ドイツ報告-08 ドイツ林業技術機械協会(KWF)主催の機械展-②
ドイツのバイエルン州ローディングで開催されたKWFが主催する世界最大の「林業機械メッセ」、ここは周囲7 kmにわたって様々な新技術が展示されていましたが、今回は大型機械の一部を紹介します。
※KWFとはドイツの林業 機械と林業作業の認定機関である林業技術機械協会のことです。
2日目は森林総合研究所の井上さん、宇都宮大学の有賀先生、鹿児島大学の寺岡先生、鹿児島大からロッテンブルク大学に留学している早川さん、そして慶応大学の眞明さんです。
最初に目指したのは、少し小型ですが使い勝手の良いアタッチメントを販売されているMAX WALD社です。北海道にも代理店がありますが、ここの機械は速水林業さんでも導入されていると、速水代表から教えて頂き見学に行きました。
対応して下さったのは社長夫人でした。
珍しいのは四輪独立駆動で、三輪でも自立できるハーベスタです。もちろんこの種の機械はどのような状況でもキャビンが水平になって、オペレーターに負担にならないようなシステムが組まれています。
このハーベスタで直径50cmくらいの立木も、伐採、玉切りしていました。下の写真には教務課の山田さんが写っていますので、その大きさがわかって頂けると思います。車輪の大きさが直径150cmほどあります。
続いての機械は車輌です。なんと積車トラックの上にまた車輪がある?
これは木材搬送用のトレーラーで、荷台に積み込んである車輌を降ろして伸ばすと、20~40トンのトレーラーとして利用できるのだそうです。日本での走行には問題がありますが、さすがヨーロッパ仕様です。
次は、多くの人がご存じのイエローとグリーンがトレードマークのジョン・ディアーです。機械的に新しいものがあるのかどうかわかりませんでしたが、とにかく日本ではなかなか見られない大きさに圧倒されました。
日本の林業機械の多くは建設機械をベースにされていますが、海外では林業専用に開発されているため、アームが細く、かつ人で言うところの「関節」が多いため可動域が大きいのが特徴で、この機械も相当細かな動きを再現していました。
次も林業機械でお馴染みのレッドカラーで有名なコンラッドです。
相当大きなワンダーファルケというタワーヤーダとハーベスタが合体した車輌が展示稼働していました。
岐阜県でもカネキ木材さんが導入されているウッドライナーも展示されていました。これは荷揚げ索が世界一の強度と軽さを兼ね備えた高分子ポリエチレン繊維 HMWPE(Heigh Molecular Weight Polythylene)100%を 使用した「ダイニーマ®」という特殊ロープを使用しています。
ダイニーマ®は直径10mmのロープで約20t(理論値)まで吊り下げることができる強度を持っています。
意外に多く見られたのが、日本で言うところの「滑り止めチェーン」でした。
従来型のチェーンやキャップ式の滑り止めなどがありましたが、クローラタイプ違いホイールで湿地帯やぬかるみ走破するのに必要なのです。
この写真で見て欲しいのは、車輪の下に高さ70cmほどの切り株があるのに、ハーベスタの操作キャビンは水平であることです。
途中、展示してある林業機械のオペレーションルームに、自称身長200cmの早川さんに座ってもらいましたが、多くの機械は座席にも相当お金をかけており、一座席が20万円~40万円ほどしているものを取り付けて、作業者の快適環境を実現していました。
こちらのグリーンとオレンジの機械は、オーストリアPOSCH社のもので、大きな丸太を入れてチップを作ったり、薪を自動採寸・薪割りするものでした。
この丸太でも直径40cmほどありました。
さて、次の機械が問題です。
この丸鋸がたくさんついている機械、なんだと思いますか? なんとこの機械は道路にはみ出た街路樹の枝を一律に切り揃える大型機械だそうです。
ヨーロッパの人は、なんと大胆なものをつくるのか? と驚きました。
会場では大きな機械を展示しているだけでなく、森林所有者に架線や搬器の操作方法などを模型で説明している業者さんもいました。
こうした詳しい説明に、ヨーロッパ各地からきた参加者も食い入るように説明を受けていました。
ほかにも会場が軍隊の演習場ということもあり、実展示会場脇で実際に間伐したり、間伐材を搬出するデモンストレーションも披露されていました。
ヘルメット着用、防護パンツ着用、セイフティグラス着用でしたが、上半身はTシャツ姿でした。
最後に、林業機械とは全く関係ありませんが、おもしろい展示がありましたので紹介します。
ここで展示販売されていたのは「パルプシート」です。これはバイオマス資材である丸太が雨水で湿ったり、販売する原木が日焼けしたりするのを防ぐ、再利用可能で防止のパルプシートです。
未利用枝葉のバイオマス利用が盛んなヨーロッパでは、枝葉が腐ったり、水分が多すぎたりするのを防ぐことも重要で、資源有効利用のため天然資源由来のパルプシートが見直されているのです。
さて、KWFによる4年に一度の世界林業機械メッセのごくごく一部を紹介しましたが、是非、次回開催の2020年にはご自身の目で確かめに行かれることをおすすめします。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。