ドイツ&スイス&イギリス森林教育視察 実況報告⑤(イギリス編)
今回の視察最終地、イギリスに到着。昨日から5日間ぶっ続けの研修です。
イギリスにはその名も「Forest School」という教育プログラムがあり、全国に広がっています。メインは幼児・小中高生ですが、基本的には全ての人を対象に、地域の森を活用した様々な活動を通して、「ソーシャルスキル」「自己調整」「セルフモチベーション」「自己認識」「共感する心」を大切にしながらホリスティックな(総合的な)体験をしていくプログラムです。つまり、「森で(森林空間の特徴を活かして)」「育てる」ことを重視しているプログラムなんです。(単に森林や林業について、アウトドアスキルや木工技術についてを伝えるだけが目的ではありません)
また、そのための指導者育成のプログラムも充実しています。初心者向けのレベル1から始まり、レベル4に至るまで、自然科学、教育学、リスクマネジメント、アウトドアスキル、チームビルディング、コミュニケーションスキル、などなど幅広いジャンルのことを学ぶ長〜い道のり(最短でも1年半はかかります)を経て、数々の自習や、ポートフォリオ、通信によるチューター教育、4日間に渡る実践アセスメントなどを受けて審査に合格した人だけが晴れて指導者になれるというわけです。
今回は経験者向けのレベル3のコースに挑戦。研修には、16名の参加者があり9割が学校の先生でした。講師はAliceさん、今回の講座を主催している団体、Forest School Education(Archimedes)の3名のトレーナーのうちの一人で、見るからにユーモア溢れる頼り甲斐のある女性です。
1日目、オリエンテーション(トイレやキッチンなどの場所を確認)が終わると、他己紹介、ネームトスやフープリレーなどお馴染みのプログラムを通して受講生のコミュニケーションを促し、アイスブレイクをします。
学び手の心がほぐれてくると、ペアで森の中に偶然!?ぶら下がっているカラフルな毛糸を2人で協力してよってブレスレットを作り友情の印として交換したり、自然物を使って小人の家をこれまたペアで作ったりというコミュニケーションをさらに深める作業が続きます。
午後は、ロッパー(太枝切りバサミ)や弦型のノコギリ(bow saw)、ナタ(Billhook)、ナイフの使い方や、紐の結び方(2種類)を分かりやすく、ユーモア溢れる方法でしっかりと教えてもらい、木の枝のフレームや、マレット、ペグを作りました。この過程でもペアやグループの人とのコミュニケーションや共同作業が重視されます。
この道具の使い方の伝え方「ToolTalk」と呼ばれていて、 Forest School独特の方法です。これがよくできていて、道具の各部の説明から使い方、持ち歩き方、渡し方、置き方、安全領域から片付け方まで、シンプルかつ理にかなっていて覚えやすいんです。
自分たちで作ったフレームを使って、目を閉じで互いのオススメスポットをフレーミングしてパートナーに紹介する体験や、朝来た時の気持ちと今の気持ちを自然物で表現するような感性を刺激したり、表現をしたりするアクティビティも体験しました。
とまあ1日目は次から次へと様々なアクティビティを「体験」する1日でした。
翌2日目の午前は、1日目のふりかえりと、それを消化するための作業。
イギリスのバイユー・ タペストリー(1066年のノルマンコンクエストを描いた刺繍画)のように、昨日の体験や学びを皆で1つの巻物に表現しました。全員でディスカッションをしながら、昨日の体験を振り返りつつ、それぞれの中にある学びや重要なポイント、なぜあの時あの方法をとったか、などについて講師とともに真剣にディスカッション。それぞれの現場からの疑問や現実的な課題などの話も出て来て朝から白熱してました。
その後も、チームに分かれて昨日の体験のおさらいゲームや、ジェスチャーによるおさらい、ToolTalkのやり合いなど、「ふりかえりや復習も、講師が主導するのではなく、受講生同士でチェックし合い、意見を交換し合い、伝え合うことで自らの学びにつなげていく」展開が続きました。これは「教師中心で一方的な教育」になりがちな教育現場から来ている先生たちにとっては大きなお土産となったことでしょう。
その後も、ロープワークによるシェルター作りの方法の実習をしたり、森の生態について調査したり、リスクマネジメントやフォレストマネジメント、ミニマムインパクトなどについて話し合ったりしました。
実習も多いですが、ディスカッションも非常に多いのがこの2日間体験した中での印象。実習ひとつをとっても、とにかく無駄のない流れと、徹底したシンプルかつ分かりやすい道具や技術の伝え方、そしてふりかえりの促し方、学びへの促し方がよくできていました。自習やインターネット上でできるようなことは、できるだけ各自に任せ、実習やディスカッションなど、人が集まっているからこそできることにのみここでの時間を割いているのが特徴的であり、これからの人材育成のヒントになるのではないかと思いました。
さてさて明日から3日目。果たしてナバにどれだけの余力があるか否かは分かりませんが、なんとかしてもう1回くらいはアップしようと思います。何れにしても帰国後何処かのタイミングで報告会を開こうと思いますのでお楽しみに〜。
なんちゃって先生 萩原ナバ裕作