住まいの空気の大切さ(心地よいエコな暮らしコラム8)
私たちが体に取り入れる物質の多くは食べ物でしょうか、あるいは飲み物?
実はそうではありません。24時間呼吸によって吸い込んでいる空気です。
※出典:臨床環境医学第9巻第2号 村上周三「住まいと人体-工学的視点からー」
私たちは呼吸によって1日に12~24㎏(10~20㎥)の大量の空気を身体に取り込んでいます。(20℃の空気は1㎥で概ね1.2kg)
食べ物や飲み物は通常2~3㎏程度しか接種しないので、空気は10倍近くも多く摂取していることになります。
しかも、消化器官を経由して肝臓で解毒される食べ物に対し、肺から直接血液中に取り込まれ脳や各組織に運ばれるため、人体への影響が大きいとされています。
新鮮空気に入れ替えることは大切なことなんです。そのための換気(機械でも窓開けでも適切に入れ替わればOK)です。
道路に面している人は外気はそんなにきれいな空気ではないと思われるかもしれませんが、室内の空気より圧倒的にきれいな場合がほとんどです。
空気質を確認する手ごろな指標はCO2濃度。
CO2は人の呼吸や燃焼式の暖房機で排出しています。
外気は400ppm程度ですが、しばらく部屋にいると700程度まで上がってきます。どのくらいが適切なのでしょう。
一般的な指標を下の表に示します。
二酸化炭素濃度の目安 |
|
5000ppm以上 |
危険レベル |
2500~5000ppm |
健康に害を及ぼす可能性のあるレベル |
1000~2500ppm |
眠気が誘われるレベル |
700~1000ppm |
許容できるレベル |
450~700ppm |
健康的な通常の室内レベル |
350~450ppm |
外気レベル |
最近ではCO2濃度が計測できる空気質モニターも数千円で購入できるようになってきました。
リビングや寝室の見えるところにおいて、私たちの体に常時取り込む空気の質を計測してみましょう。
いろいろな気付きがあると思いますよ。
寝室を閉め切って寝ていると、呼吸によって明け方にはCO2濃度が1000ppmを超えることもしばしば。
また、石油ストーブは、着火して10分程度で1000ppmを超えこともあり、要注意。
排ガスで暖める開放型ストーブ(煙突のない燃焼式暖房機)は災害などの非常時用で、普段は使わない方がいいでしょう。
ちなみに、エアコンは暖かい(涼しい)気流を出しますが、ほぼすべてのエアコンは、空気を入れ替えることはなく室内空気を循環しているだけなので新鮮空気にはなりません。
それ自体が空気を汚すことはないですが、別に換気を考える必要があります。。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と換気
感染経路の大半は接触感染と飛沫感染です。そのため、基本的な対策(マスク着用や手洗い、人との距離間確保など)は、まず第一に取り組むべきことです。
また一般的に、感染症を発症するのにある程度の病原体数が必要とされます。
COVID-19は感染者から排出された微小粒子による空気感染のリスクも指摘されており、空間のウイルス濃度を下げる換気が有効と考えられます。
窓開けは最も単純な換気法ですが、窓を開けにくい冬期や花粉症の時期は注意が必要です。
熱交換やフィルターで管理できる機械換気も有効ですので、手動窓換気と合わせて工夫しましょう。
准教授 辻 充孝
※私のつたないスケッチではなく、イラストをたっぷり使った
「無理をしないで心地よくエコに暮らす住まいのルール」を建築知識で連載中。
空気質に着目した特集は、2020年11月号(第5回)。このブログで書ききれない内容も書いてます。
こちらもぜひご覧ください。
心地よいエコな暮らしコラム
1.自分の暮らしぶりを見つめよう~環境家計簿~
2.心地よさは4つの要因で決まる
3.快適よりも心地よさを実現する
4.家の作り様は夏を旨とすべし?
5.家相や風水は気を付けた方が良い??
6.断熱しても省エネにならない?
7.省エネは建築と暮らしの工夫の上にある
8.住まいの空気の大切さ