ドイツ 森の教育ワークショップ 報告
お待たせしました!去る12月1日にドイツ・ロッテンブルク大学のフックス教授を講師に迎えて開催された森の教育ワークショップの報告です。
幼稚園・保育園での風邪大流行でキャンセルが相次いだにもかかわらず、第一部には50名、第二部では70名もの方々が北は福島県、南は大分県と、本当に全国から参加してくださいました。ありがとうございます。そして定員オーバーのために、あるいは日程調整がきかずに第一部に参加できなかった皆さんごめんなさい。その代わりにこの報告で当日の様子を知っていただけたらと思います。
<第一部>(前半:ドイツの森の教育体験)
講師のフックス教授の簡単な自己紹介のあと、まずはウォーミングアップも兼ねて、2人ペアになって広場に広がります。ペアの片方が目隠しをして、遠くにある木に向かって合図があるまで歩きます。(目隠ししている人は全員同じ木に向かって歩きます)自分のパートナーがよほど道から外れてしまったり、ぶつかりそうな場合のみ相方は肩をたたいでパートナーを止めます。それ以外は黙って後ろをついていくだけ。単純ですが、なんだか面白い。目隠しをとってどこにいるか気づいた時の面白さ、パートナーのありがたさ、目隠しして歩いている時の視覚以外の感覚などなど、各自が感じたことを互いに、そして自然に話し始めていました。素敵なアイスブレークです。
その後は、班分けのために袋の中のもの(自然物)をひとつずつ手にとります。同じものを持っている人を探すわけですが、その探し方がオモシロイ。手を後ろにまわして背中合わせで互いの手のものを触り合うんです。なんだかコレまた仲良くなりそう!こうして1班5人のグループが10班できました。
お次はそのグループでとある課題を解決です。なんとあのレオナルド・ダビンチが考案したという「橋」の図面が各班に渡されます。お題は、「角材でその橋を再現せよ!」しかも釘もねじも何も使わずに角材だけで作るというのです。チームメンバーが相談しながら1枚の図面を頼りに角材を組み重ね、橋の構造をつくります。簡単そうで意外に難しい。。互いの知恵やアイデアを出し合います。フックス先生はというと、出来たかに思う橋を見ては、ちゃんと出来てない場合は、ガ〜ンと足で壊してまわってます。。。
橋が完成し構造が理解できたら、今度は倍の長さの材を使って他のチームとつなげて大きな橋をつくりました。見事レオナルド・ダビンチの橋の完成です。完成した橋を渡って皆大喜び。子どもたちも渡ります。釘も使わず、ただ組み合わせているだけとは信じられません。それにしてもダビンチは天才ですね。
最後は、木材の二酸化炭素固定についての話を、3つの風船を使って説明してまとめとなりました。伝えたいことをビジュアル化、見える化、体験化するという点、プログラムのつなぎ方や展開を見ていて、森の教育のプログラム指導は、インタープリテーションと大変よく似ていたのが印象的でした。
ドイツのプログラムもいいけれど、日本の林業の現場の技術や、森の中での活動の日々の作業の中に、教育プログラムに活用できそうな、オモシロイ素材が転がっているのではないか?というナバの仮説のもとに、3つの活動を体験してもらいました。
その活動とは、
①枝打ち作業で活用されてきた伝統的な技術「ぶり縄による木登り」(伊佐治先生担当)
②伐倒したい方向にひっぱるためのロープをより高い所にかけるための「ロープ上げ」(原島先生担当)
③箸を忘れた時に便利な「剪定ばさみによる箸づくり」(柳澤先生担当)です。
それぞれの体験会場では、大歓声があがったり、仲間の安全確保の為に見守ったり、黙々と削る作業に没頭したりと、様々な反応がありました。フックス教授はそれぞれの体験会場で、日本の伝統的な技術を興味深々に見ながらコメントや提案をしてまわってくれました。これら伝統的な技術や、作業の中にプログラム化できそうな確かな手応えを感じることができました。
第1部のしめくくりは、作った箸でお弁当を食べながらの「ふりかえり」。参加者からは、「前半は人と近づく、後半は森と近づく感じがしました」という感想や、「林業現場での作業や技術が教育プログラム化できる可能性を強く感じた」という感想がありました。
<第二部>
第二部は、室内でフックス教授による「ドイツの森林教育の現状」の紹介と、木戸啓絵先生(岐阜聖徳学園大学)による「ドイツと日本の森のようちえんの比較」の話と、パネルディスカッションとなりました。
まずは話をする前に、アイスブレーク。集中力のウォーミングアップと言いつつ、ペアでやる楽しい遊びです。やっぱり学びは楽しい状態ではじめないといけませんよね。
フックス教授の発表で印象深かったのは、森林国ドイツでさえ、なんと50%の子どもたち(12〜15歳)が「木を伐るのはよくないこと」という考えを持っているという事実でした。だからこそ、森の教育(森林教育?)が必要なんだとフックス教授。さらにそのための指導者育成やプログラム提供は「タンデム方式」、つまり教員(教育の専門)とフォレスター(森の専門)がタッグを組んで行うというあたり、すぐにでもマネしてみたい事例でした。
また木戸さんの発表では、「行政・地域・森林官ともっと連携すべき」「幼児教育後の教育の必要性」が課題てあることが見えてきました。パネルディスカッションでも、継続的な全年齢層に対する「森の教育」の必要性・重要性が改めて確認されました。
個人的には、近い将来「森の教育(森林教育)」のできるフォレスターの育成、そして総合的な森の教育を展開できるセンターの設立(箱ではなくソフト)が課題として見えてきました。
朝から夕方暗くなるまで、それはそれは充実した1日でした。
なんちゃって先生 萩原ナバ裕作