自力建設2021「木立のこみち」刻み・仮組み編
全国一千万人の自力建設ファンの皆さま こんにちは。木造建築専攻の鈴木です。
前回8月28日のブログでは、白川町の東濃ひのき製品流通協同組合にて「番付」と「墨付け」までをお伝えしました。大工合宿では工程10日間を一貫して行いますが、大雨災害の影響で予定を変更し10月5日〜10月13日まで再度作業を行ってきました。被災された皆さまにはこの場をお借りして心からお見舞い申し上げます。
中断していた間に色々と詰めきれなかった内容を再検討し、満を侍しての大工合宿パート2、「刻み」と「仮組み」のご報告です。今回からエンジニア科の強力な助っ人達も参加し、総勢16人の学生による大所帯の作業となりました。
今回も「刻み」「仮組み」とはなんぞや?のお話から。
「刻み」とは
木材(柱や梁)に墨で印を付け、丸鋸や手鋸、鉋(かんな)や鑿(のみ)、玄能(げんのう)を用いて、継ぎ手や仕口を加工していく古来より伝わる伝統的な木材加工方法です。現在、在来軸組工法で家を建てる場合、その殆どがプレカット工法(家を建てる際の必要な構造材をコンピュータ制御の大型の工場で加工を行い建て上げる工法)で行われますが、手刻みは構造材に墨付け・刻みと、大工が全ての工程を行い建て上げる工法です。
プレカットは工場生産の為、建前までの工期短縮やコスト削減などのメリットがありますが、手刻みは、大工の経験と技により木のくせを読み、材種の特性を見抜いた適材適所の加工を施して、柱や梁などの構造体を現しとした真壁の意匠が出来きます。作り手(大工)の仕事が見える素晴らしい文化です。
「仮組み」とは
実際の現場で建てる前に、加工場で部材や部品の調整または点検の為に仮に組み上げる作業です。 部材の形状に間違いはないか、継ぎ手や仕口などの刻みが正しく作られているかなどを確認していきます。
今回の自力建設では、例年に比べ加工する部材が多い(197本!)ので、墨付けされた部材をチームに分けて刻みはじめました。大工の鈴木さん、森下さん、鈴村さんのご指導を受け、手刻みにチャレンジです。
今年度の刻みも様々な難関が待ち受けています。土台の接合に用いた「追掛け台持継ぎ」や桁材をつなぐ「追掛け大栓継ぎ」、桁を支える方杖をつなぐ斜めのホゾ差し。そして、それをさらに斜めに転ばせた「ラスボス差し」です。
さっそく問題発覚です。刻みの途中から、図面の寸法間違いや墨付け間違いが多々露呈。その都度やり直しで疲労と時間を浪費していきます。しっかり墨付けされていれば効率よく刻んでいけるのですが、初めて行う学生達にとってはなかなか正確な精度がでません。
毎日の作業終了時に加工が完了した部材数を確認していきましたが、なかなか予定数通りには進みません。コロナ禍の影響で、合宿と言っても毎日アカデミーから約1時間の車通いを繰り返し、朝早くから夕方までみっちり作業を行います。最終日が近くなるにつれ、果たして終わるのかこれは。と不安と焦りが募ります。しかし、皆、安全第一でしっかりと作業を行っていきました。
残すところあと3日。刻みが完了した部材から仮組みをスタートしました。墨付け通りに刻んだものでも、なかなかうまく組むことができません。何度も組んでは外し、刻みを修正しまた組む。手刻みの難しさを知りました。改めて全国の大工さんに尊敬の念です。
そして最終日の午後、当初は終わるか不安でしたが、なんとか大枠の仮組みを完了させました。柱が立ち上がると気分も上がります。あとは部材を一度バラしてアカデミーに持ち帰り、今後は、地鎮祭、基礎工事などを経て再度本組みへ向かいます。
今回の大工合宿では実際の加工方法を学ぶ事ができましたが、その作業がしやすい図面の書き方なども同時に学べました。この経験を活かし今後製図にも反映できたらと思います。
大工の鈴木さん、森下さん、鈴村さん、そして匠先生、ご指導ご鞭撻本当にありがとうございました。エンジニア科の皆さんもお疲れ様でした。持ち帰った我が子達をしっかりと組み上げます。
引き続き2021年自力建設の旅は続きます。今後の行方をお楽しみに。
第21期建築専攻1年:鈴木篤司