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2023年07月21日(金)

新科目その2「コミュニティ・コミュニケーション」

今年から、森林環境教育専攻の選択科目に「コミュニティ・コミュニケーション」を新設しました。

森林をかかえる中山間地域では、少子化や人口流出、そして高齢化により、地域を支える人が減っています。
その一方で、現在地域では移住者やUターン者、さらには「関係人口」とよばれる外から積極的に地域に関わる人が増えています。こうした中、「昔からのつきあいで、知り合い同士ばかり」というこれまでの地域コミュニティでは、新しい人間関係の構築が必要になるなど変化が必要になっています。

新しい人が入ることで多様性が生まれ、地域に新しい可能性も生まれますが、他方、互いの価値観や経験の違いから、意思疎通のズレも生まれがちです。

変容する地域コミュニティにおいて、新しい可能性を生み出すためには、多様な人々の間に立ち、様々な価値観をつなぐことができる「つなぐ人」がより一層求められていくのではないか・・・。郡上市で移住相談業務を長年実施してきた経験から、これからの中山間地域に必要とされる「つなぐ人」をアカデミーで育てたい、と考えました。

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「つなぐ人」には様々な能力が求められますが、最も必要なのはコミュニケーション能力。
これまでも森林環境教育専攻ではコミュニケーションに関わる様々な授業をしてきましたが、急速に変化する地域社会で必要なスキルについて、今一度考えてみることにしました。

地域社会で新しい価値を創造するための「つなぐ人」は、人と人の間に入ることが常です。そのため、眼の前にいる人とのコミュニケーションだけではなく、その先に人と人がつながることを意識したコミュニケーションのありかたも重要になってきます。

対人関係だけではなく、コミュニティ全体を意識した新しいコミュニケーションについて、専門家を交えながら考えていくことにしました。ご協力いただいたのは、岐阜大学教育学部の板倉憲正(いたくら・のりまさ)准教授です。板倉先生は以前、郡上市で移住促進における心理学的アプローチについての考察とアドバイスをいただきました。


特別講師をお願いした岐阜大学教育学部の板倉憲正 准教授

授業は、郡上市で2日間連続で実践的に行いました。多くの地元の方にご協力いただき、インタビューを通して「つなぐ人」に必要な姿勢やスキルを見出していきます。

1日目(6/13)は、地域で人と人の間に入る機会が多い、市職員や中間支援組織の職員など、地元の4名の方に板倉先生を中心にインタビューを実施。学生のみなさんはその様子を見学します。

公認心理師、臨床心理士としてカウンセリングやセラピーを行っている板倉先生の、相手の気持ちを引き出すインタビュー手法はとても勉強になります。


郡上市役所明宝振興事務所の高田課長から対話のときに心がけていることなどを伺う

インタビュー中は、オープンダイアログの考えを取り入れたセッションも行われました。板倉先生と地元の方の話を聞いて、本人の目の前で学生同士が今聞いた話について議論します。

お話をいただいた一人の地元の方は、学生同士の話を目の前で聞く中で、自己理解について新たな気づきがあった、とおっしゃっていました。


郡上市役所明宝振興事務所の高田課長から対話のときに心がけていることなどを伺う

 

4名のインタビュー修了後、1日のふりかえりをしながら、間に入る人はどんな人々か、どんな心持ちやジレンマがあるのかなどをディスカッションして初日は終了しました。

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2日目(6/14)は、移住した方4名を交えての講義です。
移住された方々の悩みやジレンマを伺いながら、途中、板倉先生のミニワーク、講義を交えながら、ディスカッションをすすめます。


インタビューにご協力いただいた郡上市に移住された方々。(左から)進藤さんご夫妻、岡野さん


移住された方といっしょに「人の話を聞いて自分の考えがどう変わるか」を体験するミニワーク

移住された方も学生も、人と関わる中で感じる様々な悩みや不安がある一方、板倉先生からは

「人には困難を解決する力がある」

というメッセージが示されました。その上で、相手のことを受け止めるコミュニケーションだけではなく、お互いに安心して「異論・反対」が言い合える関係づくり・・・真にアサーティブな「関係性の構築」が大切だということが伝えられました。

 


 

2日間の集中講義の中で、板倉先生からは、コミュニケーションや対人関係における、多くのキーワードが示されました。
参加した学生から、これからのヒントになりそうだと思ったキーワードについて挙げてもらいました。

  • 葛藤を楽しむ。葛藤しているということは、変容を求めているから
  • 異なる声(異質性)が大切。自分とは違う意見に好奇心をもつ
  • 価値観が一緒の人はいない
  • 解決策を出そうとしなくていい
  • その人の生き方の答えを与えることはできないが、生き方を支えることはできる
  • アクティブリスニング:「あなたの話に興味があります」という姿勢
  • 受容・共感的対応が大切

年齢もキャリアも多様なアカデミー生。受け止めかた、吸収したポイントも人それぞれだったと思います。
これからの学生生活、そしてその先の社会で生きていく上で必要になるヒントを、各々なにか一つでも掴んでくれたらいいな、と思いました。

また森林環境教育専攻としては、卒業生が自分を大切にした上で他者の応援ができる、人と人との「関係性の構築」を意識できる人になってほしい、そうすれば、中山間地域の未来は可能性が広がっていくのでは・・・と願っています。

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今年が初めてとなるこの科目。2日間を終えて、全学生共通の感想が、

 「板倉先生の相手の話を聴く姿勢が、とても印象的だった」

でした。そして<大変だったこと>の全員一致の回答が、

 「ずっと話を聞き続けていて、集中力を保つのが大変だった」

でした。みなさん、本当にお疲れ様でした!

この反省を基に、次回からは学生のみなさんにもインタビューにチャレンジしてもらおうと思います。
みんなで”アクティブリスニング力”を磨きましょう!

森林環境教育専攻 准教授 小林謙一(こばけん)

 
途中、移動販売車が来たのでヒアリングする学生。自身も山村地域での移動販売を考えていたとのことで、グッドタイミング!予定外の学びがあるのも現地での授業ならでは。