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2017年06月15日(木)

鵜飼舟プロジェクト 第2週目(5/29〜6/3)

鵜飼舟プロジェクト、第2週目。当初の計画では、シキ(底板)の接合が終わり、立板(舟の前方=舳先と、後方=艫に付く板のこと)の制作を行う時期です。

シキは4〜5メートルの板を縦方向に3枚継ぎ、さらに横方向に7列接合しなければなりません。第1週目では、中央の3列ができ上がっていただけでした。

 

板を縦に継ぐ時には、端を「鎌継ぎ」と呼ばれる形に切り、釘で留めていきます。

 

また、横方向に接合する際には、両方の接合面を鉋で削った後、カスガイで仮留めして、間にノコギリを差し込んで擦っていきます。「擦り合わせ」といい、船大工独特の技術です。

家具作りでテーブルの板どうしを接合する時は、木工機械で削って両面とも真っ直ぐにして、接着剤でつけてしまいます。しかし全長10数メートルにもなる接合面は、材料の制約から必ずしも真っ直ぐに取れるわけではありません。また長すぎるため木工機械で削るにも限界があります。この「擦り合わせ」は、限られた道具で精度の高い接合を実現する、合理的な技術だと思います。もっとも、時間はかかりますが。

 

接合の手順をまとめると、以下のようになります。

接合面のカンナがけ

カスガイで仮留め

ノコギリで擦り合わせ

いったんカスガイを外し、接合面をカナヅチで木殺し(接合面を圧縮しておき、接合後に膨張させてすき間を防ぐ)

カスガイで接合(接着剤を併用)

ノミでダキ(釘を入れる溝)を切る

モジ(下穴開けの道具)で下穴を開ける

舟釘を打つ

埋め木をする

これだけの手順を踏むのですから、時間がかかります。
なお接着剤を併用するのは、強度を求めるためというより、使用中にわずかなすき間に砂粒が入り、すき間が広がってしまうのを防ぐためだそうです。

鎌継ぎは、同じ場所に集中してしまうと強度が下がるため、わざと位置をずらします。下の写真のようになります。

 

作業を見学に来られた那須清一さんの娘の世津子さんと、妻の栄さん。栄さんは、材料を運んだり舟の裏表を返したりする時には手伝うそうですが、夫の仕事をまじまじと見るのはほとんどなく、貴重な体験をしたと笑っておられました。看護師の世津子さんはたびたび作業場を訪れて、那須さんの体調管理もしてくれています。

 

この週は、ダグラスさんが技術的な質問をしたいと言うので那須さんのご自宅にもお邪魔しました。鮎の甘露煮や自家製の野菜など、たっぷりご馳走していただきながらのインタビューでした。

カメラを向けると笑っていた那須さんですが、2週目の進み具合に対しては厳しいコメントがありました。この状況ではとても7月22日に進水式は迎えられないだろう。急がなければならないが、那須の名のもとに舟を出すからには雑な仕事はしてほしくない。自分が大きな舟を作るのはこれが最後だとの覚悟でやっているので、しっかりやってほしい。

この言葉を受けて、ダグラスさんは朝5時半に出てくるようになりました。夕方6時まで1日12時間、月曜から土曜までのハードワークです。

7月22日には岐阜市のうかいミュージアムで鵜飼舟プロジェクトの報告会と進水式を予定しています。しかし、この日の那須さんの見通しを受けて、うかいミュージアム側へは「進水式は延期の可能性が極めて高い」と報告せざるを得ませんでした。

 

6月1日時点の写真。シキの5列目の接合です。端(木口)が細く尖ってしまうと釘で接合ができないため、独特の形に切っていることが分かります。

シキの完成は第3週目に持ち越されることになりました。

久津輪 雅(木工・准教授)