プロジェクト・アドベンチャー入門 〜コンフォートゾーンから飛び出すって!?〜
森林環境教育専攻では、年度末2月3月は外部講師による集中講座が連続します。
特に1年生は、幅広い森林文化の知識や技術の習得と実践を体験した1年の最後に
今後生きていく上で確かな土台となる「自分」「コミュニケーション」「人間関係」
にスポットを当てた授業が連続します。
森林環境教育の指導者として将来人と関わって活躍していくには、これら人間として
大切な「土台」にスポットを当ててしっかり見つめ、確かめ、そして養っていくこと
は、とても大切な活動だからです。
というわけで、前回のコミュニケーションワークと並んで、そんな自分自身に気づき、
見つめ直し、そして大切にしていくために実施しているのが、アメリカで生まれ、
30年ほど前に日本に上陸したプログラム「プロジェクト・アドベンチャー」です。
今回は、本巣市根尾にある「NEOプロジェクトアドベンチャー」を会場に、シンジこと
菱川慎司さんをファシリテーターとしてお迎えして2日間に渡り実施しました。
そんな授業の様子を、学生のチャーハンこと福田一葉さんと、よーちゃんこと
山﨑葉子さんが報告してくれたので、それぞれ紹介しますね(長文失礼)
by なんちゃって先生 萩原ナバ裕作
<チャーハン(福田一葉さん)の報告>
2023年3月15日、16日の2日間、本巣市根尾でプロジェクトアドベンチャー(PA)というものを体験してきました。
森林環境教育専攻の授業ではありましたが、今回は建築、林業、木工、そして森林環境教育のクリエイター科全専攻の学生と森林環境教育専攻の先生2名の合計10名ほどが参加し賑やかな2日間でした。
賑やかではありましたが、自分と向き合う事が多く体感したことのない2日間でもありました。
朝集まるとチェックイン(今の気持ちの共有)をし、プログラムを体験してふりかえり、プログラムを体験してふりかえりを繰り返して1日終わるごとにチェックアウト(今の気持ちの共有と今日のふりかえり)をするということを2日間行いました。
自分の周りに円があり、1番自分に近いのが安心感の得られるコンフォートゾーン、2番目がチャレンジできそうなストレッチゾーン、負荷がかかり過ぎてしまうパニックゾーンの3つのゾーンがあるということを教わり、今回はれぞれのプログラムでストレッチゾーンに行ってみました。
プログラムは全員が輪になり名前を呼びながらボールを投げるもの、3m程の高さの壁を協力して全員が登りきるもの、40cm程度の高さのところで協力して数メートルの綱を渡りきるもの、6m程度のところに上り綱渡りのようなことをするもの、同じく6m程度の高さのところからジャンプするものなどがありました。高いところで挑戦するものに関しては命綱の錘になるものは自分達でした。
挑戦する、しないは個人の判断です。
ふりかえりでは、一つ一つのプログラムで全員がチャレンジするのは難しいのではないか、全員がクリアすることが目標であったが楽しかった・目標を達成しなくても良い気持ちで終われた、痛みがあると感じ方が変わってくることを実感したなど様々な意見がここには書ききれないほどたくさん出てきました。
全員が輪になりボールなどをプログラムは、渡したい相手の名前を呼びながら手元に届いてから3秒以内に投げ、投げているものを制限時間中(数分)落としてはいけないというルール付きでした。
投げやすくて当たっても痛くないもの、風の影響を受けやすいもの、細長く柔らかいプラスッティック製のトリ、鹿の角などがありました。風の影響を受けやすいものは遠くの人まで届きづらい、鹿の角はそっと投げないと受け取る人が痛いということがわかってきました。
自分の思ったところに届かなかった、名前を呼んだのに気づいてもらえなかった、プログラムが始まると視野が狭くなっていた、痛いものが飛んでくるかもと知っているだけで気持ちが引き締まったなどと感じた学生もいました。
