日独グループディスカッション(ロッテンブルク連携デザインWS3)
日独デザインワークショップの第3回が、12月17日の夕方(日本時間)に行われました。
初回はプロジェクトの参考となる教員によるミニレクチャー、2回目が学生によるプロジェクト初期案発表、3回目の今回はプロジェクト中間発表+気になるテーマのグループディスカッションです。
まずは、全員が集まってそれぞれのプロジェクトの進捗報告。
アカデミーからは自力建設の木材管理と刻みです。3名の学生が持ち回りで紹介(英語)します。
アカデミープロジェクトの特徴として、演習林の丸太からの製材、全て学内で完結しています。
さすがにここまで一貫して行っている学校は世界を見渡しても数えるくらいです。
製材にあたっては、建物のどこにどんな断面が使用されているかを考えて、部材を揃えていきます。
建物の構造が頭に入っていないと、材を揃えることすらできません。
そして墨付けと刻みです。
学生が行った伝統的な日本の手刻みの様子を紹介します。
ドイツでの木材加工が気になります。
このあたりの加工方法や道具の種類などは、後半のグループディスカッションでやり取りをします。
質問は、やはり木材関係に集中。
使用した丸太の材積や樹齢、径はどの程度なのか。実際に加工する際にプレッシャーはないのかなど、英語で即答できたものや、ゆっくり考えながら答えたものなど、丁寧なやり取りがなされました。
次はロッテンブルク大(以下、HFR)からの中間報告。
計画地にある教会の特徴の解説の後、今回計画している建物の検討状況を説明。
途中段階でのCGもリアルタイムに動かして、それぞれのパーツがどのような位置づけなのかを見せていただきました。
CLTの屋根構面と集成材の軸組です。構造の基本モジュールは、どことなくアカデミーの自力建設の架構(樹状トラス)に似ているような・・・。
前回のプレゼンで、インスピレーションがわいたのかもしれません。
さて、後半はグループディスカッションです。
小さなグループの方が双方向のやり取りがしやすいのではということで、2つのグループに分かれました。
それぞれ2つのテーマを上げて話題提供とディスカッションを行います。
学生同士で事前にメールのやり取りをして、以下のそれぞれ2テーマでディスカッションすることになりました。
グループAが、ウッドマイルズについて(アカデミーが話題提供)、森林と気候変動について(HFRが話題提供)
グループBが、木組みについて(アカデミーが話題提供)、伝統的な木材加工(HFRが話題提供)
グループAで最初に議論したウッドマイルズは、木材の輸送過程の環境指標です。
アカデミーの1期生が取り組んだウッドマイルズを5分ほどで概要説明を行い、ドイツでの状況を確認します。
日本は島国のため輸入材となるとかなりの遠距離。ドイツでは隣国のオーストリアなどとはやり取りがあるようですが、そこまでの距離はなく、ウッドマイルズのような考え方は聞いたことが無いとのHFR学生の答え。
ドイツでは、木材輸送はトラックがメイン。
日本でも検討されているCO2排出量の少ない輸送手段(鉄道やCO2排出を抑えた車、日本では船も)の検討はどうかなどで、盛り上がりました。
また、日本の木材輸入量を聞かれて、さすがに覚えているわけもなく、即座に林業白書を調べる学生がいて、それを英語で答える学生への連携もなかなかのもの。
HFR学生は日本の輸入量の多さにびっくり。さらに輸出量はとの問いに、こちらも即座に林業白書で検索。
輸入量に比べて非常に少ないことにもびっくり、となかなかの盛り上がりを感じました。
続いて、HFRの話題提供は、ドイツの森林の状況と今後の課題の説明がされました。
課題解決のために、針広混交林化や、持続可能な林業経営と木材利用の適正化、広葉樹の利用拡大などが説明されました。
アカデミー学生からの、針葉樹と広葉樹ではどちらの方が利用しやすいかなどの問いに対して、建築としては針葉樹の方が活用しやすいが広葉樹の利用拡大も考えていかなくててはならないなど、日本では注目されていないことへの言及がありました。
ディスカッション時間は、お互いの言葉を聞き逃すまいとパソコンの前に集まって集中しています。言葉が聞き取りにくい部分は学生同士で補完しあって理解を深めていました。
グループBでも同様なやり取りがありました。
アカデミーからは学生が行った木組みについてのプレゼン。下の図は台持ち継ぎ。
今回のために実際の墨付けの様子を改めて撮影・編集してYoutubeにアップしていました。 伝わりやすかったと思います。
HFRの学生からは、金物を使用した接合の可否や木組みのコストについての質問があり、計画段階の様子を思い出しながらゆっくり説明していました。
HRFからのプレゼンは、ドイツの伝統的な木材加工や最新のCNC加工機について。
ドイツでのカンナは押すのが一般的、対して日本は引く。それぞれにどのような特徴があるのか。学生同士のやり取りが面白い。
次回は1月の予定。どのような企画にするかは今回のやり取りを踏まえ考えていきます。
准教授 辻充孝