自力建設2021「木立のこみち」番付、墨付け
こんにちは。木造建築専攻の斎藤です。
前回のブログは徹夜で製本したお話しまででした。今回はその続きで、翌日の8月5日と6日の2日間、白川町の東濃ひのき製品流通協同組合にて「番付」と「墨付け」を行ってきたことについてご報告いたします。
朝7時ごろ学校出発、8時半に集合ですが、大工さん方はすでにスタンバイされています。
大工さんの朝は早い!
ちなみに、現地集合のメンバーは「寝たら起きれないだろう」ということで、現地に移動してから寝ていたとか…。いずれにしても睡眠時間は僅か(または0)という状況でした。
来年以降のみなさん、これがアカデミーと思ってはなりませんよ。
「番付」とは
「番付」とは、どの材をどこの部材としてあてるのかを決め、その位置がわかるよう各材に印をつけることです。
木材はどうしても節や反り、割れ、欠損、虫食いなどがあり、そのような欠点がない材は数が限られます。そこで、柱などよく見えるところには極力いい材を、土台など見えない部分には節の多い材を、またよく見える面には材のきれいな面をあてるなど、材の状態を一つ一つ確認しながら、まさしく“適材適所”を探していく重要な作業です。
「墨付け」とは
「墨付け」とは、木材に加工するための目印をつけることです。具体的には、部材を切断する位置、部材どうしを結合するほぞ及びほぞ穴の位置と加工の形を木材に書き込んでいく作業をしました。
墨付けでずれると、加工後にかみ合うべき部分がかみ合わなくなってしまいますので、こちらも今後を左右する重要な作業です。
作業は最初に番付チームと墨付けチームに分かれて行いました。
番付チーム
番付チームは大工の鈴木さんに教わりながら番付していきました。
番付するにあたり、前日に夜を徹して用意してきた図面を参照します。
図面には、横軸方向に「(右から)いろはにほへと…」、縦軸方向に「一、二」と「通り」を表記させています。この「通り」で部材の位置を表現します。
例えば、横軸が「い通り」、縦軸が「一通り」の位置に立つ柱は【い通りの一番柱】となります。そして、対象の材には「い一」と番付します。
“まっさきに”を意味する「いの一番」という言葉は、実はこのように建築用語から生まれたわけですね。
私は墨付けチームにいたので、番付チームにいたテツさんこと河野さんの番付のポイントメモをお借りして掲載いたします。
墨付けチーム
墨付けチームは大工の森下さん、鈴村さんに教わりながら墨付けしていきました。
最初に「墨つぼ」という大工道具の練習をしました。これは芯線のような定規をあてて引くのは難しい長い直線を引くのに使うものです。
使い方としては、まず材の両端の芯となる位置に印をつけ、糸の先にある針(写真手前)を印の若干横に刺します。反対側に糸を引き、糸をまっすぐに張って真上から指ではじくと、糸には墨汁が絡んでいるので、墨汁が材に打ち付けられて墨線ができるという仕組です。
大工さんはビシっとくっきりきれいな線をつけられるのですが、初めての私たちにはとても難しい。糸をピンと張りつつ、しかもまっすぐにするのは難しく、かといって慎重すぎると墨が乾いてしまう…。
練習が終わるころには、みんな糸をはじく指先が真っ黒になっていました。
墨つぼの練習は午前中まで。その後は道具を鉛筆とさしがねに持ち替え、柱の断面とホゾ穴の墨付けをしていきました。
さしがね(指矩)とは、L字型をした金属の定規のことで、基本は長い部分(「長手」と呼ぶ)を材に引っかけて、短い部分(「妻手」または「短手」と呼ぶ)で垂線を引くように使います。
さしがね自体の巾は15㎜(=1寸(30.303㎜)の半分=5分)となっています。これを利用して、15㎜や30㎜の幅であれば計らずとも引くことができます。また、さしがねの直角と目盛りを利用して、下図のように取りたい勾配を引くこともできます。
そんなさしがねを使った墨付けですが、最初から正しい持ち方を維持するのは難しく、何度か大工さんに持ち方を修正してもらいました。人によっても線の書き方の個性があるので、書き終わって並べてみると、明らかにずれている…(そもそも基準自体がずれていることも…)。
そんな調子で、この2日間は墨を引いてはやり直すを繰り返しながら進めていきました。
建物を建てるという体験は誰もが初めてで、最初から手順や段取りをわかっている学生はいません。墨付けに限らず、あたまからやり直すようなことが発生します。3歩進んで2歩下がるというやつですね。だからこそ「次回は同じ轍は踏まないぞ」と、次回は成功できそうな手順を、効率的にできそうな方法を考えるようになります。例えば今回は、材ごとに基準線を引いたため、材を並べた時点でずれが発生しましたが、最初に材を一列に並べていっきに基準線を引けば、この問題はクリアできそうですし早いです。
今後
この2日間のあとは1週間のお盆休みに入り、その後リベンジ&刻みの大工合宿を予定していました。しかし、岐阜県ではお盆中に豪雨が発生。白川町では川が氾濫し、住宅が浸水するなどの被害が発生してしまいました。移動の安全性を確保できないことから大工合宿は10月まで延期となり、自力建設に係る諸々のスケジュールも組み直すこととなりました。
今後しばらくは学内でできるパネルづくりが中心となります。他に詰めきれていなかったことを検討・決定していく時間にあて、10月までの準備を進めていきたいと思います。10月まではきっと案外すぐです。
おまけ・休憩中のひとこま
午後の休憩時間、差し入れのスイカと塩タブレットをいただきました。この日の気温は40℃近くで非常に暑く、風も熱を含んでいるような日でしたので、本当にスイカ日和。昨日まで小さな黒いパソコン画面の中でちまちま作図作業を作成していたのに、今日のこのときはスイカをかじりながら山を眺めてぼーとしている、その緩急の大きさが面白いななんて思いました。
それにしても、岐阜は山ときれいな川が多いですね。
第21期建築専攻1年:斎藤真梨乃