林業事例調査2023(3)株式会社山長商店さま視察(2023/7/24PM)
事例調査二日目の午後は『株式会社 山長商店』(以下、山長商店)へ向かいました。山長商店さんは造林から伐採、製材、プレカットを一貫して自社で行う会社で、その取り組みを中心に見学させていただきました。
はじめに、山長商店の榎本会長から会社の沿革や理念などを伺いました。どのようにして紀州材の性質を活かした製材をするかについて、熱量を持って語られていたのが印象的でした。
室内での事前説明を受けたあとは、同敷地内の工場の見学です。
山長商店さんでは紀州材を用いた高品質なプレカット材を生産しているのですが、材がどのような過程を経て完成するのか、事細かに教えていただきました。
製材工程の見学では、丸太の皮むきからはじまり、製材、乾燥、検収と、丸太が正角や平角という製品になるまでの流れを追って説明していただきました。
ほかにもバイオマスボイラーの導入といった環境面への配慮も積極的に行われていました。製材過程で出た端材は、乾燥のためのエネルギーとして利活用されているとのことです。
材の形にして終わりではなく。最後に検査を受けて合格したものが製品になります。
検査が終わると製品番号、サイズ、ヤング係数、産地ほか規格・認証マークなどが記された印字が施されます。産地を明示しているのは紀州材にこだわりを持つ山長商店さん独自の取り組みだそうです。
紀州材は材の強度を示すヤング係数が高い反面、含水率を下げる乾燥工程が難しいため、ここまでのクオリティを保つのは並々ならぬ工夫とこだわりを感じました。
最後に、プレカット材の製造過程を見学しました。
写真はほぞをいれたプレカット材です。複雑な形に瞬時に加工していくのが非常に驚きでした。工程の中で作業者さんが工程ごとに木の方向を確認しており、品質に重きを置く山長商店さんの姿勢が印象的でした。
一方で、見学や説明の中で紀州林業が“スギノアカネトラカミキリ”という虫による材の虫害に悩まされているというお話も伺いました。自然を相手にしながら高品質を目指すという難しさを改めて感じました。
見学を通して、紀州材という木目の詰まった品質の高い丸太を、いかにして価値を高めるか。山長商店さん独自の品質管理など、随所に努力と工夫を感じ取ることができました。
また、日頃の授業では林業の川上の部分のことが中心で、林産業についてはまだ知らないことが多かったため、詳しく説明してくださったことはとても勉強になりました。そして、丸太材がどのようにして製品へと変わっていくのかを知ることで、私たちが学校で学んでいる林業についてより理解ができるようになりました。
見学にあたってスライドや資料などをご準備していただけたことで、たいへん濃密な時間を過ごすことができました。貴重なお時間を割いて見学を受け入れてくださったことにあらためて御礼申し上げます。ありがとうございました。(林業専攻1年 古川嵐太郎)