柱は120-150角ベース、梁は幅120・せい270までを製材、それ以上は合わせ柱や合わせ梁、集成材で設計されています。
音環境:
多層木造建築で上階の音が下階へ響くことが課題ですが、天井や床の構造を工夫し、衝撃音が軽減されています。見学会で多くの人が集まった空間でも、音の響きが緩和されており会話がしやすいという印象です。
木材調達:
構造用木材の総使用量は1,102m3。ほぼ100%の構造材に地元魚津市産材が使用されています。通常の流通量ではまかないきれないため、木材調達が計画的に行われました。今回のような大規模木造建築の計画においては、木材コーディネーターの役割がとても重要です。
見学会の最後に、パネルディスカッション。行政と設計(意匠、構造、防火、温熱)、そして木材コーディネーター。誰1人が欠けても、このプロジェクトは実現しなかったのだろうと思います。
会場から都市部でも同様の計画が可能かどうかとの質問が出ました。1500m2以下なら実現可能とのこと。これから、木造の学校建築物が増えていくことが期待されます。
行政:魚津市役所の松倉貴宏氏
設計監理:東畑建築事務所の久保久志氏と鈴木一級建築事務所の江端雄也氏
防耐火設計:桜設計集団一級建築士事務所の安井昇氏
構造設計:桜設計集団の佐藤孝浩氏
音環境協力:国土技術政策総合研究所の平光厚雄氏
温熱環境協力:森林文化アカデミーの辻充孝先生
木材調達:サウンドウッズの安田哲也氏
富山県美術館
設計は内藤廣氏。
今回は、展示室以外の公開スペースを見学。
エントランスを入って最初に目に入ってくるのが、TADギャラリー前の赤い壁。近づいて見るとコテで施した模様があり左官仕上であることがわかる。
天井のダウンライトは仕上面から少し凹んだ高さで納められており、天井面の連続性を損なわないすっきりとしたデザイン。
天井点検口には、枠を入れず小幅板の仕上材を面一で納めています。
2階ホワイエは天井高11m、ガラス張りの大空間。天井はアルミで仕上げられ、杉の小幅板で仕上げられていた1階とは異素材ですが、照明のデザインは統一されているという心憎い演出。
階段の手すりは、アルミを贅沢に使用しソリッド感を活かしたデザイン。
床にはタスクアンビエント空調の吹き出し口が配置されています。
図書コーナーにアアルトのテーブルと椅子。
中央廊下は富山県産の杉で仕上げられたぬくもりの空間。
扉は格子壁と同じデザインで存在が消されています。
木製パーティションのハンドルの収納
富山県のゆかりの素材(アルミニウムと杉材)を活かし、変化に富む空間構成とデザインと細部にも工夫がちりばめられた建築でした。
先生方の建物解説を聴きながらの見学は、とても勉強になりありがたいです。今回の建築ツアーを計画し、連れて行ってくださった辻充孝先生、松井匠先生に感謝します。来週からは高知へのツアー、こちらも楽しみです。
木造建築専攻1年 松岡