家具は居場所。〜morinosの家具1〜(morinos建築秘話58)
家具。
みなさんも家具をお持ちだと思います。
家具、大切ですよね。
日々の暮らしにとって家具がいかに「便利」か、というのは、食器棚やテーブルひとつとってもよくお分かりいただけると思います。
でも便利さ以上に、家具は「居場所」です。
ためしに「自分がいつも家のどこに居るのか」と思い出してみてください。近くに家具がありますよね。ソファだったり、小さな家具机だったり。そこにこそ生活があり、時間があります。
暮らしと家具は、切っても切り離せない間柄です。
ぼくは設計で間取りを描くとき、柱、壁、窓と描き進めていくのですが、居間にぽっかり空いたスペースをみて「ここに住む人は、このスペースでどう過ごすかな……」と思い、このとき家具を描きます。
小さな丸テーブルと、2人分の椅子を描くと、突然、図面の上に「居場所」が発生します。
「必要十分な家具」が間取りと調和して「居場所」になる。この瞬間がぼくは好きで、何度も描いてちょうどいい家具や配置を探します。
「必要十分な家具」を考えるには、誰が、どんなふうに使うのかを、しっかりイメージするのが大切です。住宅の場合は、家族の人数分の椅子……食卓に小さすぎないテーブル……ソファ……本棚……など生活に根ざした家具をイメージします。
では、これが住宅ではなくmorinosだと、どうなるでしょう?
morinosの家具は、誰が、どのように使うのでしょうか?住宅とはちょっと違いそうです。
morinosは「すべての人を森とつなぐ」をテーマにした、日本で最初の「森への入り口施設」です。
子どもも大人も、だれもが利用でき、人の暮らしと森をたのしく繋いでいく、あたらしいタイプの建物で、対象は「すべての人」。
工作などのワークショップに使うかもしれないし、子どもたちが持って移動するかもしれません。結構、ハードに使われるでしょう。
ゆっくりと本を読んだり、お弁当を食べたり、ストーブにあたったり、リラックスする時も家具があるといいですね。
講義もするので、フレキシブルに動かせる小さなデスクもあるといいですね。
また、行政施設だけど決まった机のない自由な働き方を推進するためにmorinosはフリーアクセスになっています。(【あたらしい働き方をmorinosから(morinos建築秘話30)】)あたらしい働き方に対応した家具が必要です。
morinosのコンセプトに合わせて熟考した結果、こんな家具ができました。【】内は樹種。もちろん全て岐阜県産材です。
■メインの「大きな豆型テーブル」と「ナラのチェア」
【ナラ】
■いろんな樹種でつくった「みみ付きデスク」と「工作椅子」
■外がよく見えて冬は暖かい「南向きのカウンター」と「ナラのカウンターチェア」
■お弁当を食べてくつろげる「小さな豆型テーブル」と「節ありソファ」
■土の洞窟の「丸鋸名栗ベンチ」
この家具たちが、どんな居場所を目指して、どう形になっていったのか、次回のmorinos建築秘話で、ちょっとだけ詳しく書いてみようと思います。
・建築秘話59:たのしく森を学べる家具。〜morinosの家具2〜
・建築秘話61:お気に入りの場所をつくる家具。〜morinosの家具3〜
木造建築教員:松井匠