弁当箱とカゴ展 2022 製作レポート④
9月30日(金) 10月1日 (土) 2日 (日)の3日間、岐阜市にある長良川デパートで、木工専攻の学生6人が製作した弁当箱とカゴの販売を致します。
岐阜県産材を使用し各々が考え製作したお弁当箱に加え、今回はカゴも2種類あります。展示期間中は作品の販売も行います。皆様のご来場をお待ちしております。
6人の学生が製作したお弁当箱はどんな想いで作られたんでしょうか、それぞれにレポートしてもらいました。
皆さま、こんにちは木工専攻2年の内藤光彦です。私は一年を通じて行う課題研究で「オオフトイの栽培」に取り組んでいます。皆さんはオオフトイ(大太藺)という草をご存知でしょうか?木工の中では椅子の座面の編材料としてご存知の方もいるかと思いますが、実は私は昨年夏までは知らなかったのです。オオフトイは直径3mm~15mm程の丸い茎で、春から夏の間に高さは2mを超えるまで一気に成長する雑草です。この草が学校から車で10分の場所に自生していたのです。
生木から(自分で伐採する場合もある)手工具のみで割ったり、削ったりして木工作をする手法をグリーンウッドワークと言いますが、授業で作った椅子ではペーパーコード(紙紐)を使って座編みをしました。ペーパーコードも良い感じなのですが、やはり天然の材料を使って座編みをしたいという気持ちが高まりました。そして、オオフトイの栽培について研究してみたくなったのです。
前置きが長くなりましたが、どんなお弁当箱を提案しようかと考えついたのは「持ち運ぶこと自体が楽しい、ワクワクするお弁当箱」というコンセプトです。そしてこれから研究を進めるオオフトイ!んっ!この瞬間脳内スパーク!バリバリっときて「オオフトイのお弁当カゴ」のアイデアが決まりました。自分自身で座編み材料として既に何度かオオフトイを使っていたので、カゴは編んだことはないのですが出来ると確信していました(オイオイ)。その後教えてもらったり、調べたりしたところ、海外特にイギリスでオオフトイのカゴ編みが行われている写真を見つけました。そのほとんどがまだ草の緑色を残したまま編まれていたので、当初は乾燥したオオフトイを水で戻して使っていたのですが、刈り取ってきてすぐ生のままで編むことにしました。
出来ると確信していたオオフトイのカゴですが、はじめてみるといくつもの壁にぶち当たりました。1本1本編むだけでは強度がなくヘナヘナで形を保てませんでした。数本を束にして編み込むことで強度を確保しました。海外の写真を参考に生で編んだものは、乾燥後に3割ほど縮んでスカスカのヘニャヘニャになってしまいました。やはり乾燥したものを使うように元に戻しました。束ねて使うことにより強度は出ましたが、形はよく動いてしまうので解れの心配がありました。束ねた材を捻って縄状にして使うことで形を安定させることが出来るようになりました。材をたばねて使うことは、カゴの大きさの割に大量のオオフトイを使うことになり、閉じ口がとても太くなってしまいました。この点は逆にデザインのポイントとして他のカゴと似ていない独自の魅力になったかもしれないです。もう1つのポイントとして、持ち手のところにオオフトイの穂をチャームとしてぶら下げています。これはカゴを持ち運ぶ人がその先々で実を落としてきて、もしかしたらそこでオオフトイが育たないかと考えたデザインになっているのです。
図らずして、「捻る、紡ぐ、編む」人が太古より行ってきた手法を今回の製作で辿っていた気がしています。竪穴式住居ぽいなとか、縄文の人もカゴを持ってピクニックに行ったりして、などと想像したりすると苦しかった日々が良い思い出になっている事に気づきました。
様々な壁を乗り越えた結果、現状として満足のいくカゴにたどり着けましたが当初より数々工夫した結果製作時間がとてもかかってしまうカゴであることが最後に残された課題です。確認したわけではないですが、オオフトイのカゴは今、日本にはここにしかないと思います。時間があれば、ぜひ会場に来てご覧ください。
岐阜県立森林文化アカデミー 木工専攻二年 内藤 光彦