「林業の経営学」林業事業体の経営を学ぶ
アカデミーのクリエーター科では、卒業後起業したり、会社の経営管理をしたり、自ら事業を回していく仕事につく人も多いため、「会計の基礎」「生産管理」「木材マーケティング」「コミュニティビジネス起業論」など経営に関するカリキュラムが組まれています。
今回は、林業専攻の「事業体経営」という授業です。一口に林業といっても、素材生産会社、森林組合、専業林家、自伐型林業、小規模森林所有者などいろいろなプレイヤーが存在します。中には製材所や原木市場も合わせて運営したり、川下の事業を行っている会社も多々あります。
巷間で取り沙汰される話題といえばウッドショックで、現に木材価格が数年前に比べて上昇しておりますが、木材価格の上昇はどのプレイヤーの売上に反映されるのでしょうか?素材生産会社の売上の上昇につながるのか、はたまた森林組合の売上になるのか、果たして…
ということで、今回の授業では、小規模な森林所有者を取りまとめて集約化し、森林整備および木材生産を行う事業体を想定して、経営を模擬体験しました。非常勤講師として鹿児島大学の牧野先生、株式会社鹿児島総合研究所 の新永先生をお招きしました。
まずは会社経営の計画ということで、想定する木材生産の作業システム、雇い入れる職員の数、給与額などいろいろなことを意思決定しながら、それぞれで会社を立ち上げてもらいました。
計画を立てる際には、会計の考え方がベースになっており、大事なポイントとしては「固定費変動費」「損益分岐点」「社会保険含めた会社負担の人件費」です。
次に年間事業事業量を想定しつつ、集約化団地を設計していきます。実際の図面をもとに林道の位置、既に間伐を行った事業地などを確認しながら、集約化を進めていきます。
この集約化演習でのポイントは、「実際に契約が取れるか分からない!」ということです。
郵送しても宛先不明で書類が届かなかったり、
訪問しても会ってくれなかったり、
電話しても拒否されたり、
といろいろなイベントが発生します。
そうすると、想定した場所に道が開設できなかったり、想定した事業量を確保できなかったり…
振り返りでは、
◆ 所有者への返金が少ない場合に、営業するのが心苦しい。
◆ 本来、集約化は森林整備の手段だが、集約化自体が大変な作業であり、それ自体が目的化してしまいそう。
◆ 地図だけだと合理性だけで集約化を計画してしまいがちだが、実際には所有者がひとりひとりいることに気づかされた。
◆ 当初に計画した事業量に満たないと赤字になってしまう。大きい機械システムを導入した場合、たくさんの事業地を確保しないといけないので大変。
などなど、今回のシミュレーションを通して、森林所有者、林業事業体のお金の流れ、所有者をとりまとめる集約化作業のリアル、利益を出すための林業経営など、いろいろなことを学びました。
「林業って木を伐る仕事でしょ??」
「木が足りないなら、たくさん伐ればいいんじゃない??」
など簡単なイメージで林業を捉えがちですが、現実には木を伐って出す前にたくさんのことをやり繰りしながら、進めていることがよく分かる授業でした。
鹿児島大学の牧野先生、株式会社鹿児島総合研究所 の新永先生ありがとうございました。
杉本