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2016年05月11日(水)

竹細工のこと 〜卒業生たちが鵜籠づくりを継承

5月11日は長良川の鵜飼開きです。この日に合わせて新聞やテレビは鵜飼のニュースを取り上げます。今年は森林文化アカデミーの卒業生、鬼頭伸一さんと前西千寿香さんが鵜籠づくりの技術を継承したことが多くの新聞に載りました。中でも朝日新聞は、1面の「天声人語」で報じてくれました(「岐阜県立の専修学校・森林文化アカデミーで学んだ」と書いてくれたのが嬉しいです)。
記事を読んで森林文化アカデミーに関心を持たれた方もいると思うので、鵜籠づくりの技術継承について振り返っておきましょう。

鵜籠づくりの技術継承は、2010年から始まりました。当時70代半ばだった唯一の鵜籠職人・石原文雄さんに後継者がいなかったことから、森林文化アカデミーで継承に取り組めないか、と外部の方から相談がありました。ちょうどその時、地域で子どもたちに竹細工を教えるような活動をしたいと会社を早期退職した鬼頭伸一さんが入学してきたことから、このプロジェクトが動き始めたのです。
下の写真が、お元気に仕事をされていた頃の石原さんです。

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森林文化アカデミーは森や木に関わる総合教育機関ですが、木工の教員はいても竹細工の専門家はいません。そこで石原さんにお願いして、毎週1回、半日の技術指導をお願いしました。とはいえ学校には毎週講師料をお支払いできるような予算はなく、受講者が交通費程度のお金を出し合ってお支払いしていました。ほとんどボランティアで教えていただいたようなものです。受講者は森林文化アカデミーの教員・学生・卒業生など、あわせて5人でした。

ちなみにこの時、石原さんには2回断られています。3回めに「ダメもとでやってみましょうよ」ともちかけてOKしていただきました。私は他の伝統工芸の技術継承にも関わったことがありますが、職人さんの最初の反応はほとんど同じです。自分でも食べていくのが大変なのに、若い人を路頭に迷わせるわけにいかないと。でも心のどこかに「技術を次の世代へ残さなければ」という思いもあるのです。

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石原さんの指導は、いきなり鵜籠から始まったわけではありません。まずは竹の割り方、剥ぎ方、ひごの作り方。手のひらに載るような小さな籠から、農作業用の箕や籠へ。

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鬼頭さんが何とか鵜籠の形に編むことができるようになったのは、習い始めてから1年後のことでした。

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ところが、石原さんはその直後、体調を崩してそのまま引退してしまいました。メンバーが石原さんから直接技術を習うことができたのは1年間だけ。
鬼頭さんたちは、卒業生たちでつくるNPO法人グリーンウッドワーク協会に合流し、「竹部会」として自主練習に取り組み始めます。
作業場は、美濃市内の信用金庫の空き店舗を借りました。

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いま鵜籠を編めるのは2人。もう1人の前西千寿香さんは森林文化アカデミーで建築を学んでいましたが、鬼頭さんから手ほどきを受けて竹細工を習得しました。若手の加入は、鬼頭さんにとっても心強かったことと思います。何しろ、国の重要無形文化財にも指定された鵜飼の道具作りが自分の肩にのしかかっていたわけですから。

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商品になるレベルに達し、はじめて鵜匠さんに鵜籠を納品したのは2014年の6月でした。「石原さん並によく出来ている」と言ってもらえて、2人はほっとした様子でした。

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いま、鵜籠づくりや材料確保のための竹林整備は2人が中心となり、NPO法人グリーンウッドワーク協会・竹部会が担っています。森林文化アカデミーでは竹林整備を実習でお手伝いしています。
また、年に1回竹細工の実習があり、鬼頭さんと前西さんに指導をお願いしています。

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こうして卒業生たちが岐阜の大切な伝統技術を継承してくれるのはありがたいことです。
まだ鵜籠づくりを安定的に継承していくには課題も多いと思いますが、森林文化アカデミーとしてもいろいろな形で支えていければと思っています。

 

(久津輪 雅)