WISE・WISEの多様な日本の森の在り方や子どもたちのことを考えた家具づくり
『森林文化論』で「人と自然の関係を結び直す家具づくり」について考える。
JIRIです。クリエーター科1年・2年生共通の「森林文化論」、今回は国産材利用を基軸として家具づくりされているWISE・WISEの代表 佐藤岳利さんをお迎えして、会社経営の理念などをお聞きする中で、国産材、合法伐採・違法伐採、フェアウッド、トレーサビリティ、クリーンウッド法などのキーワードについて学びました。
千葉県の成田で幼少期を過ごされ、青山学院大学時代にアメリカに渡って数々の苦労をされ、様々な空間プロデュースで有名な乃村工藝社に入社された。約30歳までにシンガポールやマレーシア、バンコクなどの東南アジア諸国を中心に活動され、1996年にWISE・WISEを創業。
WISE・WISEは全国の600名ほどの伝統工芸技術者ともつながっており、作成する家具の強度は旧GIS企画の三倍の強度を要求し、一生涯使えるような家具を提案している。
2000年に開催された沖縄サミットで使用された家具やブランドメーカーGUCCIの家具も手がけ、最近ではスープ専門店「Soup Stock Tokyo」の家具も取り扱われておられます。
佐藤さんは「ある日、自社製品を含めて流通している家具の木材を見てみると、それが熱帯林を伐採した木材に頼っている現状を知る」こととなった。ガーデニング用の家具は貴重なミヤンマーチークを使い、ボルネオ島ではオランウータンの住む森を伐採して、その木材を利用し、伐採地に日本向けの油を採るパームヤシを植える。
原住民や野生鳥獣を無視した破壊的森林開発と持続不可能な光景が広がっていたのです。
ボルネオ島の森林は激減している。
自分たちの会社はブランドメーカーとはいえ、家具に使用される木材のトレーサビリティもしていなかった。
世界の森林は2000年から2010 年までの10年間に、年間1,300万ヘクタールもの森林が喪失し、それらは全て熱帯林であり、日本は先進国の中で唯一、違法伐採した木材を受け入れている国なのです。
「人とひと、人と自然を結び直す家具づくり」を目指し、グリーンカンパニー、グリーンファニチャーを掲げるためにも、木材のトレーサビリティが重要。原木が製材工場に来るまでの証明は容易いが、製材された後の証明は至難の業。
しかし合法木材証明のトレーサビリティは容易ではない。10社の工場がグリーンカンパニー、グリーンファニチャーを目指し、カタログの全製品について2009~2012年までの4年間で、フェアウッド会社に脱皮した。
そこで日本国内を見ると、日本の木材の材積は毎年約10000m3近く増加している、しかし日本は使用する木材の約7割を輸入し、国産材は行き場がない状態。
この行き場のない国産材を使うため、それまでヨーロッパブナで作成していた家具を北海道産のシラカバ材に転換したSTICKという商品を作成。シラカバ材は割り箸用に出荷していたが、中国産に押されて利用が無くなっていた。
ほかにもロシアのナラで作成していた家具を青森・秋田・岩手のクリに転換し、AKIの名で商品化。宮崎県産のクヌギ(シイタケ原木には大きくなり過ぎたもの)を使ったMOROTSUKAや、宮城県栗駒山のスギのKURIKOMAなども商品化している。
現在はWISE・WISEの家具の53%が国産材であるが、次期のカタログ作成までに9割が国産材になることを目指している。
「デザイン・技術・つながり」で国産材の出口をつくる必要がある。
「林地残材でマンションの家具が出来たのだ!」では、千葉県船橋市で廃棄処分されてしまいそうであった雑木(ナラ、クヌギ、シデ、ケヤキ、クスノキなど太いもの226本、33 m3)を購入し、それを製材(17 m3)し、椅子やテーブル、ベンチなどとして、サービス付き高齢者賃貸住宅に納品した。
企業はCSRからCSVの時代であり、SRIからESG(Environment Social Governance)の時代である。
「自然資本」と企業価値創造要素の重要性に気づかねば。
2017年5月からは「クリーンウッド法」が施行される。これは「合法伐採木材等の流通および利用の促進に関する法律」なのだが、全国の主だった家具メーカーの6社しか参画する予定がない。
WISE・WISEは全国の木材産地、岐阜県では飛騨のトチノキを利用して、家具を作っている。
WISE・WISEでは「つくる・伝える・届ける」の部分が均等に力を入れて商品を流通されているとのこと。
もう聞き飽きたような「国産材の時代」という言葉ですが、佐藤さんのご苦労された言葉から、まだまだこれからが国産材の時代なのだと感じたのです。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。