里山景観マイスター養成講座Advanceコース①~柿畑の摘実作業と獣害対策の考え方
山県市伊自良での里山景観マイスター養成講座 2年目が始まりました。「伊自良大実」という特産品種の柿畑を獣害から守りながら、カキシブや干し柿(連柿)の活用法を考える全4回「渋柿畑と里山を復元する」というコースです。
このコースでは季節ごとに柿畑の作業を体験しながら里山との関わりを学んでいきますが、初回の6月は柿の摘果作業を体験しました。指導は「伊自良大実連合会」のK会長です。連合会は伊自良大実の栽培農家を中心に自治会、地域おこし協力隊等の若手で構成されていますが、干し柿(連柿)の品質向上と販売拡大、かつて主産品であったカキシブの復活と新たな活用法の開発に意欲的に取り組んでいます。
小さな青い実がたくさん付いている柿の木から、形が良く大きく成長しような実だけを残して、他を剪定していきます。最初はこわごわでしたが、皆すぐに熱中して黙々と作業。こういう作業ってハマるし奥が深いですよね。
午後からは、今回のゲスト講師である清野未恵子さん(神戸大学特任助教/篠山市農都創造政策官)の指導で、サルを中心とした獣害対策の実態調査のやり方や対策の立て方を学びました。農山村の深刻な獣害被害に対して、岐阜県では岐阜大学野生動物管理センターを中心に研究指導を行っていますが、清野さんはサルの研究者として篠山市のサル被害の調査や政策立案に携わっている方です。さらに民間有志と「さともん(NPO法人里地人里山問題研究所)」を設立して、各地で獣害対策の普及指導も行っています。
今回は、柿畑のある平井集落を歩きながら、主にサルの侵入箇所や被害程度などを地図に落としていきました。農家さんや住民の方にも話を聞いて、サルの群れの動きや大きさも推定していきます。当日は講座グループに遠慮したのか、サルの姿は見かけませんでしたが…。
締めくくりに、清野さんからサルの生態と、被害程度や集落住民の意志に応じた獣害対策の方針の立て方の解説がありました。サル害が出ると手に負えないと思ってしまいがちですが、清野さんは「相当に酷い被害状況でも、適切な技術を用いて集落ぐるみで徹底した行動を取れば、3年でサル害はなくなります」ときっぱり。これには飛び入り参加した地元の猟友会の方々も膝を乗り出して聞き入っていました。
受講生や学生スタッフにとっては、初めての獣害被害の現場で、専門家がどのように実態を把握し住民の意志と行動を引き出していくか、生でふれる貴重な機会でした。伊自良大実連合会の皆さまと話し合いながら、柿畑を守り里山を復元する方法を考えていきたいと思います。
嵯峨創平 2016/6/16