長良川(ながら)んちぼっくす2021 製作レポート②
2021年10月8日(金)~10日(日)の3日間、長良川てしごと町家CASAにて、森林文化アカデミーの授業の一環として木工専攻の学生4名によるお弁当箱展を開催致します。岐阜県産材を使用し、各々が考え制作したお弁当箱です。展示期間中は作品の販売も行います。皆様のご来場をお待ちしております。
4人の学生が製作したお弁当箱はどんな想いで作られたんでしょうか、それぞれにレポートしてもらいました。
どんぐりの木からできたお弁当箱・その名も「つぶら」 制作秘話
こんにちは。森林文化アカデミー木工専攻2年の髙橋久美子です。
今回は、10月8日~10日開催のお弁当箱販売企画展「長良川(ながら)んちぼっくす2021」までの様子をレポートします。
今回、私は子ども用お弁当箱を作りたいと考えました。前職の保育士時代に、お弁当の日は、朝からお昼が待ちきれないほど楽しみにする子ども達の表情をたくさん見てきたからです。お弁当箱の大きさやデザインを決めるにあたり、お子さんが保育園に通う保護者の方にアンケートにお答えいただきました。いただいたご意見・アイディア・子ども達の姿を思い浮かべながらお弁当箱の原案を考えていきます。
いただいた意見の中に、「食べた後に嬉しくなるような仕掛けがあるといい」というアイディアがあり、思い浮かんだのが、底面にどんぐりのスタンプをすることでした。ちょうど2月に行った授業の中で、アカデミーの演習林で伐採・運搬・製材・乾燥させたツブラジイ(小さなどんぐりのなる木)があったため、「どんぐりの木でどんぐりスタンプのついた子ども用お弁当箱」を作ってみようと思いました。
山からツブラジイを伐り出す。この時、この木でお弁当箱を作ることになるとはだれが想像したでしょうか。
今回、子どもの扱いやすさや見た目のかわいらしさに加え、手入れのしやすさも考慮し、お弁当箱の角は丸くしようと考えました。板の曲げる面の内側に鋸目(のこめ)をいれて曲げる『挽き曲げ』という技法に挑戦しましたが、何本の鋸目を入れたらよいのか、どの寸法にすれば形が整うのか、だいぶ悪戦苦闘しました。高山の木地師・伝統工芸士であり、非常勤講師の西田恵一さんにアドバイスをいただく中で、なんとか形になり、ようやく本制作へと入っていきました。
蓋・身(本体)となる板の内側に、一枚につき9本×4か所・計36本の鋸目(のこめ)を入れます。
鋸目を入れた板を沸騰したお湯の中に入れると、鋸目からじゅわじゅわ~っと泡が出て曲がっていきます。
塗装は、ウレタン塗装とガラス塗料を2回ずつ塗ることで、さらに手入れがしやすいよう仕上げていきました。さあ、いよいよ最終工程です。“食べた後に嬉しくなるような仕掛け”として、底面へどんぐりスタンプを押していきます。今回は、どんぐりの色に近いと感じた生漆(きうるし・漆そのままの色)を使ってスタンプすることにしました。
緊張のスタンプ押し
完成したお弁当箱です。ツブラジイの木でできていること・小さくまるい(=つぶらな)形であること・「つぶら」を漢字で書くと「円」、子ども達が円になってお弁当を食べている姿が思い浮かび、このお弁当箱は「つぶら」という名前になりました。
完成したお弁当箱はどんな方の手に届くのでしょうか。手に取って下さった方が、ふっと笑ってくれたら幸いです。
学生一同、お弁当箱の展示会でお待ちしています。
岐阜県立森林文化アカデミー 木工専攻2年
髙橋久美子