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2018年04月08日(日)

『どんな形も正解!』“自分なりに”を大切にするものづくり「木工講座の基礎」(最終回)

3月が師走のように過ぎてしまい・・・年度が改まってしまって、すみません。

2回目まで報告をしました木工専攻の授業「木工講座の基礎」の最終回を報告します。

「木工講座の基礎」担当:松井勅尚

2月6日からスタートした大口町立北保育園でのファーストスプーン作りの3回目=最終回が2月26日(月)に実施されました。この日も前回と同様に…いえ、前回以上に早く会場に保育士さんが集まり、講座の前の自主作業を進めていてくださいました。ご自身の職務があり、どなたもお忙しい中にも関わらず開始時間よりも早く集まって下さる姿に、熱意とやる気、そしてこの時間を楽しみにして下さっていることが伝わり、指導する側もそれに応えたい!という気持ちで身が引き締まります。

講座開始時間の何と1時間前です!

最終回は仕上げの工程になります。「水引き」という工程を経て、最終の600番のサンドペーパーをかけました。皆さん、「もう少しこだわりたかったなぁ」という部分がありましたが、講座の運営においては時間内で完成させるということも重要になります。「もっとやりたい!」という気持ちが次の実践へのモチベーションに繋がる大切な心の在り様と捉えつつ、こだわりに線引きをしていただきました。

水引きによって濡れた木の乾燥を待ちきれない保育士さんたち!

サンドペーパーを終えたら「塗装」をして完成になります。塗装に関して1年生の山路今日子さんから説明をしてもらいました。

植物油の塗装についてレクチャー。酸化重合反応とは・・・

 

なぜ塗装が必要かという部分から丁寧に説明があります。今回は「えごま油」で塗装しました。今回のように特に子どもにも関わっていくような食の道具の講座の塗装では、アレルギー等の懸念も考慮し植物系のオイル、「えごま油」等を薦めてきました。大口町の保育士さんはすでに箸づくりで塗装まで経験済ですので、そんな質問はありませんが、この油を薦めるときによくされる質問があります。「オリーブオイルはダメですか?」。…どれも健康にはとても良い成分を含んだもので、最近の流行でもありますが…ダメなのです。その理由についても山路さんから「乾性のものと不乾性のものがあり…」と詳しく説明がありました。そして説明の最後に、植物性の油で塗装をしたときのウエスなどの処理についても、とても重要なことなので、改めて伝えてもらいました。なぜなら正しく処理をしないと自然発火する可能性があるからです。大口北保育園の素晴らしい木造の園舎にそんな危険が及んでは一大事ですから。

また、今回は直接お教えするという形ではありませんでしたが、砥石を持ち込んで1年生の宮崎晋さんに「砥ぎ」の説明とデモンストレーションをしてもらいました。

研ぎのデモンストレーションで違いを実感!

 

第1回目の時に「道具」に関する話をしたからです。刃物は使ううちに切れなくなります。刃物の面が、作る材料にも影響していくため、道具はとても大切です。園で所有している切り出し小刀はほとんどが刃こぼれをしていました。園が何本も持っている小刀はそれだけでも財産だと思いますが、それを研いで直していける人がいればそれは「人財」となります。そんなこともお伝えできればと思い「砥ぎ」の実践をしてもらいました。

あれっ???自分でつくった箸までメンテナンスしてました!

塗装を終えてめでたく完成です。全員のスプーンを並べて振り返りをしました。
「始めは道具をうまく扱えるのか…と苦手意識もあったが、姿勢や使い方動かし方など手本を見せてもらったりすることでコツをつかめるようになり、削れていくのが楽しかった。講座の開始前に確認できたり、見守ってもらいながら取り組む時間があったので安心してできた。」
「講座が始まる前はスプーンを作りたいという思いが強かったのに、いざ作業になると他の人との差を感じてしまい、やりたくないな~と思ったこともあったが、先生のチェックや声掛けに気持ちを取り戻し完成に向かえたことは本当に嬉しい気持ちになった。」
保育士さんたちの振り返りの中で最も多く出てきた言葉が「自分なりに…」でした。この言葉の後に続く言葉は「…できて良かった」です。ポジティブな言葉ではありますが、「不安を抱えていた」という思いの裏返しでもあると私は思います。小刀に対する苦手意識、ちゃんと形になるかなという心配、どこまで削ればいいのかな、本当にこれでいいのかな…など今回は特に宿題としてやってきて頂く部分も多く、様々な場面で不安があったのではないかと思います。スタッフの声掛けや見本手本でその不安を少しでも軽くでき、身体も心も無理をせず「自分なりに頑張れた」という思いになって頂くことができホッとしました。
大人でも子どもでもやっぱり褒められれば嬉しい!今回のスプーン作りを通して、スプーンや道具に対する接し方だけではなく、子どもや人への接し方まで考え感じて頂けたことが嬉しく、また、その気づきを振り返りでコメントして頂けたことで私を含むスタッフもまた自分自身を客観視する大きな機会となりました。

振り返りの発表会風景。

最後の松井先生の言葉がその気づきを心の深いところに落とし込んでくださいました。
「匙面の出来栄えのチェックなど、食べる道具としてのクオリティで妥協が許されない部分がある。しかし、箸と違ってスプーンは誰もが正解、どんな形でも正解なのです。ものづくりは人生と同じで小さな経験を積み重ねていくものだと思っている。だからこそ手本見本を見せること…つまり大人の振る舞いが大切だと改めて感じました。」

「ものづくりは人生と同じ」・・・人生は他人と比べるものではないはずです。「自分なり」を大切にする、大切にできるものづくりは、「自分を認めるものづくり」であり、現代の子どもたちが持てていないと言われている自己肯定感を育むことができる素晴らしい活動であると改めて感じることができました。

講師として、最後のまとめをする吉田理恵さん。

 

大口町でのスプーン作りの講師が私のアカデミーの学生としての最後の取り組みとなりました。最後に相応しい大きな学びができたのも、大口町の向学心向上心溢れる保育士の皆さんのおかげだと感謝しています。またこのご縁を結んで下さった松井先生、スタッフとして支えてくれた1年生の皆さんに感謝申し上げ、ブログの結びとさせていただきます。2年間の学びを胸に「自分なりの人生」を歩んでいきます。ありがとうございました。

クリエーター科2年(いや・・・16期生)吉田 理恵