ドイツBW州で学ぶ林業-5 マッテンホフ林業学校
BW 州はドイツ南東部に位置し、人口は約1,074万人、面積は35,752 km2 、ドイツ連邦の中で第3位の規模の州です。州都はシュツットガルド、州内には世界的な自動車メーカーや精密機器工業の本拠地が存在し、南東部には「黒い森」と呼ばれる森林地帯が広がっている。フライブルグ市にはドイツ国内に4校しかない林学教育組織を持つフライブルグ大学があります。
BW州政府直轄の教育機関として、森林教育センター(林業学校)がある。BW州立森林教育センター(林業学校)は3校存在し、①マッテンホフ校は新規就業者に対する教育、②ケーニヒスブロウ校は新規就業者の教育及び職工長課程、マイスター課程の再教育研修、③カールスルーエ校は再教育研修及び森林所有者への講習、の役割が分担されています。
ここでは岐阜県立森林文化アカデミーのプレゼンや岐阜県の人材育成のプレゼンもしましたが、それは割愛致します。
Mattenhof校では校長のMaria Hehnさんと教務課のゼラーさんも同席、
ドイツの就学資格には3つのシステムがある①Hauptschule(基幹学校)、②Realschule(実務学校)、③Gymnasium(日本の普通高校に当たるもので大学入学資格試験Abiturを受けられるのはこのギムナジウムだけ)がある。
ドイツでは初等教育機関終了後、中等学校進学時に大学進学を目標とした③総合学校(③ギムナジウム)と専門職、技術者を目指す①基幹学校(ハウプトシューレ)と②実務学校(リアルシューレ)に別れ、基本的にはその後の就職に至るまでのキャリア形成をする。これは中世以来の徒弟修業制度を基盤にした方式で、中等教育終了時点・高等教育終了時点で、試験によって選別されます。
①基幹学校(Hauptschule)や②実業学校(Realschule)を14~15歳で卒業後、3年間の職業教育を受けて試験に合格するとForstwirt(フォレストビルド:林業士)の資格が得られます。
この職業教育は実技教育(Praktischer Teil)と、職業学校教育(Berufs-schule)の2つ教育を並行して受ける教育「Dualen System(デュアル教育システム)」と呼ばれています。
ドイツのデュアル教育システムは350種の職業に対応しており、その一つに「森林作業員(バルトアルバイター)」があります。
BW州だけでも、年間150人の「森林作業員(バルトアルバイター)」希望者がおり、BW州政府直轄の州立森林教育センター(林業学校)3校、マッテンホフ校、ケーニヒスブロウ校、カールスルーエ校が受け入れています。
①マッテンホフ校(3年)は新規就業者に対する教育、②ケーニヒスブロウ校(2年)は新規就業者の教育及び職工長課程、マイスター課程の再教育研修、③カールスルーエ校は再教育研修及び森林所有者への講習、と役割が分担されている。
Mattenhof(マッテンホフ)校は16歳~18歳の人が中心の専門校で、一ヶ月単位で事業体就業と、学校での専門職業教育を実施し、事業体での就業(職務実習)が80%、学校での専門職業教育が20%の配分となっている。学校では事業体での現場作業をカバーする実習や簿記などの座学を受講する。
入校する学生は事業体と就業契約と同時に、教育受講の契約を結びます。期末毎に試験があり、卒業のための再試験は3回まで認められ、最大で5年間マッテンホフ校に通うことができ、これも事業体との契約で認められています。
マッテンホフ校はフォレストビルド課程の教育を担う学校として、BW州で最大の規模で、担当教員として校長1名、森林官4名、マイスター8名が在籍し、この他に一般科目を担当する教員組織が別個存在しており、卒業までに2~3%が退学、卒業試験で5~8%が不合格になります。
半年ごとに90分のペーパー試験と3時間の実技試験があり、最終試験は120分×2回のペーパー試験と、6時間の現場作業試験があり、24人の学生に対して14人の第三者委員会(評価委員)が評価する。
不合格者は半年後に再試験を受けることができ、その内容は一般科目(理科、数学等)、林業科目(樹木選別、素材生産、造林)で、筆記試験と実技試験の両方がある。実技は伐倒、保全(除伐や草刈りなど)、自然保護(植生の保護)等です。
卒業生の就職先は69%が事業体に戻って作業に従事し、3%は同じ事業体に戻るが造園など別の業種に転換する。17%の卒業生は他の業種転換や大学などへ進学する。
学期は9月から始まり、一年生は11月、2月、5月に、二年生は9月、12月、3月、6月、三年生は10月、1月、4月、7月を学校で寮生活しながら勉学に励みます。8月はUr-Laubと呼ばれる長期休暇です。
マッテンホフ校の授業内容は、伐採などの機械操作技術が35%、機械メンテナンスや特殊技法は20%、植林などが20%、森林レクレーション関係が10%、安全確保や効率性につてが15%となっており、特にスポーツは森林作業員にとって重要な身体能力養成につながる。
BW州には133の林業事業体がある。その内訳は州有林38事業体、公有林80事業体、私有林6事業体、企業9事業体あり、BW州の森林は州有林が24%、公有林38%、私有林と企業林38%となっている。
「Dualen System(デュアル教育システム)」の受け入れは州有林が69%(38事業体で262人)、公有林が27%(80事業体の内、4事業体で106人)、私有林が2%(6事業体の内、3事業体で7人)、企業体2%(9事業体の内、5事業体で6人)を受け入れている。
つまり「Dualen System(デュアル教育システム)」は州有林と公有林が担っている。
続いて簡単な施設紹介。
下の写真は学生寮、ソーラーのあがっている寄宿舎は女生徒用です。こんなのが5棟ほど建っていました。
学生寮の部屋は基本2人部屋、室内にトイレもある。不在時は写真のように湿気らないように整理する。
ほかに調理場やラウンジも完備されています。
教室の一つ、ここでは「林業簿記」が黒板に記されています。
室内乾燥庫も大きく、充実しており、まるでどこかのスキー場の乾燥庫のようでした。羨ましい。
作業スペースには、作業靴の泥を落とす機械も常設。 エアーやシャワーも出て来ます。作業後の身だしなみにも注意が払われています。
機械のメンテナンスをする部屋には、チェンソーの歴史なども解説できるようになっていました。
チェンソーの目立てや手工具の仕込み、様々な用途で利用できる自習室も完備。これほどの施設は見たことがありません。
チェンソーや刈り払い機、だけでなくトリマーなどの機械も揃えて、実習に取り組んでいます。
なんと背中に背負っているものはバッテリーで、公園などでの作業に適しているそうです。
もちろん、刈り払い機やチェンソーもエンジン式とバッテリー式のものの両方がありました。
時代のニーズに応じて、振動や騒音対策も授業の必要な項目となっています。
通路には木材の木口面と樹皮面、板目面の標本が陳列されており、常時勉強できるようになっています。
とにかくマッテンホフも大きな学校で、施設の充実度など大変参考になりました。これの一部を私たちの森林文化かデミーに取り入れたいと考えています。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。