ドイツ報告-5 München Grünwaldの森林体験センター「WALDERLEBNISZENTRUM」を行く
ドイツ南東部のバイエルン州(Freistaat Bayern)の首都、ミュンヘン(München)にある森林体験センター「Walderlebniszentrum(http://www.alf-eb.bayern.de/forstwirtschaft/wald/072604/ )」を訪問しました。
ここはBW州のHAUS DES WALDESと同じように、BAYERN州の食品と農業・森林省の管轄で
なおこの施設について、2016年にも報告しておりますので、そちらも参考として下さい。
(ドイツ報告-09 グリュンバルトで現地現物教育の現場を見る https://www.forest.ac.jp/academy-archives/%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E5%A0%B1%E5%91%8A-09%E3%80%80%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%81%A7%E7%8F%BE%E5%9C%B0%E7%8F%BE%E7%89%A9%E6%95%99%E8%82%B2%E3%81%AE/ )
緑の森(Grünwald)にあるWalderlebniszentrumに向かう入り口、駐車場で車を降りるとすぐ脇に、立木の根元から発するガソリン給油ホースがあります。その横には作成した女性のコメントがあります。
簡単に言えば、私たちが生活するために必要な酸素や食料、エネルギーはどこから来ていますか?そう多くのものは森林が源となり、一本の樹木を見れば枝葉のある樹冠で光合成し、その栄養分ができる。すべてのものが循環の中にあることを暗示している。
こうしたメッセージが駐車場の横にあるから、訪問者はそこから森について考え始めるのです。
駐車場から林道を200mほど歩くと、この施設の案内と森林の水質浄化機能の展示がありました。
森林の水質浄化機能の展示は2016年には訪問者が体験するようになっていましたが、今回は閉鎖系の実験モデルの展示に代わっていました。
施設案内のところには、ここで働くインストラクターたちの顔写真付きの紹介がありました。ここもフォレスター兼所長としてJosef Würzburgerさんが、そして教育者のSigrid Hagenさんがメインで指導されているようです。
そうこう話しながら、近くに立っていた人見ると、なんとフォレスター兼所長としてJosef Würzburgerさんと、教育者のSigrid Hagenさんではないですか?
早速、教育者のSigrid Hagenさんに、「日本から森林環境教育の現場を見に来たことや、2016年に時間が無いながらも周辺を見たこと、運営その他について教えて欲しい」と話をして突撃取材です。
バイエルンには48カ所の行政区があり、24カ所に森林環境教育施設を配備している。
この森林体験センター「Walderlebniszentrum」でもHAUS DES WALDESと同じように、学校団体や一般の方々の森林環境教育を実施している。
バイエルンではフォレスター全員が森林環境教育を実施するわけではなく、やる気のあるフィレスターが実施している。
野外には木材の見本や丸太を製材した状態のものなど展示解説されています。
この施設の来場者数は年間約10,000人、そのうち4割は幼稚園や個人の方々、残りの6割が小学校・中学校の学校単位の利用です。
ここは70haの州有林を管理運営しており、スタッフはフルタイムの人が6人、うち3人は1年で更新される。人件費を除く年間の運営費は30,000ユーロです。
周辺森林は地元の伐採業者に無償で伐採してもらう契約をしており、伐採業者は伐採木の木材代金を経費に充てている。伐採業者が無償で間伐を請け負っている州有林は数多くあり、全体で年間20億円もの収入につながっているらしい。
ここにも目の不自由な方々が利用するための点字の案内板も設置されていますが、これはBW州のHAUS DES WALDESを参考に最近設置したそうです。
センターハウスは学習棟や管理棟があり、エリア内にある問題の解答を参考に暗証番号を入力する仕掛けもありました。
森林内とは言え、芝生も美しく管理され、学習棟の中にはBW州で見たような真っ暗な部屋も設置されていました。
また、河原のような未熟土の裸地と苔の生えた森林土壌を再現したモデルでどのような流出水があるのかを比較実験する展示もありました。
森林内のトレイル沿いには何カ所も立木と木材(板目と木口)、樹種名、解説版が見られました。この看板はトチノキについてのものでした。
面白いのはこの広葉樹小径木を屋根から吊下ろした建物。
これは子どもや大人が入って行くと、吊るされた木材が甲高い音を立てるのです。見ている前でお爺ちゃんとお孫さんが入って行きました。
次の施設は音階が設置された「木琴」を設置した小屋です。同じ樹種で木材の長さを変えることで音階が調整されています。
次は生えていた大きな立木を加工した引き出しがあり、この樹木の一生が引き出しごとに示してあります。
上の引き出しが設置してある幹の反対側には、森林土壌を観察できるようになっています。ここでは縦横1平方メートルで、深さ1mの穴が掘られています。
土壌が森林の影響でどのように変わっていくのか現物を見て、触って、学べるようになっています。
そして先ほどの立木をふり返ると、土壌断面側には土壌断面を示した扉があり、それを開けると土壌の成り立ちが解説されています。
セルフガイドでいろいろ学べるようになっているのです。
また、キツネの絵の解説版があり、東屋からスタートする林内一周の「歩道」に仕掛けがあります。
入り口左の看板に、「キツネになったつもりで考える」。
つまり動物ならば足裏は肉球など「裸足」で歩いている。 ドイツ語で「Tast Pfad」とあるのは「手探り小径」という意味で、『人も裸足になって目かくして、ここを歩いて見て下さい。何かを感じたらしっかり見て下さい。と記されています』。
歩道コースに反時計回りに入ると、最初はコンクリートの路面、次いで小石をコンクリートで固定した足つぼマッサージ路面、というように約5m間隔で変わります。
ドイツトウヒの球果が敷き詰められた歩道は、いい香りがします。
この球果の次には苔(コケ)が敷かれ、その次は砂利、そして森林土壌と続きます。
晴れていればどれが気持ちよいのか。雨でも気持ちよいのはどれか。いつも気持ちよいのはどれか。
そうした感覚を動物の目線で見て、自分の足の裏感覚で感じ取るのです。
池のそばにはカエルの問題が設置されていました。
カエルの寿命について質問があり、何番が正解かで「暗号解読」につながるヒントが得られます。
最後にセンターハウス前にあるキノコ型ボックスに戻って、森林内に設置された7つの質問の回答番号を、金庫のプッシュボタンに入力すると扉が開くのです。
子どもにとってはわくわくする体験でもあると感じたのです。
こうした教育施設はドイツだけでなく、アメリカやイギリス、北欧各国にもありますので、興味のある方は是非調べてみてください。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。
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