山村の資源を活かす(山村資源利用演習 第1回目)
<2023.5.11> エンジニア科2年生・林産コースの「山村資源利用演習」がスタートしました。
今年の履修生は4名。1年間一緒に学び合う仲間なので、まずはお互いの「現在地」を確認。
来春からの進路はこれからですが・・・
「木育に関わりたい」
「木造の建築物が好き。仕事で海外に行ってみたい」
「家業(製材)で、木のおもちゃの企画・制作を手がけたい」
「色々なことができそうで、行政職員に興味あり」
・・・など、皆それぞれアカデミーらしい思いや野心を抱いているよう。
さて、この授業の目的の一つは「仲間づくり」。
単なる同級生や”仲良し”ではなく、「森と人をつなぐ人になる」という共通の大きな目標を持つ「仲間」として、互いに学び合い、刺激しあえるチームになっていってくことを目指します。
そんな新しいチームでスタートする今年の第1回目は、郡上市明宝に。
山に囲まれた風景の中で、「ところで”山村”って何?」から、今年はスタートです。
「田舎?」「里山?」「山で囲まれている場所??」・・・など、みなが持っている「山村の定義」を共有します。
さて正解は・・・詳しくは、昨年のクリエーター科の「山村集落論」の記事をご覧ください。
アカデミー生には、「山村とは?」と合わせ、「里山とは?」もきちんと定義できるようになってほしいので、午前中は里山散策。里山を知り、山村にある資源を色々考えながら、田んぼ、森を抜け、清流・吉田川が午前中のゴールになりました。
古くから、人が石を積みたくなるのは、2000年代生まれの若者でも変わらないようです(笑)
午後は郡上市明宝の「ジビエ工房めいほう」へ。山村資源のひとつである、シカやイノシシなどの野生動物と、獣害など山村が抱える課題と対策、そして獣肉の活用(ジビエ)について学びます。
この授業のもう一つの目標は、これから社会人になる学生のみなさんに森林とそれを取り巻く社会についての視野を広げてもらうこと。そのためにアカデミーは「現地現物主義」を提唱。本やネット情報ではなく、体感を通してリアルに学んでほしいと思っています。山村を考える学びを本質的にするには、”現地で学ぶ”、そして”人を通して学ぶ”ことが何より大切だ、と考えるのです。
学生それぞれの興味やこれからを自己紹介したあと、「ジビエ工房めいほう」事務局長の元満真道(もとみつ・しんどう)さんからお話を伺います。小中学校、そして高校など学校でお話される機会の多い元満さんは、とても分かりやすく山村の現状や課題、そして山村で起きている獣害との向き合い方について伝えてくれます。
福岡県出身で、様々なキャリアを重ねてきた元満さんの「仕事」や「働くこと」に対する思いに惹かれた我々は、もう一歩踏み込んで、元満さんが最も大切にしていることについて伺いました。元満さんからはこれまでの人生をふりかえりながら、最後に
「自分の心に素直でいたら、ここに来た」
という言葉を学生に渡していました。
そんな元満さんが「今ここにいる理由」である山へ向かいます。
今回の実習は、シカを捕獲するための「くくり罠」をしかけるポイントをそれぞれ考えることです。
「シカの視線になって山を見てみる。見えないものが見えてくる」
元満さんの言葉に促され、みなで視線を落として山を眺めると、そこにはこれまで意識していなかった、縦横無尽につけられた獣の道が見えてくる感覚を覚えます。
シカの視線になり、シカの気持ちになって、シカの行動を想像します。
どこを歩くのか、どう歩くのか・・・その上で、どこに罠をかけると捕らえられるのか・・・。
4人の学生は長い時間をかけて、山の風景と、そこに残された動物の気配をおいかけていました。自然の風景と退治しながら、熟考の末、それぞれ罠をかけたいポイントを決めました。
学生が決めたポイントに、元満さんとスタッフの武田さんが丁寧に罠をしかけてくれました。この罠は、これから数週間、元満さんが巡回してチェックしていただけることになりました。さてその結果は・・・。
天気に恵まれ、新緑の中、1日山の中で過ごしました。
丁寧に指導をいただいた元満さん、武田さん、本当にありがとうございました!
これから1年間、体験しながら体感し、これからの自分の生き方、そして自分の生き方の中での山村の恵み・・・資源と自身の関わり方について、お互いの学びを深めあっていきたいです。
森林環境教育専攻 准教授 小林謙一(こばけん)