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2021年01月19日(火)

morinos SDGsの大元を支える「環境(生物圏)」レイヤー(morinos建築秘話52)

morinos建築秘話51で、morinosのCASBEE SDGs評価の結果概要を見ましたが、今回から数回に分けて、各GOALの内容を読み解いてみます。

といっても17個もGOALが並んでいると、どこから手を付けていいのか悩みます。
GOAL1の貧困関連から順番に見ていくのがいいのか、でも建築だと、関係のありそうなGOAL11の都市関連が適切なのか、GOAL12の生産・消費関連も気になる。

そもそも、17の数字は優先順位なのか、単に記号として記してあるだけなのか、並び順に関連性があるのか・・・わからなくなってきます。

そこで、SDGsを理解するのに、平面的に並んでいる17のゴールを立体的構成し直したのが、ヨハン・ロックストローム博士(スウェーデン レジリエンス研究所)の「ウエディングケーキモデル」で、それぞれの関係がわかりやすくなります。

この3つの階層の並び方はそれぞれ意味があり、上段にある「経済」の発展は、「社会」つまり生活や教育などの社会条件によって成り立ち、さらには最下層の「環境(生物圏)」つまり人々が生活するために必要な自然の環境によって支えられていることを表しています。
そして、3層を貫く基幹理念として、パートナーシップがあります。

今回は、最も大切なベースとなる「環境(生物圏)」を見てみます。

SDGsウェディングケーキモデルの最下層「環境(生物圏)」レイヤー

これは、自然資源の保全、気候変動等に適応したレジリエントなインフラ整備等を考えるレイヤーです。

SDGsウェディングケーキの最下層である「環境(生物圏)」には、17のGOALのうち下記の4つが含まれています。

GOAL6.安全な水とトイレを世界中に(水・衛生)
GOAL13.気候変動に具体的な対策を(気候変動)
GOAL14.海の豊かさを守ろう(海洋資源)
GOAL15.陸の豊かさも守ろう(陸上資源)

「環境(生物圏)」は、私たちが地球上で暮らす上で必要不可欠な要素である海や森林などの“環境問題”や、“気候変動”についての目標が含まれています。

近年、数十年前とは比べ物にならないほどに世界中の国や技術が発展・成長を続けています。しかしそれらの多くは、“自然環境”が土台になることによって生み出されいて、「社会」と「経済」は「環境」無くしては成り立ちません。

持続可能な「社会圏」「経済圏」を支えるためにも、その土台となる「環境(生物圏)」のそれぞれの目標を達成しなければなりません。

では、CASBEE SDGsではどのような項目を評価しているのか。この「環境(生物圏)」の4つのGOALについてみてみましょう。

SDGs

これから示す表の見方は、最上段の色付きのタイトルに、17のGOALを記しています。
次のグレー背景には、169のターゲットの中から「建築計画、生産、運用、廃棄等におけるSDGs達成に関連する項目」を抽出し、白い背景に「環境性能評価に関連の深い取組例」を示しています。

最初にGOAL6「安全な水とトイレを世界中に」に関して、


まずまず取り組めている項目として、雨水タンクなどを活用した環境教育の仕組みの導入や、節水可能な水栓の設置、汚水の適切な処理、給排水設備の信頼性の向上があげられます。

一方、十分に取り組めていない項目として、地下水系に配慮した計画があります。今回は基礎断熱に床下エアコンのため、基礎コンクリートを地中に堀り込んでいますが、敷地の土壌や水質まで検査して十分に検討して計画したとは言えない状況です。

結果としてGOAL6「安全な水とトイレを世界中に」は評価2(1~3段階中)とまずまず取り組んでいる結果となりました。

次にGOAL13「気候変動に具体的な対策を」に関して、


しっかり取り組めている項目として、ライフサイクルCO2を削減する取組を行っています。建物建設時の素材選定によるCO2削減に加え、最も多いとされる運用時のCO2削減には各種省エネの取り組みによる削減効果が大きいです。
さらに、ヒートアイランド対策として、周辺をコンクリート等で固めず、緑化による外構計画、屋内における熱中症予防に資する冷房効率の向上のための躯体断熱や遮蔽性能強化があげられます。
また、レジリエントデザインとして、耐震性や耐風性の確保があります。

一方、十分に取り組めていない項目として、非常時(停電時)におけるバックアップ電源の設置や、敷地の災害リスクを確認し情報共有を行うことです。これは、今後、ハザードマップや古地図を再確認し、災害の種類に応じた避難場所や方法の検討で対応できる部分もあります。

結果としてGOAL13「気候変動に具体的な対策を」は評価2.6(1~3段階中)と比較的積極的に取り組んでいます。

次のGOAL14「海の豊かさも守ろう」に関しては、CASBEEではGOAL12「つくる責任 つかう責任」に集約して評価しますので、経済レイヤーの時に合わせて確認します。評価する内容は以下の通りです。


 

環境レイヤーの最後は、GOAL15「陸の豊かさも守ろう」です。


しっかり取り組めている項目として、敷地内を積極的に緑化して、生物多様性に関する取組を行っており、全て県産材で、持続可能な森林から算出された木材を調達しています。

一方、十分に取り組めていない項目として、古材の活用があります。新築建物なので無理に使用する必要はないですが、古材の可能性は特に検討もしていませんでした。

結果としてGOAL15「陸の豊かさも守ろう」は評価2.5(1~3段階中)と比較的積極的に取り組んでいます。

 

以上が、ウエディングケーキモデルの最も大元となる「環境(生物圏)」レイヤーの評価でした。
全てのベース(大元)となる目標だけにmorinosでは、それぞれに評価の高い結果となっています。

准教授 辻充孝

今回のSDGsの評価に関しては、morinosのCASBEE評価がベースにありますので、以下の建築秘話も参照してください。
 

※建物の詳しい説明はmorinos建築秘話シリーズをご覧ください。
morinos建築秘話シリーズ