発想の転換で地域の良さを見つける(心地よいエコな暮らしコラム12)
気候の特徴を見極める
日本には地域気象観測システム(通称アメダス)が全国に約840か所も設置されています。(降水量を観測する観測所を含めると約1300か所)
これらのデータは気象庁のHPを見るといつでも確認できます。
http://www.jma.go.jp/jma/index.html
統計情報もきれいにまとまっていて、簡単に取り出すことができます。
気象データを取り出す手順ですが、
1.気象庁HPの上段メニュー「各種データ・資料」にアクセスする。
2.「過去の気象データ検索」に入り、観測所の地点を決める。
3.「データの種類」の「年・月ごとの平年値を表示」か「旬ごとの平年値を表示」を選択する。
平年値は30年間分の平均値。気象の変化を大きくとらえるのに適しています。
では、気象データの何を確認すればいいのでしょうか?
建築計画に活用したい基本情報は、気温、降水量、日照、風です。
1. 気温:冬期、夏期の平均外気温、日最低、日最高外気温
温湿度の特徴を把握し断熱目標を検討するためのデータ
2. 日照 :各季節の日照状況、年間日照時間
日射熱利用や日射遮蔽、昼光利用を計画するためのデータ
3. 降水量:月別、年別降水量
雨水利用を計画するためのデータ
4. 風:夏期夜間と中間期日中の卓越風向と平均風速
夏期夜間と中間期日中の通風を計画するためのデータ
気象データ分析のコツは、比較して特徴を見つけること
例えば、取り出した旬毎の平年値のデータで中から同じ6地域の東京(赤)と大阪(グレー)を比較してみましょう。
同じ温暖地ですが、いろいろな特徴が見えてきます。季節ごとに見ていくのがコツです。
・一番寒くなる1月下旬の最高気温は9℃程度とほぼ同じですが、最低気温(主に明け方)は2℃程度東京の方が寒く夕方から明け方に冷え込みそう。
⇒夕方からの室温低下を防ぐ断熱と蓄熱性能の向上を考えよう。
・一番暑くなる8月上旬は、最高気温から最低気温まで大阪より2.5℃程度涼しい。
⇒大阪より暑くないとはいえ日中30℃を超えるので日射遮蔽はしっかりと。
明け方は23℃程度まで下がるので、夏夜間の通風効果の可能性も検討できそう。
・春や秋も大阪より一回り涼しめ
⇒残暑が残る時期は日中の通風も効果的
その他の日照時間や降水量なども比較しながら特徴を見出しましょう。
地域の特徴をポジティブにとらえる
寒い地域や暑い地域は不利なのでしょうか?
そんなことはありません。日向ぼっこのポカポカした感じや、薪ストーブの暖かさなどは、寒いからこそ、心地よさが生まれるのです。
いろいろな条件をポジティブに考えてはどうでしょう。
寒い地域なので家も寒そう
⇒日射をうまく取り込めば、居心地のいい部屋が出来そう
⇒暖かい部屋から雪景色を贅沢に楽しめそう
⇒暖かい家を計画できれば地域で話題になりそう
雪が多くてめんどくさい
⇒家に居る時間を楽しめるよう、空間や光・熱環境をよくしよう
夏は猛暑日が多くて暑そう
⇒効果的な日射遮蔽と適切な冷房計画で喜ばれそう
雨が多いから嫌だな
⇒雨水利用の可能性が高いぞ
重要なことは、その土地の良さ、持ち味を見つけることが大切です。
全国で活躍している設計者より、地域をよく知っている地元の設計者の方が有利なこともあります。
准教授 辻 充孝
※私のつたないスケッチではなく、イラストをたっぷり使った
「無理をしないで心地よくエコに暮らす住まいのルール」を建築知識で連載中。
気象データに着目した特集は、2021年1月号(第7回)。
気象データの演習用のシートや、このブログで書ききれない内容も書いてます。
こちらもぜひご覧ください。
心地よいエコな暮らしコラム
1.自分の暮らしぶりを見つめよう~環境家計簿~
2.心地よさは4つの要因で決まる
3.快適よりも心地よさを実現する
4.家の作り様は夏を旨とすべし?
5.家相や風水は気を付けた方が良い??
6.断熱しても省エネにならない?
7.省エネは建築と暮らしの工夫の上にある
8.住まいの空気の大切さ
9.寝室の室内環境が最重要
10.居室を連続暖房して寒さをなくす
11.気候の違いで建物が変わる
12.発想の転換で地域の良さを見つける