木造建築病理学 熱水分から考える劣化予測と対策
本日は木造建築病理学 秋の回でした。
本日は、熱や水分が与える木材劣化の専門家として、足利工業大学の齋藤先生、バリアフリーの観点から、リハブインテリアズの池田さんをお招きしてしっかりと学びました。
前半の劣化対策ですが、雨や湿気の多い日本において水分による木材劣化は非常に重要な分野です。
実態に基づく資料と、その場で説明用の図を描きながらわかりやすく講義していただきました。
特に聞きたかったゾーニング改修時の評価指標:区画熱損失係数Q*の話はこれから重要になってきます。
一つづつの内容は深いですが、要点のメモです。この内容を学生の内から聞けるとは貴重です。現場で相当に気を付けないといけないポイントばかりです。
・漏気と内部結露
住宅には3つの漏気(隙間風、壁内気流、室内空気の漏出)があり、防湿欠損によって、躯体内の水分量が上がってしまいリスクが増す。
防湿フィルムを張るだけより、きちんと押さえると10倍程度、湿気を遮断できる。
2Paの圧力差(内外温度差20℃くらいで天井付近の圧力差)があると、通常コンセントボックスからも相当量の湿気が流入する
漏気によって胴差天端が最もリスクが高くなる。
・漏水を考慮した屋根の水分環境
瓦などの1次防水は風速10m/s以上でかなり浸水してくる
その場合、ルーフィングの2次防水が大切だが、釘やステープルによる欠損がどう影響するかが重要
アスファルト系ルーフングは温度が上がると、溶けて釘の隙間を防ぐが、北屋根のようにあまり温度が上がらないと、うまく隙間をふさいでくれない。
透湿系ルーフングは、温度に関係なく、一定量の水分が通過するが、乾燥性能もよい
・生物劣化モデル
劣化具合を、木材の質量減少率で評価
水分供給量と温度の関係から生物劣化モデルを検証
・外壁の劣化リスク
年間降水量と平均風速の積の指標で評価
札幌よりも東京、鹿児島の方が、降水量も多く、風速も高いため雨水進入のリスクが高い
断熱などは、北の技術が広まってきているが、劣化関係は別の視点で考えることも大切
軒が短いと、壁面の劣化リスクが相当高くなる
海外では、より厳しい条件で水分環境の評価を行っている
・区画熱損失係数Q*
外皮からの熱損失、非暖房室からの熱損失、壁内気流による熱損失の3つを考慮して計算する。
それぞれの係数と、温熱水準ごとの目安値を提示
バリアフリーの講座も非常に良かったようです(私も別件の用事で聞けなかった)が、それは学生だけの特権ということで。
どれも、非常に興味深い内容で、建築の専門家として避けては通れない分野です。特に気持ちのいい性能の高い家を設計するのであれば劣化対策は必須で、長く住んでもらいたいものです。
准教授 辻充孝