ドイツ サマーセミナー報告②(9/12)
9/12 (Day2)
ロッテンブルク大学(講義+学内ツアー)→Naturpark Schönbuch (Fried Wald→Hunting Area) 視察 前半
引き続き、鈴木が報告します。2日目はロッテンブルク大学にて、Schurr教授から今研修のメイントピックでもある「森と社会」をテーマに、ドイツにおける消極的な小規模森林所有者の存在とそのモチベーション、集約化を含めた課題について講義して頂きました。
それに続いて行われたのはEnd氏による学内ツアーです。さて、これはなんの部屋か分かりますか?大人が30人は余裕で入れるような空間なのですが・・・。
寒くなってから使うものなので今は空の状態ですが、そうです。答えはボイラーに使うウッドチップを貯めておく部屋でした。悪い人を閉じ込めて置くところではありません。
地面下に備え付けられたこの空間には、時期が来るとチップが投入され、床中央のスクリューで建物に繋がるボイラーへ送られる仕組みです。冬はガスも使用しているそうですが、学内で積極的にバイオマス利用を進めている様子がうかがえました。
Fried Wald Schönbuch~樹木葬の森
午後はテュービンゲンの西側にある自然公園Naturpark Schönbuchを訪れました。そこでガイドのMartinaさんからFried Waldについて説明を受けます。
Fried Waldとは、その地域や山の所有者と共に樹木葬向けに森林を活用・運営する企業の名称で、スイスの樹木葬を参考に2011年より事業を開始し、今やドイツ国内に50以上の拠点が存在しているそうです。
具体的にこちらの樹木葬は、自然の立木を利用してその根元の権利を販売しています。希望者は生前に個人単位から99年間の期限で権利を購入でき、一本の木で10人まで共有する事ができます。家族や友達同士での共有購入や、一人で10人分の購入も可能です。
そして森林内のこれらの木は所有範囲によってFamily TreeやFriendship Tree はBLUE、Community TreeはYELLOWというように、テープで色分けがされ一目で分かるようになっていました。Community Treeというのは、お互いに知らないもの同士が同じ木を共有している事を指し、比較的安価な部類となっています。
また樹木の周りには十字架だけでなく、花を植えたり供えたりする事さえ禁止されています。全ては自然のあるがまま、唯一その下に眠っている人の名前を小さなプレートに記す事だけが許されています。樹種もナラやブナなど様々で、その場所の生育状況に沿って目立つ木が選ばれているようでした。
ここで重要な事は、材として価値があまり出ないような森林を樹木葬の場所として利用する事で、フォレスターであるMartinaさん管理のもと、山の所有者、地域、そして企業の3者が基盤となってしっかり利益を生み出している点だと思います。
世代を経たお墓の維持管理が難しい状況や、自然回帰を望む人口の増加によって、未だ全体の1%とは言え、ドイツではこういった樹木葬が徐々に広まりつつあります。社会の問題を、森が引き受けてくれる。さらには環境保全にも繋げてくれる。人間社会にとって森は切っても切れない関係なのだというのがここでもよく分かります。
日本の樹木葬では植樹するのが一般的なようですが、今後さらに樹木葬を希望する人口が増えれば、時間をかけてまとまった森林にしていく事も可能だと思います。
もちろん、現在の手入れが行き届いていない山がこういった木材以外の利用によって生まれ変われば尚良いとは思いますが・・・。
(文責:クリエーター科1年 鈴木 守門)