長良杉のフィンランド・パビリオン(アアルト模型製作ワークショップ4)
アアルトのパリ万博の「フィンランド・パビリオン」模型製作、順調に進行中です。
スタディ模型が出来上がって素材の選定をした段階で、日本福祉大学の坂口先生と可児市でプロの建築模型作家として活躍中のRe:art古山さんに中間チェックをしていただきました。
木の模型にアクリル板を入れると、どうも木の質感になじまない。悩んでいたところ、窓表現のいいアドバイスをいただきました。
窓をくりぬいて少し控えた内部に黒い塊を置くことで、奥行き感を表現できるとのこと。
これで模型の方向性が固まりました。
では具体的に何の木で作るか・・・。
このフィンランド・パビリオンの外壁をフィンランド語で書かれた実施図面から読み取ると、どうもレッドウッドとのこと。
一般的な木の建築模型で使われるシナ合板では味気ない。
せっかくアカデミーで作るので、素材は長良杉の赤身で行こうと学生と話あいました。
製材棟で物色しました。2019年の自力建設「cobiki」用に製材した外壁板の残材。
幅広の赤身勝ちの板です。比較的、オリジナルの質感に近づくかな。
さて、これらの材を1/100のスケールでちょうどいい厚さに整えていきます。
木工専攻の精度の高い自動カンナ盤を使わせていただきました。
建築学生ですが、木工機械実習を受けているので、お手の物です。
建築素材の段取りが出来上がっていく裏側で、敷地模型が動いています。
敷地素材はイケダコーポレーションさんのドイツ製の高密度ウッドファイバー180kg/m3。
この塊を外部のNCルーターをお借りして一気に加工しようと頑張って調整してましたが、どうもうまくいかず・・・。
結局、手で削り出しています。建築用の幅広(60㎜)のノミと大カッターで図面通りに掘り進みます。結局ローテクが最も柔軟に対応できます。
建築本体の模型は、手書きの実施図面を理解して読み解きながら、模型用のCAD図面を書いていきます。
このCAD図面を加工して、レーザー加工機用のデータ変換して、材料をセットして、いよいよ切り出しです。
順調に切り出していきますが、レーザーの強さと木材の種類で、削られ方が異なるので、いろいろサンプルを作って微調整。
これがかなり大変。
図面通りのピッチで外壁のリブを掘ると、細かすぎてどうもしっくりこない。
模型用にディフォルメして数パターンを加工。
深さも調整して再度加工。
ようやく納得のいくリブ加工が完成。
微調整や細かなパーツは小型卓上丸鋸の出番。いろいろな機材がそろってます。
次はアアルトお得意のアール部分。外壁の縦のリブが回り込む美しい曲面。
これも何度も検討。
ですが、ここはまだ結論出ず、もうしばらく製作法を検討中。
直線的な建築部分は粗削りが終了。ある程度形が見えてきました。
次に、開口部の表現ですがプロの模型作家さんに教えていただいた手法で、内部を黒く塗装してみます。
まずは、試作でアカデミーで毎度使っているオスモ。ですが、半透明で木目を生かすウッドステインプロテクターではどうも薄い。
オスモの塗りつぶし用のカントリーカラーだとよさそうですが今から準備も・・。と思っていたら、いいものがありました。
自力建設の棟札用に使用している墨汁です。
いい感じに木目も残しながら黒く染まっていきます。
残る課題は外壁のアール部分と、どこまで精度を上げていけるか。
限られた時間ですが、年内竣工を目指して(学生が)頑張ります。
准教授 辻充孝