構造システム ”WOODS”(morinos建築秘話32)
ちょっと複雑な構造として、この建物を御覧になられている方もいると思います。
しかし、構造のシステムとしては決して複雑な構造ではなく、むしろ非常に単純な構造となっています。
これから始まる一連の「morinos建築秘話【構造編】」シリーズを御一読いただくと、morinosの構造は非常に単純な仕組みとなっているということにお気づきになると思います。
建築実務者の方は、この建物が思ったよりも簡単に構造設計できるものなのだと理解できると思います。
このmorinosは構造システムを”WOODS”(Wooden Object Oriented Design Structure、木材のオブジェクト指向型設計)と名付けた構造体です。
各構造要素を組み合わせた効率の良い構造計画が実現しています。
主要軸組(構造架構)は自重や積雪荷重などの鉛直荷重だけを支持するのではなく、地震力や風圧力などの水平力も負担できる構造架構を兼ねている部材があります。
ここでいう構造架構とは、架構の接合部の回転性能に配慮し、ラーメン的構造性能を付加した架構のことです。北側壁面部分や収納部分の界壁等には面材耐力壁を配置し、水平構面はCLT面材を配置しています。
主要軸組(構造架構)、耐力壁、面材水平構面を以下に示します。
【主要軸組(構造架構)】
・W形配置丸太(ヒノキ丸太、E90、末口φ=330mm)
・方杖(ヒノキ製材、 E90、 150×150mm)
・レ形配置方杖(ヒノキ製材、 E90、 150×150mm)
・90角鋼管梁(90角鋼管 2丁合わせ)
・登り梁(ヒノキ集成材、E105-F300、150×450mm)
・一般梁(ヒノキ集成材、E105-F300、120×150mm)
・架構柱(ヒノキ集成材、E105-F300、150×300mm)
・一般柱(スギ製材、E90、120×120mm)
【耐力壁】
・構造用合板耐力壁(大壁・3.7倍、構造用合板 t=9mm、CN50@75mm)
・構造用ハイベストウッド耐力壁(大壁・4.0倍、MDF t=9mm、外周部CN65@100mm、中間部CN65@150mm)
・筋かい(片筋かい・3.0倍、スギ製材、 E90、 150×150mm)
【面材水平構面】
・CLT面材水平構面(Aパネ・2.6倍、t=36mm、釘打ちN90@150mm)
開放的な空間を構成するために、水平力の大部分を負担できる構造架構としました。
東西方向は、南側のW型配置丸太と北側の面材耐力壁で水平力を負担させています。
南北方向は傾斜させているW型配置丸太・方杖・レ形方杖・架構柱・登り梁からなる構造架構と収納部分の面材耐力壁、筋かい等で水平力を負担させています。
水平構面をAパネによるCLT面材水平構面とし、大空間を構成する建物の一体性を高めました。
基礎を一般的なベタ基礎としました。構造架構の一部を製作金物による接合部としているが、それ以外の接合部については市販補強金物による接合部としました。
南側の大開口部のガラス窓への風圧力を支持するために、木材と鋼製材によるハイブリッド耐風方立としました。
以上のように、構造システム “WOODS”により、各構造要素を組み合わせた効率の良い構造計画が実現しました。
教授 小原 勝彦