木工事例調査R5春② 本間寄木美術館
木工やモノ作りの事例見学をする木工事例調査。今回は一泊二日の行程で関東方面に足を延ばしてきました。その時の様子を、学生のレポートでご紹介いたします。
2日目に神奈川県足柄郡箱根町にある本間寄木美術館を訪問しました。
私は以前より、色などが異なった木材の組み合わせによる寄木の技術を活用したデザインの美しさに魅せられており、その中でも、本間木工所で作られている四方盆や茶托、コースターのデザインは特に美しく感じられ、木工所に併設されている美術館は、いつか訪れてみたい場所でした。
住宅地の中にさりげなく存在していた憧れの場所は、思ったよりもひっそりとした佇まいに感じられました。けれども、穏やかな中にも適度な緊張感もあるようでした。売店の横の階段を上がると、3部屋ほどの展示室があり、伝統的な箱根寄木細工の作品が展示されていました。まず、目に入って来たのは、ガラスケースに入った大きな衝立「四季花両面衝立」でした。片面には菊の花、反対の面には扇と季節の花々が木象嵌で表現されていました。細やかな木による表現で、思わず「すごい」と言葉を発してしまっていました。その他にも厨子や引き出し、飾り棚などさまざまな寄木細工が展示されており、今までに見たどの寄木細工よりも細やかで、その技術や手間を考えると気が遠くなるように思いました。美術館の天井には、寄木格天井が施されていて、いつまでも見ていたい天井になっていました。
また、館内では、寄木細工の製作工程のビデオが流れていて、製作工程についても知ることができました。基礎材を型に入れて、手鋸で菱形や三角に切断して文様の部材を作ったり、鉋削りをして部材を仕上げたり、文様の部材を組み合わせた種板を鉋で削って経木状の「ヅク」をつくったり、どの工程にも、手仕事の細やかさと厳しさが感じられ、厳しい修行をした職人にしか作ることができないものだという事がよく分かりました。
売店に戻り、現代の製品を見ると、伝統的な技術がしっかりと生かされていることがよく分かりました。また、私が木製品に興味を持つきっかけとなった滋賀県の洋菓子店の無垢箱の実物を見ることができたのも嬉しかったです。
売店からは、ガラス越しに職人さんが作業をされている様子を見ることもできました。
1時間という短い滞在時間で、全てを見尽くす事はできませんでしたが、私も森が感じられるような素敵なものを作ることができるようになりたい、と強く感じた見学時間でした。このような機会をいただき、大変ありがとうございました。
文責:中西靖子(クリエイター科木工専攻1年)