ドイツBW州で学ぶ林業-1 ロッテンブルク林業大学とProHolz
ドイツ連邦バーデンビュルテンベルク州(以下、BW州)のロッテンブルク林業大学と、岐阜県立森林文化アカデミーが連携協定を結んでおり、本年6月にドイツで開催される「日独林業シンポジウム」の打合せを兼ねた調査をしてきましたので、報告します。
朝8:30にロッテンブルク林業大学に向かうと、ハイン教授、クルストフさんが校門前で待っていて下さいました。写真の右側の城壁内部に学校の講義室や食堂などがあります。
挨拶も早々に、Sebastian Hein 教授、Christoph Endさんとともに演習林に出かけ、デンペ・ボルフさんからドローンによる森林計測の技術を見せて頂きました。
ロッテンブルク林業大学の演習林は、面積約2500ha、ブナが主体の広葉樹林が多い。土壌は粘土質でオークに適した土壌です。
ドローンは人が入れない山林の航空調査に適している。今回使用するものはDJIプロフェッショナルという中国で開発されたもの。本体は1000ドル、付属品が約2200ドルで、普通は高度100m、今回は50m高の空中から4haを89ポイントに分けて撮影する。
パソコンに撮影位置などが入力され、林分構造や材積なども求めることができます。
お遊びで、ドローンを見学している私たちを撮影してもらいました。なお、この道路は未舗装ですが、よく整備されています。
演習林の道路は未舗装の市道で、40トンのトラックが40km/hrで走行可能な道に基礎からしっかり整備され、随時補習が実施されています。
続いて、ロッテンブルク林業大学に戻り様々協議した後、ブリアン先生からPro-Holz(統括組織)について説明を受けました。
ブリアン先生によると、BW州には伐採から製材、家具、パルプ関連を含めた林業関係企業が2900あり、従業員は20万人おり、年間310億ユーロ(ちなみに1ユーロは130円くらいなので、ものすごい金額)を稼ぎ出している。
これらを横断的にまとめあげるPro-Holz(統括組織)を作り上げた。ここは5つのクラスターに分けられ、各々のクラスターにクラスターマネージャーがいる。このマネージャーが活動の要となっている。マネージャーは公募である。
ちなみに写真、左からブリアン先生、エントさん、ハイン教授
ロッテンブルク林業単科大学でも「ホワイトウッド」クラスターの人に来てもらって、どう利用するかを講義してもらっている。
BW州でも、小さな民有林を集合体化して有効かできないかが課題である。これに対して、2007年~2014年には50のプロジェクトを立ち上げ、780万ユーロ(約10億円)を投資した。
2015年~2019年にかけては、①小さな工務店の生き残り戦略、②技術の継承と利用促進、③地産地消による補助金利用に取り組んでいる。
マネージメントでの課題は、①イニシャリング(地域のオーガニゼーション)、例えば紙業業界のクラスター関係者には「森と関連している」という再認識をさせる。 ②クラスターは全体が7年後に自立できるように誘導されている。 ③クラスターのコンセプトを作成し、理解させ、共同して仕事することを理解させる。
北シュバルツバツト地域は「家具」を中心としたクラスター、他には「建築用木材のクラスター」、ドイツトウヒなどホワイトウッドのクラスター、広葉樹を中心としたクラスターもある。
各々のクラスターが自分の弱点を共有し、業界全体として高い位置にステップアップすることを狙う。
このPro-Holzには「道づくりについて検討」する時に、機械メーカーにも来てもらい協議する。ドイツは40トン、フランスは44トン、スカンジナビアは120トンの車両交通が認められるが、インフラ整備上、「あと少し車両を軽量化できないか」などの要望を実施する。
このPro-HolzはEUから50%、BW州が25%、企業体から25%出資して運営する。
続いて、実習施設の一部を見学。なんと建物はほとんどがパッシブハウスで壁の厚みが30cmくらいあり、ブラインドは窓の外側にある(日本は逆)。
しかし熱効率から考えれば、外にブラインドがあった方がいいよねぇ~!
最後に新築中の大型機械棟を見学、日独林業シンポジウムまでにはここを完成させ、多くの方々に見学してもらう予定とか。
さて、今回のドイツ視察、毎日、忙しい時間を過ごしましたが、これから順に報告します。
以上、JIRIこと川尻秀樹でした。