これを日常的な会話に置き換えると、自分ではやわらかく伝えたつもりが相手には棘があるように伝わっているかもといった話にもなりました。
2日間全員同じ体験をしましたが、最後のふりかえりではそれぞれ違う感想を持ちました。興味がある人は参加した学生に会えたら感想など聞いてみて下さいね。
(報告:森と木のクリエイター科 森林環境教育専攻1年 福田一葉)
<よーちゃん(山﨑葉子さん)の報告>
3/15、16に本巣市根尾にあるNEOプロジェクトアドベンチャー(以下PA)で行われた『PA入門』。自然豊かなフィールドで学生・教員合わせて12名を迎えてくれたのはファシリテーターのシンジ。(皆、ニックネームで呼びあい、対等な関係性の中ですべては動いていきます。)堂々としているけれど偉そうではなく、気さくに話してくれるけれど時に耳が痛いことも躊躇なく指摘し、笑って皆を見ているけれどもひとりひとりを淡々と観察している。プログラムを進めながら場を調整してくれる心強い存在でした。
どんなことをやったのか少し紹介すると、身体を動かすもので初めにやったのはネームトス。みんなで円になって色んな特性のボール(柔らかい、軽い、持ちにくいなど)を落とさずキャッチボールを30秒間維持します。受け取る人の名前を呼ぶこと、3秒以上ボールを持たないこと、隣の人にはパスできないこと。ごく簡単なルールですがボールが増えたとたんパスは通らなくなります。なぜパスが通らないのか、みんなで原因と対策を考えながら何度も挑戦しました。
チームで出た意見を集約すると、投げ手も受け手も双方が周囲をよく見て、取りやすいようにパスを出し、声掛けだけでなくアイコンタクトなどのコミュニケーションが必要で、積極性が必要、というところでしょうか。視覚・聴覚・発声・キャッチとスロー、瞬時に替わる状況下で一度に複数のことをするとき、頭で解っていても体が動かず、日頃別々に使うことの多い頭と体をしっかり動かすにはトレーニングが必要だと実感しました。
PAで行われる体験学習とはなんなのか。体験から気づきと考察・分析をし、どうしたらうまくいくのか仮説を立てて実践してみる。これを繰り返すことが体験学習の循環過程である、とのレクチャーを1日目の終わりに受けました。頭も心も体も総動員です。
ネームトスを皮切りに2日間で大小合わせて10種類位の体験をしました。PAではチェックインやチェックアウトだけでなく、体験の後に必ず振り返りが行われます。そこでは自分の気持ちをみんなの前で話しますが、言葉にして口に出すことで自分の感情を再認識したり、その場で何が起きていたのか、自分の目には見えていなかった出来事などが語られ、みんながどう考えていたのかも知る事ができます。人の気持ちやアイデア、色んなものを感じながら次のミッションと自分自身の挑戦に繋げていきます。
個人の成長は心地よいと思うところ(コンフォートゾーン)から一歩踏み出したところ(ストレッチゾーン)での挑戦からはじまります。けれど踏み出した一歩が大きすぎるとたちまちパニックに陥ってしまいます。(パニックゾーン)それを体感できるのはハイエレメントという高所でのアクティビティが適しています。高所恐怖症の方にはハードルが高いですが、自分の命綱をチームメイトが支えてくれている中で自分がどこまでやるのか、やらないのかを決めることができます。(チャレンジ バイ チョイス)
自身と向き合い、選択し、挑戦する感覚を味わう。それができるのは失敗しても許される安全管理とチームへの信頼があってこそ。PAに来てよかった、挑戦してよかったと感じられた2日間でした。
PAを通して学んだ大切なことは「自己・他者への理解」で、理解するには相手の口から出た言葉をまず否定せず聞くことでした。そこから生まれる良質なコミュニケーションで色んなバックボーンを持ったアカデミーの個性豊かな人たちとこれからも面白いことをやっていきたいと思います。
(報告:森と木のクリエイター科 森林環境教育専攻1年 山﨑葉子)