マイタケ原木栽培について学ぶ。「舞茸」収穫で舞い踊ることはできるのか?!〜「特用林産物実習(秋冬編)」接種編〜
先日クリエーター科1年生の特用林産物実習(秋冬編)でマイタケ原木栽培の接種作業を行いましたので、紹介します。
きのこの栽培方法には大きく分けて二つの方法があります。ひとつは広葉樹の丸太に種菌を接種して栽培する原木栽培、もうひとつはオガコを主体とした培地を用いて温湿度をコントロールした環境で育てる菌床栽培です。菌床栽培は施設内で行われる促成栽培で均質なものを効率よく収穫できますが、味や香りは自然条件下で育てた原木栽培のものの方が天然物に近く、野性味が強いと言われます。現在では菌床栽培マイタケはスーパーなどで容易に手に入りますが、見つけると嬉しさのあまり舞い踊るほどだったという天然マイタケは依然として貴重であり高値で取引されています。今回の実習ではその天然マイタケに引けを取らないと言われる原木栽培のマイタケを作るべく、作業を行いました。
今回の作業は夏にもほだ木の伏せ込みでお世話になった卒業生のOさんのところで行いました。マイタケの菌糸は雑菌に弱く、シイタケやナメコのように原木に孔を開けて種菌を入れるだけではうまくいきません。そのためあらかじめ原木を煮込んで殺菌し、無菌状態になったところで種菌を接種します。
初日は原木の煮込み作業。最低でも5時間以上煮込まないと原木の中心部まで殺菌できません。長さ15㎝に切った原木を、日の出前でまだ薄暗い朝6時からドラム缶の中で煮込みました。
寒い時期に大容量を沸かすので沸騰まで約2時間。その後5時間以上、マシュマロを焼いたりしながら沸騰状態を保ちます。
午後2時ごろから原木の取り出し。熱々のまま栽培袋に入れ、口を折って洗濯バサミで仮留めします。これで一晩冷まし、翌日接種作業です。
二日目。前日に設置しておいた接種装置の中で種菌を接種します。無菌作業ができるクリーンベンチという実験設備で行えば良いのですが、この実習では一般の人でも手に入れやすいものを工夫しておこなうことを心がけています。これまではアルコールで消毒したビニール温室の中で作業していたのですが、密室作業になるのでこのコロナ禍ではNGです。そこで今回はその温室の骨組みの一部と厚めのビニールを組み合わせて、手を入れて作業できる装置を製作しました。
接種する人、袋の開け閉めをする人、インパルスシーラーで袋を密封する人の3人で装置に手を入れ、流れ作業で行いました。ローテーションで人が入れ替わりながら、2時間ほどで70袋を接種。
今回新たに製作した接種システムですので、雑菌の混入率がどのくらいになるのかはまだわかりませんが、温室の中で行なっていた時よりも交代の時の出入りの手間が少ない分、スムーズに作業を行うことができました。
この後数ヶ月、適度な温度がとれる場所に置いて培養します。うまく菌がまわってカマンベールチーズ状態になれば成功です。果たして秋に舞い踊ることができるのか?また報告します。(津田)