現在から未来まで写す「竣工写真」(morinos建築秘話48)
真夏の森林文化アカデミーでmorinosの「竣工写真」撮影がありました。
建築プロカメラマンの千葉顕弥さんにお越しいただき、一泊二日でじっくり撮影です。
この日は最高気温36.1度でしたが、風もなく地面からの照り返しで40度近くに感じる過酷な環境……!
でもmorinos広場に集まった子どもたちは、ポンプの雨水で水たまりをつくって入ったりして、元気に走り回っています。
実は「人がいて、建物が使われている様子」を撮ってもらいたくて、子どもたちのいる日に千葉さんをお呼びしたのです。
ぼくと辻さんとmorinosチームの鈴木さんで、家具配置をずらしたりして撮影アシスト。
どんな写真を撮りたいのかその場で話し合って決めて、すぐにそれを撮影、たまに画像の確認をして次の場所へ、という流れで進みます。建築の竣工写真撮影って、かなり忙しいのです。
さすが千葉さんは、てきぱき無駄のない動きでどんどん撮影していきます。
ファインダーを覗いてからシャッターを切るまでの数秒間、空気がピンと張り詰めます。
夜景もお願いしました。
morinosは照明計画も力を入れているので、室内からの光で夜に浮いた姿をお願いしました。
「日が暮れた後の30分間で一気に撮ります。真っ暗になってしまうとV字丸太が逆光になって建物全体の印象に勝ってしまうので。」
と千葉さん。
日没後に、光源となる太陽光線が淡い状態になり、ソフトで暖かい金色になる時間帯を撮影用語で「マジックアワー」とか「マジックタイム」といいます。天文学用語だと「薄明」です。この時間に撮った写真は、なんとも言えないノスタルジックな黄昏の空気に包まれます。
(※薄明(はくめい)……日の出前と日没後のうすあかりの状態。地平線または水平線下の太陽からの光が、上空大気で散乱して生じる。)
「室内照明を3/4まで調光してもらえますか。外部の照明は切っていいです。」と千葉さん。
なんという繊細な光加減……。
光を抑えた瞬間、morinosが景色にしっとりと溶け込んでいくのがはっきりわかります。
ぼくも辻先生も、なるほど……と感動。
よく“写真は瞬間をとらえるもの”と言われます。
確かにカメラのシャッターは瞬間的に降りて、その時の光を元に写真ができる仕組みです。
でも、千葉さんの撮った写真からは、瞬間だけでなく、もっと長い時間を感じませんか?
一瞬の出来事ではなく、その前後数秒間のこと。いえ、それよりももっと長い時間、これからここで流れていくであろう時間まで感じさせてくれます。morinosがこれから永くたくさんの人に使われていく未来の光景が写されたような、とても幸福な写真です。どうしてこんな写真が撮れるのでしょうか。
千葉さん、大変な酷暑の中、すばらしい撮影をしていただきありがとうございました。
後日千葉さんから、83カットのアタリ写真が送られてきました。
わたしたちの契約は20カット。ここから厳選します。
これが……いい写真が多くて悩ましい……。見れば見るほど悩みそう……。
そこで、辻先生とぼくで別々に選定し、付き合わせてみて、考えようということにしました。
すると、選んでいたのは7割が同じ写真!
設計段階でデザインの話をたくさんして、morinosの良さを共有いることもあってか、とてもスムーズでした。
残り3割は「千葉さんらしいカット」「ポスターなどで使えそうなカット」「ディティールのカットはいつでもこちらで撮れそうなので除外」という基準で、なんとか20カット選びました。
自分が設計に関わった建物を、一流のカメラマンに撮ってもらい、たくさんのいい写真から厳選していく、という贅沢で楽しい時間でした。
morinosのWEBページでほぼ全ての竣工写真を公開していますので、是非ご覧ください。
現在、フォトアルバムを作成中。こちらはまだ完成していませんが、今後アカデミーにきた人は閲覧できます。
改めて千葉顕弥さんにこの場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました!