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2018年06月17日(日)

『木育カフェ』って子どもがコーヒーをサーブしてくれるの?

伝える現場実習「木工講座の実践2」の実践フィールドを郡上北濃から、美濃市へ移しました。学生にとっては、一切合切を取り仕切るのは初めての経験です。『与えられたテーマに沿って、自身で目的を設定→教材開発→準備→実践→効果を振り返る』その現場の反復でしか、伝える力を育むことはできません。学生の学びのために、その実践フィールドを提供して頂ける現場の確保か鍵となります。今回の報告を学生の柴田 眞規子さんがリポートしてくれました。

授業担当:松井 勅尚

 

梅雨空の6月6日、「雨だれのペーパーナイフ」と題した木育カフェが美濃市の下牧保育園で開かれました。参加してくださったのは美濃市の3園(下牧子ども園・牧谷保育園・美濃保育園)の保育士さん、地元林業グループ『山の駅 ふくべ』の会員さん、『更生保護女性会』の会員さん。今回は、森と地域に向き合う 皆さんと、普段から子どもたちと向き合うことを大切にされている方たちです。
ホスト園・下牧子ども園の野倉園長先生からはじまりのご挨拶をいただき、本講座監修の松井勅尚先生からお集まりの趣旨について簡単に説明いただいたあとは、今回 企画担当の長屋さんがひとりで進行します。学生にとっては有難い経験の場、貴重なお時間を割いてくださった方々にまずは参加の御礼を述べ、本題の「木育」についてのスライド解説を行いました。

日本/岐阜の森林をとりまく現状と、子どもたちの問題は無関係ではない、「子どもを育てることと森を育てることのつながりを感じてもらう」のが今回の目的のひとつ。森と木から学びを得る『ぎふ木育30年ビジョン』を掲げる岐阜県での取り組みについてお話しし、その総合拠点となる『木のふれあい館(仮称)』が2020年春に開館予定であることをお伝えします。
まち(都市部)にありながら森への関心を促し、昔ほど密でなくなった森と人との関係を再びつなげるための場となるこの施設は、‘人の問題’を‘人’だけで解決しようとするのでなく、‘森’も含めて考えてみるアプローチの仕方を提示します。逆も然り。‘森’だけでなく、‘森と人’。「いのち」を「育む」といった共通項が浮かびあがってき、木育はどの年代にも関わってくる、課題解決の一助となり得る、との気づきにつながります。

解説後はテーマである「木でつくりながら、 おしゃべりしましょう」の実践。作り方の説明、材の紹介(今回は美濃市の木=カエデ)、木育カフェのルール説明を受けた皆さんの手には雫型の木片が。タイミングを計ったかのように狙い通り(?)の雨降らしの企画者・長屋さんデザインの“雨だれ”を、ペーパーナイフに仕上げていくかたわら、お題に沿ってお喋りしてもらいます。

テーブルつきの店長として各テーブルに入った学生スタッフが、まずは自己紹介の口火を切り、その後、参加者の方々にも順次 自己紹介していただいたのちお題についてのお喋り開始。カエデの木片を紙やすりで磨きながら、途中、でき具合を確認したり、においを嗅いだり、仕上がり間際になると粉受けの新聞紙で試し切りする姿もちらほら。面白いことに、あるテーブルでは全員が空中で、別のテーブルでは全員が机置きで、磨き作業をされていました。どちらも同席のどなたかに‘倣え’でそうなったのか…… テーブルごとに流派があるかのようでした。

ながら作業とはいえ機能を備えたものを作るので気を抜けず、気楽にお喋りしながら、のいつもの木育カフェよりも若干、作業に集中してしまう場面もありましたが、おおむね順調にさまざまなお話がお題ごとに繰り広げられました。お題ごとに席をかえ、紙やすりの番手もあげていき、3つのお題を終えるころには思い思いの切れ味の、雨だれペーパーナイフができ上がっていました。見本と見まがう出来もあり、皆さんどこか満足気、お喋りが楽しかったということもあるでしょう。


木育カフェを終えてのふり返り、各テーブル代表の発表者からのコメントは以下の通り・・・

「木育カフェ」って子どもがコーヒーをサーブしてくれるの? と思っていたら違う世代の方

たちと、作りながら緊張感少なく お喋りしやすく楽しめた。目線を合わせずにすみ気楽だった。
・ 年齢による遊びの違いを感じた。かつては山・川で遊んでいたのが、今はゲームで、みんなと

一緒に遊ぶようなことが少ない。

・ 他の方のお話を聞き「えー、そんなことがあるんやぁ」と驚きがあって楽しかった。

年配の方のお話から、顔見知りばかりで家族以外からも叱られるのが当たり前という子どもを取りまくかつての状況は、窮屈なようで実は懐深くおおらかに子どもたちを見守り、失敗を許容し、時に痛さや怖さから学ぶ(多少危険な)機会も引き受けていたように感じました。学年入り混じって群れ遊ぶ機会が減り、外遊びが主の昔遊び(伝承遊び)を伝える世代も減り、「昔はよかった」ではないですが、今に活かせるヒントがあるなら、今がぎりぎり引き継ぎが間に合うタイミングなのかもしれません。
森の課題と人の課題はつながっている…… 今の社会の課題を背景に生まれた「木育」の、‘生きる力を育み、森と人の命を大切にできる人間に育ってほしい!’ という願いが 「木育カフェ」という肩ひじ張らない気楽なお喋りから広がっていけば、明るい方に向かっていく可能性も信じられるのでは?

「小さい子にどういう遊び ・どういう生活 を伝えていくか、みんなで一緒に考えていく必要があるかなと思った」

木育カフェ後、こう感想を述べた方がいました。気負わずゆるやかに みんなで一緒に考えていけたら、そして前向きな気づきが得られたら、課題解決の一歩に近づくことでしょう。

クリエーター科2年 柴田 眞規子