建物のだるまの目 「建具」(みどりのアトリエ建築日誌9)
皆さんは、建具というものはご存じでしょうか?
けんぐ?いえいえ、建具(たてぐ)です。
2020自力建設にも、建具が吊りこまれましたので今回は建具のお話をしていこうと思います。
まず、建具とは
「建具(たてぐ)は、建築物の開口部に設けられる開閉機能を持つ仕切り」
要するに、扉や障子などのこと指す言葉です。
みどりのアトリエの建具にも、開き戸や、引き戸がついています。
〇オープンスペースの引き戸
オープンスペースの引き戸は、格子があった場所を切断して作りました。遠回りしなくて良い動線を目指しました。
オープンスペースの入り口である引き戸は、中に誰がいるのかがわかるように大きなシングルガラスが入っています。
ガラスの周囲の枠のことを框というのですが、室内側から見ると60㎜~80㎜だけ枠が見えるようにし、視線が外に抜けるような引き戸にしました。
先輩である松下さんと一緒に、設計していく中で決まっていきました。
シングルガラスは、軽い引き戸が作れ、コストを抑えることができるため選定しました。
断熱性能としては、弱点となるため隙間をピンチブロックで埋め、気密性能を上げました。
また、土間部が冷気だまりとなり、フローリングまで冷たい空気がいかないようにしています。
〇個室ブースの開き戸
個室ブースの開き戸は外から見えないように、シナフラッシュ戸になっています。
個室ブースは籠る場所なので、外からの目線をできるだけ遮るようにしました。
また、フラッシュ戸の中には断熱材が充填されているおり、断熱性能と遮音性があります。
川が近く湿気がこもるため、カビ対策のために塗装をして対策をしていく予定です。
扉がバーンと勢いよく開きすぎたり閉じたりして怪我をしないようにするための「コンシールドドアクローザー」です。
〇個室ブースの腰窓と地窓
集中ブースは籠って集中する場所なので、極力外部の目線を遮りました。
しかし、外の見えない部屋にしてしまうと圧迫感があり、疲れてしまいます。
さりげなく、緑が見えるように腰窓の大きさを設定しました。川側の位置に作ることによって、覗かれる心配もありません。
デスクの下には、長細く地窓がついており、入ったときに空間が広くみえるようになっています。籠っていても閉塞感のないよう空間設計としています。
また、外から来た人は地窓から中の人の足が見えているので、使用しているかどうかを確認することができます。
〇建具表
この建具表を確認しながら、現場で確認を行います。
計画通りに開き戸の取っ手は、この仕様でよいか、建具の詳細について伝えました。
設計段階で細かく仕様を決めていたので、建具屋さんとの打ち合わせは驚くほど、スムーズに進みました。
「建具枠の採寸」
建具の仕様が決まったら、建具を収める枠を現場で測ります。
建具表では、図面上での収まりの寸法は記載してありますが、実際に建具枠を測っていきます。
みどりのアトリエでは、新規の引き戸をつけましたので、丁寧に測っていただきました。
引き戸は左右にスライドするため、戸当たりのとの収まりが非常に大事になってきます。
鴨居の溝の深さを確認し、引き戸の角の高さ、幅を決めていきます。また、気密を取るために気密パッキンをどうつけていくかも決めていきます。
建具枠採寸を終えてから、建具ができるまで約3週間ほどでした。実際に吊りこむときも、現場で調整しながら作業を行います。
「建具の吊りこみ」
引き戸はガラスを入れる前に、枠に合わせて調節します。戸当たりとの兼ね合いを見ながら戸車を調節していきます。
「地元の良い大工さんを見つけるには、建具屋さんか、電気屋さんがしっている」と教えてもらいました。
なぜかというと、建具は建具屋さんが作りますが、建具枠は大工さんが作ります。上手な大工さんは敷居と鴨居が平行であり、戸当たりも垂直になっており、ほぼ調節せずに建具が収まるそうです。
真ん中についている役物で、木同士をひきつけ合って収めている。建具の細かさには感動しました。
Fix窓の収まりは設計で、大変悩みました。
図面上では収まっているように見えてもの施工すると不可能だったりします。
建具屋さんに相談に乗ってもらいながら収めることができました。
両端は細い役物をいれて止付け、四周をコーキングする収まりになりました。
縦の役物を見えななくなるように、内から見えない細さにして工夫をしました。
建具の収まりについては、仕上がったときに見えてくる部分なのでまだまだ勉強が必要だと思いました。
建具が吊りこまれると、外と内の境がはっきりとしました。建物として、質が一段上がりました。
この感動は、自力建設をやっていてよかったと思えた瞬間でした。
建具が「建物のだるまの目」と言われる所以が分かった気がしました。
木造建築専攻 2年生 杉山 優真