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2020年08月21日(金)

林業事例調査2020(1)丸高山千年の森

クリエーター科林業専攻の1・2年生科目「林業事例調査」では、毎年、学生のリクエストにより見学先を決め、学生がアポ取り、行程づくり、各種の手配を行って実施します。

今年は、徳島県~京都府~滋賀県のツアーでした。これまでも近畿方面に出かけることが多かったですが、今回は初四国。

1年生学生のレポートを3回にわたり紹介します。

林業事例調査 2020 1日目

クリエーター科・林業専攻の林業事例調査の1日目は、徳島県上勝町の「高丸山千年の森」を訪れました。午前中はアカデミー→徳島県の移動となり、見学先へは午後からの訪問です。

高丸山千年の森は、「森と人との共生のシンボル」をテーマに徳島県が力を入れているモデル林でもあり、森の学校でもあります。

ふれあい館

高丸山千年の森は、約116haが対象地です。高丸山は標高1438mの山で、中腹はブナの自然林で被われています。千年の森では、保全・育成・協力の3つのゾーンに区画してさまざまな体験を行っています。

千年の森の基本理念には、世代を超えて森づくりを長く続けようという思いがこめられています。また、高丸山千年の森では、「森づくりを通した多様な交流」・「県民参加の森づくり活動」・「森林環境教育」を大切にしています。

室内

初めに千年の森ふれあい館でレクチャーを受け、その後、森の案内をしてもらいました。あいにくの雨でしたが林道がしっかりしていたので見学しやすくとても助かりました。
今回見学させていただいたのは、「県民参加の森づくり活動」をしている約4.5haの育成ゾーンです。下の地図資料は、千年の森のWebサイトから拝借しました。
地図
現地
育成ゾーンに向かう道中にシカの被害対策のお話を聞きました。区画ごとに防護ネットを張り、番号で割り振りをしてあるそうです。
そんな話をしながら林道を歩いているとシカの骨を発見しました。稀にシカがネットに引っかかり、住み着いているキツネに食べられているそうです。
シカの骨

千年の森の事業が始まった当初は、針葉樹の人工林を行うはずでしたが、現代の広葉樹への関心から今の広葉樹の森になったようです。見学した育成ゾーンは、主に森づくりボランティア29団体による、自主的な森づくり活動が行えるゾーンになります。4.5haの敷地を30区画に分け、29団体と県民がふらっと参加できる1区画が確保されています。時々林業体験をしたいという方が訪れるそうです。

説明
自主的な森づくり活動が行える育成ゾーンで利用されている広葉樹は、上勝広葉樹苗木生産組合が地元で種を取り、マルチキャビティコンテナを使用して生産した広葉樹の苗木だけを植えているそうです。
説明
「どんな樹木が多いですか?」という質問に対して、面白いお話を聞かせていただきました。生産した苗木の中で結果的に多くなってしまった樹種がケヤキやミズメだったそうです。これは、当時の環境で育ちがよく、とれた種子も多かったため。そしていろんな樹種の苗木を生産した中で多いからと言って買い取らないわけにもいかず、さらに買い取った苗木を植えないわけにもいかず、植えたそうです。現在もケヤキやミズメが比較的多く残っています。後に密度調整でいくつか伐採する可能性はあるとおっしゃっていました。
説明
ボランティア団体に施業を任せていることもあり、各区画ごとにみられる林の姿は、まったく違いました。どの程度まで下刈りを行うかなど、考え方がボランティアグループで違うことが要因ではないかと思います。その他の要因には、誤って苗木を伐採してしまうケースや周りの林から苗木で植えていない樹種が入り込むこと、シカなどの被害があげられます。
シカ食害

今回の見学を元に広葉樹の施業や地元と林業のかかわり方を広い視野で考えることができました。

見学にご協力してくださった高丸山千年の森の職員の皆様、誠にありがとうございました。

集合写真
報告:井上治佳子(クリエーター科 林業専攻1年)