活動報告
最近の活動
月別アーカイブ
2021年11月10日(水)

morinosスタッフのオフィス環境の主観評価(morinos建築秘話71)

前回はウェルネスオフィスの客観評価ツールとして、建築の仕様や設備など、第三者が定量的に評価可能な項目を評価する「CASBEE-ウェルネスオフィス」の評価を紹介しました。

今回は、「客観評価ツール」の対となる「主観評価ツール」の評価を紹介したいと思います。

主観評価ツールは、ワーカーの満足度、健康感などを評価するツールで、物理的条件や周辺環境に対する、個人の生理心理を介した評価を聴取するツール(アンケート)です。

つまり、客観評価では断熱や日射熱取得などの建物性能で評価するのに対し、今回紹介する主観評価では、実際に働いているワーカーにより「暑い」「寒い」等を評価します。

CASBEE-オフィス環境チェックリスト(2019)

今回、主観評価に用いたのは、同じCASBEE開発委員会で提案され、質問内容が精査されている「オフィス環境チェックリスト」です。

3つの大項目に対して計54個の質問項目がある詳細版と16項目に絞った簡易版の2つをmorinosで働く6名の方に記入いただいています。
規模が小さなmorinosのため、少な目の人数となっています。

これらの結果から満足いく評価や、やや不満に感じる評価が見えてきました。不満足な部分に関しては今後の改善検討に役立つ内容になっています。

Q1 オフィス内の特に作業場所(主に滞在するデスクなど)の環境や設備の状況について

それぞれの質問に対して、
ポジティブ要因は、非常に当てはまる(3点)、やや当てはまる(2点)、あまり当てはまらない(1点)、まったく当てはまらない(0点)の点数、
ネガティブ要因は、ない(3点)、めったにない(2点)、たまにある(1点)、よくある(0点)の点数で評価しています。

最初の大項目は、オフィス内の特に作業場所の環境や設備の状況について聞いています。

全体の平均点で2.38点となり、おおむね働きやすい環境になっています。特にポジティブ要素の点数が高い結果です。

快適に立ち仕事ができるデスクの導入の質問が低い結果です。確かにスタンディングデスクなどが設置されていません。

ネガティブ要素に対しては、特に、作業スペースや収納場所が狭いことや、会話や設備機械音が気になるという項目が低い評価となりました。

Q2 オフィスもしくはビル全体の環境や設備について

二つ目の大項目は、オフィスもしくはビル全体の環境や設備について聞いています。

全体の平均点で2.20点となり、おおむね必要十分な環境になっています。特にネガティブ要素の点数が高い結果です。

低い評価項目を見てみると、使いやすいミニキッチンの設置や打ち合わせブースの選択、仮眠スペース、ロッカーやシャワー室の設置などがあげられています。

確かにハードウェアとして十分に配慮されていない項目でもあります。

Q3 入居ビルでの取り組みや所属する組織について

最後の大項目は、施設全体での取り組みや所属する組織についてです。

全体の平均点で2.00点となり、まずまず良好な体制となります。

低めの評価としては、環境改善のための定期的なアンケートの実施や、ワーカーに対する健康増進プログラム、避難訓練、非常時対応マニュアル、防犯対策などがあげられています。

計51項目の評価の内、エレベーター、階段に関する3項目を除いた48項目が今回の評価です。

全て満点だと144点に対して、今回の6名の方の平均点の合計は106.33点。74%の割合です。

 

CASBEE-オフィス健康チェックリスト 簡易版(2019)(16項目)

上記の51項目の質問に答えるのはなかなか手間がかかるため、オフィス健康チェックリストには16項目に絞った簡易版もあります。

今回は同じ6名の方に簡易版にも答えていただきました。

当然ながら51項目評価と同じような結果となっています。点数が低かったのは、施設内のバリアフリー化と健康増進プログラム、明るさのムラに関してです。

計16項目の評価なので、全て満点だと48点に対して、今回の6名の方の平均点の合計は36.5点。76%の割合です。

客観評価と主観評価の比較

客観評価である「CASBEE-ウェルネスオフィス」での総合評価は、75.4点/100点のSランクでした。

今回の主観評価の全体では、詳細版で74%、簡易版で76%の評価となり、概ね客観評価と一致しています。

それぞれの項目で見ても弱点となりうる項目は共通していることから、計画段階で「CASBEE-ウェルネスオフィス」の評価を行うことで、運用時のワーカーの満足度もある程度予測することも可能ではないかと考えられます。

働きやすい環境を作ることで仕事の効率(知的生産性)を高めることは、ワーカーの仕事へのモチベーションを高め、より良い施設・運営につながるプラスのスパイラルを生み出します。

准教授 辻充孝

morinos建築秘話の全話はHPから見れます。