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2017年04月05日(水)

林業先進国ドイツの「森林教育施設」ってナニ? 

先月3月、ドイツロッテンブルク大学との連携協定プロジェクトのもと、同大学のあるバーテンビュルテンベルグ州(以下BW州)内の森林教育関連施設4箇所を訪問する機会に恵まれました。

「森林教育施設って何?」と思われる方も多いはず。それもそのはず、「環境教育施設」は聞いたことがあっても、森林教育施設という言葉は日本ではあまり馴染みがないですよね。 森林教育施設とは、離れてしまった国民と森との距離を縮め、暮らしと森、暮らしと林業をつなぐためのESD教育=森林教育( Wald Paedagogik)をする総合教育拠点のことです。林業への理解者を増やし、森から始まる持続可能な暮らしの実践者を育てていくための施設です。

林業が盛んなBW州(日本で言う所の県)には、こうした施設がビジターセンター的施設や青少年長期宿泊型森林教育施設(日本で言うところの青少年自然の家の森林教育版)を含め州内各地に点在しています。(全て州や行政管理区、市町村の予算をベースに運営されています。) 各施設では、単に林業体験や森の体験を提供するだけでなく、アート、木工、グルメ、冒険、生きものプログラム、ナイトプログラム、森のようちえん、シニアプログラム、馬のプログラム、音楽会、グリーンウッドワーク、木のカヌーづくり、アニマルウォッチング、ツリークライミング、などなど森に関する幅広いジャンルの一般向け講座を年間100本以上も展開し、大きなところでは年間利用人数が50000人に達する施設もあります。

 

そこには、ゆりかごから墓場まで、すべての年齢層が森とつながるきっかけがありました。

まるで森のテーマパークか森のカルチャーセンターのようなところ。 都市の人がアートやグルメプログラムに気軽に参加したのをきっかけに施設のファンになって他のプログラムに次々と参加するうちに森林や林業との距離がいつの間にか縮まっちゃうことも多いようです。これなら「関心のない人」も森とつながりやすいですよね。

また地域の学校との連携も強く、小学生が1週間連続で通う連続プログラムを年間40校と提携して実施しているところや、学校の先生とフォレスターが共同でプログラムの開発や指導者の育成を行なっている施設もありました。

もともとBW州の森林法には、「フォレスターは教育に関わること」ということが書かれています。フォレスターは林業に対する住民の正しい理解を得るためにも、そして未来の優秀な担い手を確保するためにも、森林のマネジメントだけでなく「教育」にも目を向けています。「森」だけでなく「人」にもしっかりと関わることがフォレスターとして大切なようです。 そうしたフォレスターたちと、自ら実践的なカリキュラムを自由に組み立てていこうとする積極的な教師たちとが各地でチームになって森林教育をしているケースも多く見受けられました。

BW州が森林教育に力を入れているのには意外な理由がありました。

ドイツの人はもともと森好き。ピクニックやハイキング、アウトドアスポーツやきのこ狩りなど、森との距離は古くからとても近い国民です。 でも「林業への理解」ともなると話は別のようです。

紙や家具、家屋や燃料など日々の暮らしの中で木材を大量に使っていながら、「木を伐ることはよくない」という意見がいまだに根強いそうです。林業の発達しているドイツでさえも、こうした意見が50%近くもあるという調査結果には、私もビックリしました。

そうした国民の意識を変えていくために、森林教育施設は重要な役割を担っているようです。 林業への理解度不足に悩むドイツが生み出した「森林教育施設」。日本の林業も色々と見習うべきところがありそうです。

そんな各教育施設についてこれから少しずつご紹介できたらと思っています。近いうちにドイツ視察報告会も開催をしたいと思います。日程&場所が確定したらお知らせいたします。お楽しみに。

なんちゃって先生 萩原ナバ裕作