ナタの柄を自分で作る 林業×木工
自分がこれから使うナタの柄を自分で削って作る、森林文化アカデミーオリジナルの授業。林業の学生たちに木工体験をしてほしい、道具を自分に合わせてカスタマイズする意識を持ってほしい、との思いから始まりました。去年はコロナのため実施できず、今年が2回目。「すごくぜいたくな授業」と一緒に担当する林業の新津裕先生。全国の林業大学校でもぜひ導入しては、とオススメしたくなります(出前講座行きますよ。または林業大学校の先生向けに講座を開催しても良いのかも)。
写真中心にご紹介します。まずは完成した24本のナタから。23人の1年生と、新津先生が作ったもの。それぞれいい形をしています。
授業の冒頭、新津先生が自分のナタとお祖父さん(日本製紙山林部で働いていたそうです)のナタを見せながら、柄の適切な形、重さ、サイズなどについてアドバイス。
学生たちは入学時、希望するサイズのナタの刃を注文します。刃は高知県の土佐打刃物製です。
事前に加工しておいた柄の材料を学生に渡し、基準となる形を鉛筆で描いてもらいます。ただし、これはあくまで参考の形。握って、削ってを繰り返しながら好みの形にしていきます。
南京鉋と呼ばれる道具を使って削ります。
角材と荷締めバンドを利用した簡易固定具も活躍します(松本市の木工家・大久保公太郎さんに教えていただきました)。
今回授業で使用した南京鉋は、「杉田創作」の杉田悠羽さんに貸していただきました。杉田さんは道具製作者であり、一緒に全国規模の手道具(鍛冶屋の作る道具)の調査を行っている仲間でもあります。
四方反り鉋も使います。
今回はちょっと楽しい趣向も。材はどれもシラカシですが、簡単な着色をしてもらいました。右が無塗装、真ん中はアンモニアによる着色、左は鉄媒染液による着色です。
アンモニア着色は、薬局で買ったアンモニア水を少量皿に取り、柄と一緒に密閉できる袋に入れます。材の中のタンニンと反応し、1時間ほどで色が濃くなります。
鉄媒染液(スチールウールと酢で作ります)は、柄に刷毛で塗ります。こちらもタンニンと反応して青黒く変色します。
できあがった柄に口金と刃を差し、柄尻を叩いて刃を仕込みます。
しっかり刃を仕込んだら、抜け防止の目釘を打つための穴をボール盤で開けます。
目釘を打ちます。目釘は柄の厚みとほぼ同じ長さ。反対側に先端が少し貫通したら、先端を叩いて潰し、抜けなくなるようにします。
完成したナタの柄。この学生は、しっかりグリップできるよう指の位置にナイフで窪みを作りました。
1日半の実習で完成〜。愛着を持って長く使い続けてほしいです。
久津輪 雅(木工・教授)