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2020年09月25日(金)

令和2年9月9日(水) 第2回市町村林務担当職員研修【区分3】を実施しました。

1.地籍調査の手順(航空測量を使った地籍調査 地籍調査法第19条5項)

9:00~11:00

講師:地籍アドバイザー(株式会社 十日町測量 取締役魚沼支店長兼企画部長) 佐藤 修氏

 

 唐突ですが、山の所有に関する境界の確認には、大きく「地籍調査」と「境界明確」の2種類の確認の方法があります。

 

 ご存じの方も多いでしょうが、「地籍調査」は山に限らず、すべての土地に対して行われ、成果がそのまま登記される所有者の財産に関わる境界の確認です。「境界明確」は、森林の施業を行うことを目的とした、地籍調査に比べて簡易なもので、登記と直接的には関係がありません。

 その境界の確認は、「地籍調査」・「境界明確」いづれの場合も、今までは隣り合う土地所有者等の関係者が山に入り、境界について現地で合意することで確認していたのですが、年々森林所有者の高齢化に伴い、現場に出向くことが大きな負担となってきています。

 そこで航空レーザー測量のデータを元にして作られた地形情報(樹木など地上にあるものを除いた地面の形状を面的に表したもの)や、植生情報、現地調査で得られた筆界情報、現地における位置に精通しているもの等の証言による筆界の情報など 様々な情報の重ね合わせや、組合せにより、原則として現地立会いを行わないで筆界案を作成し、それを土地所有者等の関係者が集会所で確認する境界調査の方法が導入されています。

 そういった確認の方法を「リモートセンシング技術を用いた山間部の地籍調査マニュアル」として国交省が平成30年5月にまとめており、今回はそのマニュアルの作成に携わった地籍アドバイザー((株)十日町測量)の佐藤氏に、この調査方法の概要を伺いました。

 この確認の方法は現在、現地での確認が著しく困難と認められる奥山や急峻な地形の場所に対して認められており、どのような工程で精度を担保する予定かを明記した承認申請書を国土交通省大臣に提出し、あらかじめ承認を受けることで実施されるものです。

地籍調査手順を説明

 

2.林業分野での一般的な所有境界の明確化の方法・先進事例の説明

  11:10~12:10

 講師:岐阜県森林組合連合会 森林整備部 森林整備課 課長補佐 渡邊 啓弘

 

 次の時間は、境界明確・地籍調査双方の仕事に携わっておられる、岐阜県森林組合連合会の渡邊氏より話を伺いました。

 渡邊氏も先に紹介した「リモートセンシング技術を用いた山間部の地籍調査マニュアル」の検討委員会に参加されており、山の境界確認の事情に精通されている方です。

 渡邊氏からは、森林組合で行っている境界明確事業がどのように進められており、どのような課題があるか、また、行政がどのような支援をすることで、地域にとって有益な成果が得られるかといった話を伺いました。

 この、境界明確事業は、森林組合等が作成する森林経営計画の支援という位置づけであり、施業を行うための境界を確認することが目的です。それにより、現地では、境界を挟む右と左の木の幹にペンキで所有者の名前を書くなどにより境界の目印となっていることがわかりました。

林業分野での取り組みを説明

3.所有境界の明確化の結果を地籍調査の代替とすることに関する法的な可能性と限界、手続き     13:10~16:00

講師:地籍アドバイザー(株式会社 十日町測量 取締役魚沼支店長兼企画部長) 佐藤 修氏

 

 最後の時間は、再度、佐藤氏に登壇いただき、境界明確事業での成果を地籍調査の成果の代替えにできるのかといった、一番気になる課題についてお話いただきました。

 その説明の前に、「境界の種類」についてから解説いただきました。

 一般的に土地の「境界」と口にするとき、その内容は一律ではなく、これを法律に照らし合わして分類するとき「所有権界」「筆界」「占有界」「地上権界」「借地権界」「永小作権界」「公物管理界」「行政界」をなどさまざまな「境界」を指しているといいます。紛争が起こるのは、双方が違う境界のことを指しており、その位置が違うことが原因という場合があるということです。こう説明いただくと、紛争の構図が俯瞰して分かります。

 先の分類に、地籍調査と境界明確事業の成果を当てはめると、地籍調査は「筆界」の確認であり、筆界は公的存在であり、『不動産登記法』に由来するもの。境界明確事業は「所有界」の確認であり、『民法』に由来するものと分類され、明確な違いがあることが分かります。

 このようなことから、境界明確事業での境界と地籍調査で確認した境界を代替えするのは、そう容易ではなく、慎重に検討して、この2つの境界の位置を重ねる必要があるということが分かりました。

 ただし、冒頭の話で伺ったように、今後「筆界案」に基づいた地籍調査が山間部では成果として認められるようになったように、山間部での地籍調査での確認方法が緩和されることで、山間部における地籍調査の可能性を感じる面もありました。

研修実施状況