エネルギー消費量の実測(morinos建築秘話66)
morinosの電力消費量を1年間にわたり実測してきましたので、今回はエネルギー消費量の実績値を概観していきます。
morinosで使用しているエネルギーは電気(+薪)。ガスや灯油は使用していません。
電気を使用している用途は、空調(暖房、冷房)、照明、換気、OA機器等の家電です。
冬期に薪ストーブも併用していますが、今回は薪の使用量は考えないことにします。
電力消費量の実績値
では一年間の電力消費量を見てみます。
測定期間は、2020年10月6日~2021年10月5日までの365日、1年間分365日の1日毎の実績値です。
1年間の電力使用量は4,604.25 kWhでした。
年間 4,604 kWhと聞いてもなかなかピンとこないと思いますが、皆さんの家に届く毎月の電気明細に使用量がkWhで記載されています。先月分は何kWhだったでしょうか。
私が環境家計簿として総務省のデータから整理した一般家庭の電力消費を見ると、美濃市(5地域)の4人家族でガス併用住宅の電気のみの値で、年間 5,678 kWh程度(オール電化住宅では年間7,383 kWh)ですので、一般家庭の電気より2割ほど少ない程度の電力消費量(オール電化からは4割弱少ない)になります。
環境家計簿については、教員研究成果として動画と資料を公開していますので参考にしてください。
では、電力消費量を概観していきます。
上図の365本の棒グラフを眺めてみると伸びたり縮んだりと日によってバラついているのがわかります。
暑さが厳しく冷房を掛けたり、夜間に遅くまで打ち合わせをして照明をつかったり、休館日でほとんど電気を使わなかったりと、活動の履歴が見れて面白いです。
傾向を見ると、暖房期間や冷房期間での電力消費量が伸びているのが確認できます。
1次エネルギー消費量の実績値
次にエネルギー消費量として見ていきます。
morinosで消費される電気(2次エネルギーと呼びます)は、遠く沿岸の火力発電所で発電された電気です。
発電所での発電ロスや送電ロスで、発電所に投入されたエネルギー(1次エネルギーと呼びます)の4割弱しかmorinosで電気をつかえていない状況です。
この発電所に投入されるエネルギーのことを1次エネルギーと呼んで、省エネを考える時には世界的にもこの1次エネルギーで考えることが基本です。
では、morinosの電力消費量を1次エネルギーに換算してみます。
建築物省エネルギー法で、換算係数が決められており、9.76 MJ/kWhです。つまり1kWh(=3.6MJのこと)の電気をmorinosで使用すると9.76 MJ(メガ ジュール)のエネルギーを発電所に投入しないといけないということを示しています。
計算は簡単で、使用した電気を9.76倍するだけで1次エネルギー(MJ)に換算できます。
グラフの増減のイメージは変化してませんが、単位が1次エネルギーのMJに変化しています。
月別エネルギー消費量
365日のエネルギーの増減を見ても、なかなか消費量のイメージがつきません。
ひと月ごとに集計してみます。これであれば、皆さんの家庭の電力とも比較できるようになります。
夏のエネルギーの増加が顕著に表れています。日本でもトップクラスの暑さの美濃市ですので、しかたないところでしょうか。
冬期のエネルギーは多いの?少ないの?
上のmorinosの月別エネルギー消費量(赤)に美濃市(5地域)の4人家族のデータを重ねてみます。(morinosが赤、4人家族の電気をオレンジ、ガスや灯油はグレーで表示)
先にも書きましたが全体としては2割から4割程度少ないエネルギー消費量です。
当然、住宅と施設という用途の違いが大きいため、比較の対象にはなりませんが、同程度の床面積(120㎡程度)としてエネルギー消費量のイメージはできるでしょうか。
住宅と非住宅の面積当たりの目安は
・エネルギー消費量予測 67%削減(morinos建築秘話17)
でも書いていますが、一般的に非住宅の方が大きくなりますので、良好な結果と言えるでしょう。
見比べると、夏期はやはりmorinosのエネルギーが多く、冬期や中間期は少ない傾向にあります。
暑い美濃市でmorinosの大きな室内を冷房しているわけですから夏期のエネルギーが増えるのも分かります。
冬期は大きなガラス面からの日射熱取得が大きいのと、曇っていても薪ストーブを使用していることから電気のエネルギーが減っているのでしょう。
次回は、設計段階での評価との比較や、暖房や冷房にどの程度使用しているのかを詳細に分析していきます。
morinos建築秘話の全話はHPから見れます。