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2017年07月25日(火)

こうぞマニアックス〜第1回・コウゾの栽培体験を実施しました

一昨年から実施している森林研究所+森林文化アカデミーの合同企画「美濃和紙マニアックス」、今年は「こうぞマニアックス」と名を変えて、さらに深くコウゾについて学ぶ内容にしました。

ユネスコ無形文化遺産に指定されている「本美濃紙」は茨城県産の「那須楮」を使って作られているのですが、生産者が高齢化し、持続的な供給が危ぶまれています。美濃和紙の地元である美濃市でもコウゾの生産が行われていますが、ここでも生産者の高齢化、株の老朽化、コウゾの品質などに問題が見られます。多くの人にこれらの問題を知ってもらい、一緒に和紙づくりの文化を支えようというのがこの講座の目的です。

まず森林研究所の渡邉仁志研究員より、コウゾの植物的な特徴や、美濃で栽培されているコウゾについての説明があり、手漉き和紙職人で美濃こうぞ生産組合員でもある杉本和香奈さんより、品種ごとの漉き心地や紙質の違いについての説明がありました。研究者と職人がおたがいの専門領域から話をするのが、この講座の面白いところです。

こうぞマニアックス会場

和紙を見る参加者

 

左から、那須楮、美濃那須、美濃土佐、中国楮、美濃楮(黒皮入り)。美濃那須、美濃土佐、というのは、コウゾの2大生産地である那須(那須という地名は栃木県だがコウゾの生産地は茨城県)、土佐(高知県)から美濃へ持ち込まれたと思われるコウゾのこと。それぞれ特徴が違うのです。紙の色や風合いも、比べてみると分かります。今まで美濃那須と美濃土佐を区別せずに収穫・加工してきたのですが、仕分けするとこのようにいろいろな紙を作れるようになります。

コウゾの種類による和紙の表情の違い

 

今回の講座には、美濃市役所の若手の職員さんたちが多数参加してくれました。今後も参加してくださるとのことで、これからいろいろなコラボ企画も可能になるかもしれません。

こうぞボランティア募集チラシ

また、飛騨市の山中和紙(さんちゅうわし)の職人さんも参加してくれました。山中和紙は、コウゾをすべて和紙漉き職人さんが自ら育てています。活発な質疑応答がありました。

山中和紙からの参加者

 

講義の後は、コウゾ畑で脇芽欠きの体験です。脇芽とは、幹から直接葉が出るのではなく、枝となる芽が出てくること。写真で指差している上が脇芽、下が葉です。葉のほうは幹が成長するにつれ落ちてしまうのですが、脇芽のほうはどんどん成長して枝になります。枝が大きくなると、コウゾの長い繊維を取り出しにくくなってしまうのです。

コウゾの脇芽

そのため、初夏から夏にかけて繰り返し脇芽欠きをしてやらなければなりません。下の写真が脇芽を欠いたところ。

脇芽の跡から白い樹液が出る

厳しい暑さだったため、1時間程度でしたが体験をしていただきました。

コウゾの脇芽欠き作業 コウゾの脇芽欠き作業

美濃和紙づくりの文化を伝えていくためには、このコウゾ生産をみんなで支える仕組みが必要です。美濃市こうぞ生産組合では、「こうぞマニアックス」以外にも年間を通じてボランティアを募集しています。年内に3回参加すると、和紙製品がもらえる特典もあります。ぜひご参加ください。詳しくは、0575-34-0310(大光工房・千田さん)、minokouzo@yahoo.co.jp(杉本さん)まで。